エナジーブランディング vol.19:
旧姓使用と本名、2人の「わたし」
私が起業したのは6年前。それまでいくつものアパレルや化粧品会社で正社員や年俸制契約社員として働いてきました。毎回転職時、最も面倒だったのが旧姓使用の通称と本名の2人の「わたし」がいること。
人事書類や契約書は本名、でも上司や仕事仲間は最初通称で覚えてもらう必要がある。なぜなら外部のメディア関係者や代理店、クリエイターなど旧知の取引先にとって私は「大島さん」だから。
入籍の時、既にPRとして独り立ちしてた私は仕事の便宜上通称の「旧姓使用」で行くと決めました。その当時、「近い将来、夫婦別姓も選択できるかなぁ。」と甘い期待もありました…。
入籍時、夫の苗字にされた方、名前変える時戸惑いはありませんでしたか? 私は結構な大仕事だった記憶の方が、結婚相手の名前になった感慨よりありました(笑)。
入籍後数週間でパリコレ出張のタイミングだった為に、それまでにパスポート変えて、銀行口座変えて、クレジットカード変えて… 口座変えるとその後に膨大な名義変更の山が待っていて…(涙)。
夫はなにもしなくて良いのに、私だけ… と理不尽に感じた入籍の思い出。それから25年。未だ夫婦別姓は「選択肢」としても法改正に至らずにいます。
大きな転機は2015年2月の法改正
2015年2月27日より商業登記規則第81条の2が改正され、商業登記簿の役員欄に役員の婚姻前の氏も併記できるようになっています。あんまり知られてない、PRされてない事実です。
【▶︎添付書面としての本人確認証明書及び婚姻前の氏の併記について】
役員等(取締役,監査役,執行役,会計参与又は会計監査人をいいます。)又は清算人の就任等の登記の申請をするときには,婚姻により氏を改めた役員等又は清算人(その申請により登記簿に氏名が記録される方に限ります。)について,その婚姻前の氏をも記録するよう申し出ることができます(商業登記規則第81条の2)。
株式会社のほか,一般社団法人,一般財団法人,投資法人又は特定目的会社の役員についても同様です。ただし、会社設立の際は設立登記の申請と同時に、役員等の氏名に旧姓を併記することを申請の必要あり。設立の時がチャンスです。企業の役員就任登記(重任登記も含む)の申請も同様です。この手続きをすれば、結婚または離婚により名が変わることで生じる不便が軽減されます。
私は起業したのが2016年3月。同法施行から1年経っていましたが、この法改正を知りませんでした。登記のことを調べていて、偶然、法務局のサイトでこの改正を知ったんです。その頃相談してた税理士や弁護士の先生方も、私に教えてくれる程重要視されてませんでした。
【▶︎履歴事項全部証明書】
そんな中、この法務局の公示を盾にして戸籍謄本などを揃え、無事、設立時の旧姓併記の登記が出来ました。旧姓は(大島)と掲載されます。その結果、弊社の契約事は通称の旧姓で契約でき、クライアントへ不便をかけずに仕事が出来ています。
住民票・マイナンバーカード・運転免許証も旧姓併記可能に
このコラムを書きながら、25年前に仕事を旧姓使用に決めた理由を思い出していました。まだパソコンさえ、そんなに普及していなかったころ。大きな携帯電話を持って仕事をしていました。そんな時、電話の一言めは「(株)※※の大島と申します」。「大島」で認識してもらえていたから、繋いでもらえた案件も多々あったそんな時代です。
もし今なら、メールの頭に「名前変わりました!」と表記し、SNSで告知すれば不都合は少ないかもしれません。私はそんな仕事の都合上の理由だけで旧姓を使い仕事をしてきました。でも今では、家族と過ごす時、ご近所付き合い、病院関係が本名。仕事と仕事仲間との関係は旧姓の大島。
ここまで2つの名前を使い続けると、どちらも大切な私の名前です。今後法改正があったとしても別姓を選択はしないと思います。仕事を辞める時が来るまで2つの名前を使い続けるのでしょう。
実は2019年11月5日からは住民票・マイナンバーカード・運転免許証も旧姓併記できるようになっています。カードや銀行の名義、契約書関係で旧姓を使用続けられるかは、個別案件とのファジーな現状ですが、身分証明書が一切ない「通称」の旧姓使用よりは一歩進んだのではないでしょうか。(その分、選択制夫婦別姓がますます進まないのか…)
世界を見渡すと、ガラパゴス化していると思えるこの結婚と苗字の問題。事情もタイミングも異なり、なにが正解? ではないのかもしれません。でも生涯、自分のアイコンとなる名前。自分自身で納得して、その名前と共に生きていきたいですね。
記事内イメージ画像/(C)Shutterstock.com
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ブランディング コーチ
大島文子
ファッションや百貨店、化粧品、ライフスタイル雑貨などのブランディング支援、PRや販促を中心に活動している。6年前に(株)ブルーム&グローという会社を起業。
Oggi.jpにて連載していた「ブランディング仕事術」はこちら