乙とは?意味をご紹介
乙(おつ)とは、十干(じっかん)の2番目や、普通とは違うことなどの意味を持つ言葉です。
【乙】おつ
1.十干の第二。きのと。
2.甲を第一位としたときの第二位。
3.物事を図式的に説明するときなどに、甲・丙などとともに、ものの名の代わりに用いる語。
4.邦楽で、甲(かん)より一段低い音(おん)。
5.普通と違って、なかなかおもしろい味わいのあるさま。味(あじ)。
6.普通とは違って変なさま。妙。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
なお、名詞として「乙」を使うとき(上記の1~4に相当)は「お」にアクセントを置き、形容動詞として使うとき(上記の5、6に相当)は「つ」にアクセントを置きます。
十干(じっかん)の2番目
十干(じっかん)とは、次の総称です。
・甲(こう)
・乙(おつ)
・丙(へい)
・丁(てい)
・戊(ぼ)
・己(き)
・庚(こう)
・辛(しん)
・壬(じん)
・癸(き)
十干と十二支(じゅうにし)を組み合わせて、年や日などを表します。中国では殷代からあったとされ、前漢代以降は年を表すのに用いられるようになったようです。
干支(えと、かんし)とは、本来は十干と十二支を組み合わせたものですが、十干を省略し十二支だけで年を表すときにも用いられます。なお、干(え)は「兄」、支(と)は「弟」を指す言葉です。
第2位
「乙」は十干の2番目であることから、第2位を指すときに使われることがあります。たとえば、次のように使います。
・甲乙(こうおつ)をつけがたい。
これは甲(1番目)と乙(2番目)を区別できないほど、二つのものに差がなく、どちらが優れているかを決めるのが難しいことを指す言葉です。どちらも優れているときや、優れているほうを一つに絞れないときに使います。
モノや人の代わりに用いる語
「乙」はモノや人の代わりに用いることもあります。試験問題やたとえの中で用いられることが一般的です。
・甲と乙、丙の3人がいます。甲の前に乙、乙の前に丙がいるとき、一番前の人は誰ですか?
・地図上に甲と乙の2点があります。甲と乙の距離、小学校を経由したときの甲と乙の道のりを求めましょう。
甲や乙、丙以外にも、試験問題やたとえの中では次の組み合わせを用いることがあります。
・A、B、Cなどのアルファベット
・ア、イ、ウなどの片仮名
・あ、い、うなどの平仮名
普通とは違って味わいがある
「乙」は、普通とは違って味わいがあるときにも使うことがあります。
・縁側で月見酒ですか?乙ですね!
・ロングスカートに下駄を合わせるのも乙だ。
なお、邦楽では、乙(おつ)は甲(かん)より一段低い音(おん)のため、普通とは違って味わいがある音という意味で「乙だ」といわれるようになりました。
普通とは違って変だ
「乙」は、普通とは違って変なときにも使うことがあります。
・個性的というよりは乙な感じで、ジャケットとパンツのバランスが悪いように思う。
・それは乙だね。真似したいとは思わないけれど。
お疲れさま(ネット用語)
ネット用語では、「お疲れさま」の意味で「乙」を使うこともあります。メールやSNSの返信として「乙」と一文字だけを打ったり、日常会話でも親しい間柄で「乙」と挨拶したりすることもあるようです。
・娘にメッセージを送ったが、「乙」と一言だけ返ってきた。
・「宿題が多すぎて、もうパニック!」「乙!終わったら教えて。スイーツ食べに行こうよ」
書類や手続きで使われる「乙」
契約書や税関係の書類などでは、「甲」や「乙」の文字が多数使用されています。書類や手続きに「乙」を使う際のルールや、「乙」を使うことで得られるメリット、また、何に注意する必要があるのかご紹介します。
契約書の「乙」
契約書は、二者以上の個人や法人などが契約を締結する際に作成する書類です。
契約の内容を明確にし、関係者の権利や義務、ペナルティなどを誤解なく伝えるためには、「誰が」「誰に」という点を細かく記載することが求められます。「株式会社〇〇が株式会社〇〇の株式を、△△株式会社に連絡せずに売却した場合は……」「株式会社〇〇は△△株式会社の許可を得ずに、他社といかなる契約も締結できない」など、何度も契約者名の明記が必要になってしまいます。
しかし、明確に記載しようとすればするほど契約者名を繰り返し表記することになり、契約書の文面が長くなってしまうばかりか、文章がわかりにくくなってしまうかもしれません。
そこで利用できるのが前章の意味3でご紹介した甲や乙の使い方です。「株式会社〇〇=甲」「△△株式会社=乙」と置き換えれば、契約書をシンプルかつわかりやすい形に調整できるでしょう。
たとえば、先ほどの文章も「甲が甲の株式を、乙に連絡せずに売却した場合は……」「甲は乙の許可を得ずに、他社といかなる契約も締結できない」とすっきりと表記できます。三者間の契約なら甲・乙・丙、四者間の契約なら甲・乙・丙・丁を使うようにします。
なお、誰を甲や乙で置き換えても問題ありませんが、「甲=1番目」「乙=2番目」の意味もあるため、相手側を甲、自分を乙とすることが多いようです。しかし、契約書を作成する側が甲、相手側を乙とすることもあるため、過去の事例なども参考にしてお互いに不快にならないように置き換えてください。
源泉徴収税額表・年末調整の「乙」
源泉徴収税額表の月額表と日額表には「甲」欄と「乙」欄があります。従業員が「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しているときは甲欄、それ以外のときは乙欄を参照して、源泉徴収税額を確認します。
従業員に応じて正しい欄を参照しないと、納めるべき源泉徴収税額を正しく算出できません。過少申告・納付をした場合は、不足分の納付が必要になるだけでなく、不納付加算税が課税されることもあります。
乙の多様な意味をチェックしておこう
乙(おつ)には多様な意味があり、状況によって正しく使い分けることが必要です。どのような意味で使っているのか判別しにくいときは、前後の文脈も参考にしてみましょう。また、名詞として使うときと形容動詞として使うときには、アクセントが変わる点にも注意してください。
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