ニーズが高まってきた「オンラインでの会話」
私の職業はアナウンサーですが、「テレビやラジオ番組のナレーション」「スピーチレッスンの講師」「番組のパーソナリティー」など、さまざまな仕事をしています。
そのため、毎日のボイストレーニングが欠かせません。とくに毎日の日課として欠かさず行っているトレーニングが「朗読」です。なぜなら「朗読」をすることで、「表情が豊かになる」「笑顔に磨きがかかる」「コミュニケーション力が上がる」「語彙が増える」など、多大な効果があるからです。
新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、テレワークになったり、ウェブを使って会議や打ち合わせをしたりなど、「ウェブ会議などオンラインでの会話」が多くなってきています。「朗読」には、この「オンラインでの話し方」にも効果があるのです。
しかし、オンラインで話してみると、「普段の会話のようにいかないことが多い」と感じ、苦手意識を持っている人が多いようにも思います。また、「相手に嫌な思いをさせてしまっている話し方になっているのに気がついていない」ということも少なくありません。
では、「嫌われるウェブでの話し方」とはどのような話し方なのでしょうか? 今回は「『嫌われるオンラインでの話し方』6大NGとその解決法」を紹介します。
まず、1つ目は相手の話が終わらないうちに「話を挟んでくる」ことです。
声のトーンは「普段より高め」を意識する
【1】相手の話が終わらないうちに「話を挟んでくる」
普段の会話でも相手の話が終わらないうちに、自分の話を挟んでくる人は多いと思いますが、「ウェブでの会話」のときはとくに注意が必要です。
途中で相手の話を遮ってしまうのは、相手に不快な思いをさせてしまうので普段の会話でも好ましくないことです。しかし、「ウェブでの会話」では、普段の会話のような流れとは異なるところがありますので、相手の話を聞く態度は普段より気をつけなければいけません。
そういうときこそ、相手の話が終わったら、少し「ポーズ(間を置くこと)」を入れるようにしてみましょう。この一瞬のポーズで、相手が「何かな?」と自分に注意を引かれますし、「自分の話をきちんと聞いてくれて、理解してくれた」と思ってくれます。
「ええ、ええ」と相づちを打つ場合も同様です。相手の話を遮ることなく最後まできちんと聞いてから、相づちを打つようにしましょう。
【2】「声が低い」ので聞き取りにくい
普段の会話でも「声が低くて小さい」と、相手は聞き取りにくくなりますが、「ウェブでの会話」になると、ますます聞き取りにくくなってしまいます。さらに「不愛想」「冷たい」という印象になってしまい、相手に不快な思いをさせてしまいます。
2つ目として「ウェブでの会話」のときは、いつもの声のトーンを「少し高め」にすることを意識して出してみましょう。『40代も声が良くなる!「巣ごもり1分朗読」5効果』でもお話ししたように、普段の自然な声の高さが「ド」だとすると、朗読の基本は「ソ」で「鼻に口がある」ようなイメージで声を出します。
また、声のトーンを高めにすることで「大きい声」が出せるようにもなります。明るく、ハキハキした声になることで相手への印象がよくなり、自分の話にも注目してくれるようになります。
3つ目は、「『淡々と話す』ので結局何が言いたいのかわからない」ことです。
「口角を上げて話す」だけで印象が大きく変わる
【3】「淡々と話す」ので、結局何が言いたいのかわからない
淡々とした口調の話し方というのは、普段の会話でも印象に残りにくいのですが、「ウェブでの会話」になると、さらに印象が薄くなります。「この人は結局何が言いたかったんだろう」と思われるだけで終わってしまい、伝えたいことも伝えられないままになってしまいます。
「朗読」で、文章にメリハリをつけることを「抑揚」と言いますが、文章を読むときにこの抑揚があるとないとでは、相手への伝わり方が大きく変わってきます。これは「ウェブでの会話」でも同じことが言えます。
相手に伝えたいところは「ゆっくり」と話すことを心がけてみましょう。ゆっくり話すことで、相手が注目して「ここが言いたいところなんだな」と認識してくれます。
また、「ゆっくり度」も「ややゆっくり」「かなりゆっくり」など違いを出すことができます。「かなりゆっくり」のほうが度合いが高まりますので、どのくらい伝えたいかによってスピードを調整してみましょう。
【4】「ムッとした表情」になっている
「ウェブでの会話」で、いつもと変わらないように話しているつもりでも、「なんかムッとしているみたい……」と言われてしまうことはありませんか。怒っているわけではないのに、表情が乏しいと、相手いい印象を持ってもらえないことも少なくありません。とくに「ウェブでの会話」では表情が目立ってしまいます。
