こんにちは、editor_kaoです。
今回は、初対面、さらにほとんど話をしなくても「この人は信頼できる!」と思った、ふたりのメンズの話をしたいと思います。
初対面の人の服や持ち物を、ついチェックしてしまいます
ひとりは、お仕事を一緒にしたカメラマン。ずっと、素敵な写真を撮られているなぁと憧れていたのですが、どんな方かはあまり知らず。初めてお会いしたのは、念願叶って、あるファッション誌の撮影をすることになったときでした。撮影前に、スタイリストさんも交えて方向性の打ち合わせをしたのですが、ご本人は写真の雰囲気そのままの、清潔感があって少年のような、さわやかな佇まい。ときどき、ご本人のキャラクターが、驚くほど作品とかけ離れている人もいるのですが、このときは、ほぼ想像どおりでした。
で、ちょっといやらしい話なんですけど、男性、女性に限らず、私が初対面の人と会ったときにチェックするのが、その人の着こなしや持ち物です。女性だったら、ネイルも見ちゃう。その人の深層心理が隠れている気がして。なにしろ、次に会うときはもう本番。1時間の打ち合わせの間でも、なるべくその人のキャラクターを知っておこうとする、情報収集の一環です。
大事なのは、その人が高級なブランドのものや、トレンドのものを持っているかどうかではありません。これは説明が難しいのですが、ブランドには、それぞれの個性やテイストがあるもの。ファッションを仕事にしている人なら、それが大体わかるはずで、「これが好きなら、こういう考え方をする人なのかな」というのが、垣間見えるんです。
パートナー探しではないけれど、一緒に仕事をする上で、価値観が似ているのって、ものすごく大事ですよね。私が素敵だと思うものを、同じように素敵だと思ってくれるかどうかは、正直、パートナーよりも重要視される部分(ちなみに価値観が違う場合は、自分の希望を、より丁寧に説明するようにしています。価値観なんて人それぞれ、どちらも悪くはないので)。今思い出しましたけど、昔、知り合いのスタイリストさんに「人柄は好きだけど、作品にセンスを感じられない人と付き合っていいかどうか」について相談されたことがありましたが、あのときはどう答えたっけ……?
ペンケースひとつで、その人の考え方を予想する
話が逸れましたが、だから私の持ち物チェックは、決して下心によるものではなく(ここ強調したい)、仕事を成功させるための、方法のひとつなわけです。それで、そのカメラマンの話に戻ると、まず、時計が高級ブランドではなかったんですよ。歴史はあるものの、アメリカのカジュアルな時計ブランドのもので、機能性重視だけど、いい加減なところで選ばないのが、個人的には好感度大! にもかかわらず、バッグから出したペンケースが、イギリスの老舗文具ブランドだった時点で、「ああ、もう彼には全幅の信頼を置ける」と、撮影の成功を確信しました。それも、どちらのブランドのこともあまり知らずに、いいなと思って買っただけというから、天性のセンスのよさが備わっているのでしょう。同じ価値観をもつ、なんておこがましい。私が想像するよりも、はるかに素敵なものを、この人は生み出してくれるはず、と、思ったんです。
そしてもうひとりは、取材をした、関西出身の若手芸人さん。その方は、私服がとてもおしゃれだったので、どこでお買い物をしているのか聞いたのですが、その世代ではなかなか行かない通なショップで、びっくりしました。そして彼が言うには「僕ね、ロゴの入った服が苦手なんですよ」とのこと。でも彼の周りの芸人さんたちは、売れるとブランドロゴが大きく入った服やバッグを身につけ始めるから(想像できるー)、話が合わないのだとか。彼が着ているブランドだって、決して安くはないのですが、一見しては、どこのものかわからないデザインばかり。シルエットや着心地が気に入っているそうで、つまり、高いお金をブランドバリューに費やすのではなく、目には見えないところに、価値を見出しているわけです。ほら、信頼できそうでしょ。
自分なりの価値観が揺るがない人に、私もなりたい
彼らふたりの共通点は、もっているものに、自分ならではの価値観があるということです。周囲の評判や人気の有無には目もくれず、いいなと思ったものを、独自の感性で選んでいるということ。それはつまり、他人に影響されることなく、自分の意見をしっかりもっている証ともいえます。仕事でお付き合いする相手として、それはとても心強いですよね。そういう人とはずっと仕事をしていきたいし、自分もそうでありたいなと思った出来事でした。
【今日のひと手間】
気温が下がり、ソックスの出番が増えてきましたが、私のおすすめはこれ! セブンイレブンの「婦人ミドル丈ソックス リブ グレー」です。杢のソックスは、いろいろなボトムや靴と合わせやすく、重宝するのですが、さらにこのソックスのいいところは色調。色名はグレーですが、ちょっとベージュがかっていて、モノトーンスタイルにも、ブラウン系スタイルにも合う、微妙な色調なんです。もう少し筒の部分が長ければ、ベストなのに!
エディター
editor_kao
大人の実用ファッションを中心に、人物インタビューや日本の伝統文化など、ジャンルレスで雑誌やブランドサイト、ウエブマガジンで活動中。また、インスタグラム@editor_kaoでは、私服コーディネートを紹介するかたわら、さまざまなブランドや百貨店とのコラボレーションも手がけている。ライフスタイルWEBメディアkufura(クフラ)でも「4ケタアイテムで叶えるオシャレ」を連載中。
イラスト/柿崎こうこ