4つ目としては、そこで、「口角を上げて話す」ことを心がけてみましょう。口角を上げると自然と感じのいい、やさしい雰囲気の声が出せます。これは、口角を上げることで口腔が緊張し、舌が少し上向きになるからです。これが相手には明るく、聞き取りやすい印象を与えます。
人が聞いて「心地いい」と思う声の周波数は「3000ヘルツ」と言われますが、口角が上がった状態で話すと、この3000ヘルツに近づきます。
例えば、アナウンサーの声、電車内アナウンス、新幹線内アナウンス、電話で対応するオペレーターの声などです。声も見た目も印象がよくなるので、口角を上げることを意識してみましょう。
5つ目は、「『早口』になって意味が伝わりにくい」ことです。
【5】「早口」になって意味が伝わりにくい
普段の話し方でも、早口で話すのは内容が上滑りして相手には伝わりにくくなりがちですが、「ウェブでの会話」で早口になると、さらに伝わりにくくなってしまいます。
「ウェブでの会話」のときは、普段より、さらに「一音一音をはっきり、丁寧に発音する」ことを意識しながら話してみましょう。『プレゼンに効く「とことん伝わる話し方」7秘訣』でもお話ししたように、文章の最後の句点(。)まで感じるような気持ちで話すくらいでも大丈夫です。
さらに、「口をしっかり開ける」ことも大切です。話すとき、口を大きく開けていない人は意外と多いものです。
「一音一音、はっきり丁寧に発音する」「口を大きく開ける」を意識しながら話すことで、相手に伝わる力が倍増します。
【6】話している間に「体がゆらゆら揺れる」
6つ目は、話すとき「体がゆらゆらと揺れる」人がいらっしゃいますが、その揺れは「ウェブでの会話」になると、普段の会話のときよりも目立ってしまい、「自信がないのかな?」と相手を不安な気持ちにさせてしまいます。
話すとき、手のジェスチャーや体を動かすことはありますが、それは自然な動きなのでいいのですが、それ以外は、基本的に体は安定させて動かしません。
この「ゆらゆら」とした動きは呼吸が関係していることが多く、「胸式呼吸」で話すときに起こりやすくなりがちです。しっかり下半身で体を支えられなくなるため、意味のない体の動きが出てきてしまうのです。
ここで、「朗読」に必要な「腹式呼吸」で話すようにすると、下半身がどっしりとして意味のない動きは出てきません。腹式呼吸を意識して話すように心がけてみましょう。
「1日1分朗読」で「伝わる話し方」が上手になる
「ウェブでの会話」というのは、相手がすぐ近くにいるわけではないので、「普段の会話」ではうまく伝わりにくいことが多いと思います。
そこで、「朗読の話し方」を応用することで相手に伝わりやすくなり、声もよくなります。「朗読の話し方」の応用といっても、何も難しくはありません。1日1分、自宅で朗読をするだけで、自然と、日常会話でも、オンラインの会話でも「伝わる話し方」ができるようになるのです。
「伝わる話し方」には、本記事で解説したように「コツ」があります。そしてそれは、「ちょっとした工夫」で十分に可能なのです。
みなさんも「ウェブでの嫌われる話し方」にならないために、「朗読の話し方」をうまく活用してみてくださいね。その効果は、すぐ実感できるはずです。
アナウンサー
魚住 りえ(うおずみ りえ)
フリーアナウンサー。元日本テレビアナウンサー。ボイス・スピーチデザイナー。大阪府生まれ、広島県育ち。1995年、慶応義塾大学卒業後、日本テレビにアナウンサーとして入社。報道、バラエティー、情報番組などジャンルを問わず幅広く活躍。代表作に『所さんの目がテン!』『ジパングあさ6』(司会)、『京都心の都へ』(ナレーション)などがある。2004年に独立し、フリーアナウンサーとして芸能活動をスタート。これまでおよそ500本の作品に携わる。とくに各界で成功を収めた人物を追うドキュメンタリー番組『ソロモン流』(テレビ東京系列)では放送開始から10年間ナレーターをつとめた。各局のテレビ番組、CMのナレーションも数多く担当し、その温かく、心に響く語り口には多くのファンがいる。また、およそ30年にわたるアナウンスメント技術を活かした「魚住式スピーチメソッド」を確立し、現在はボイスデザイナー・スピーチデザイナーとしても活躍中。声の質を改善し、上がり症を軽減し、相手の心に響く「音声表現」を教える独自のレッスン法が口コミで広がり、「説得力のある話し方が身につく」と営業マン、弁護士、医師、会社経営者など、男女問わず、さまざまな職種の生徒が通う人気レッスンとなる。現在は、定期的に10~15人を募集し、スクールでグループレッスンを行っている。魚住式スピーチメソッド
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