番組では語り尽くせなかった『桜嵐記』の裏側。珠城さんから語られるリアルなエピソードをお届け!
スカパー!などで視聴できる「時代劇専門チャンネル(CS292)」。数々の時代劇の名作が24時間365日見られるのが特徴なのですが、その中で毎週月曜日22時より放送されているのが「華麗なる宝塚歌劇の世界~Season5~」。宝塚歌劇の日本物作品だけを厳選して放送しています。
そしてさらなるお楽しみ要素として、ご自身も宝塚歌劇ファンとしておなじみの、フリーアナウンサーの中井美穂さんが案内役を務め、宝塚歌劇OGをスタジオゲストやコメントゲストに迎えるナビゲート番組も!
8月は2021年の月組大劇場公演『桜嵐記』をピックアップ(8月21日(月)22時放送予定)。スタジオゲストに、当時の月組トップスターを務めた珠城りょう(たまき・りょう)さんを迎え、作品にまつわるエピソードをいろいろうかがっています。
その番組収録後に珠城りょうさんの取材会が行われ、番組では語りきれなかった『桜嵐記』についての深いお話や、珠城さんご自身の“今”を語っていただきました。
前編を読む
▶️月組公演『桜嵐記』の裏話がたっぷり! 珠城りょうさん出演の【時代劇専門チャンネル「華麗なる宝塚歌劇の世界」】収録レポート
『桜嵐記』の見どころやこだわりをさらに深掘り!
まずは、今日の収録の感想を教えてください。いかがでしたか?
珠城さん(以下敬称略):楽しい収録でした! (案内役の)中井美穂さんとはもう何度もお仕事をさせていただいているので話しやすく、本当にいろいろなお話を引き出していただきました。中井さんご自身が公演当時から『桜嵐記』という作品をとても大事に、そして愛してくださっているので、私もその時のことを振り返ってお話しするのにかなり熱がこもりました。
改めて、『桜嵐記』の見どころを教えてください。
珠城:オリジナル作品であり、宝塚歌劇らしい様式美が堪能できるところ。タカラヅカのいいところって座付きの演出家がいて、演者に対しての当て書きができるオリジナル性だと私は思っています。物語を1時間35分にまとめるのはものすごく大変なことだと思いますが、タカラヅカだからこそできること。そんな作品を、豪華な衣裳、煌びやかなセットや照明、生のオーケストラで、自分たちの持っているハコ(劇場)で上演できるというのはタカラヅカにしかできない強みで本当に素晴らしいことだと思います。
『桜嵐記』は南北朝時代のお話です。役作りに関して、調べたことや参考にされたものはありましたか?
珠城:私が演じた楠木正行(くすのき・まさつら)のルーツである父の楠木正成(くすのき・まさしげ)にさかのぼって勉強し、『太平記』を読んだりしました。正行に関しては残っている資料が少なく史実以上のことはあまりわからないため、台本に書かれているところをいかに深くお客さまにお伝えできるかということを大切にして想像を膨らませていきました。弁内侍についてもほとんど資料が残っていないんですよね。
正行と珠城さんご自身で、似ているところはどんなところですか?
珠城:ジンベエへの接し方や、敗北した兵士たちを助けて手当てするところなど、正行は寛容なところがあります。自分で言うのはちょっと微妙ですが……(笑)、私自身にもそういうところがあるかもしれないですね。あとは、自分に対して厳しいところが似ているかもしれません。こうと決めたら必ず最後までやり遂げるところでしょうか。
正行のメイクがものすごく美しかったのが印象的でした。
珠城:ありがとうございます! どこからでも美しく見えるようにこだわりぬきました。日本物ではメイクをいかに美しく見せるかというのも大きなポイントですよね。化粧命。今回のこだわりは、目尻からこめかみの “赤の浮き上がり方”です。そのまま使うのではなく、ベージュや白を混ぜ、ライトに当たったときの見え方を計算して自作しました。
南北朝時代ならではの武器の使い方や所作の違いというものはあるのでしょうか?
珠城:弓を持つこと自体が初めてでしたので、持ち方やそのときのスタイルなど最初に教えていただいたものを習得した感じです。あとは太刀ですね。扱い方や所作は使う武器によって変わってくるため、それを実際に経験してとても勉強になりました。その知識が今後にどう生きるかわかりませんが(笑)、その経験があるだけでやっぱり違うかなと思います。
日本物の作品ということで、意識した部分はいつもと違いましたか?
珠城:帯を腰で締めるということもあり、地面に足の裏をしっかりつけるようには意識していました。重心を下に落とし、役柄的にも腹が据わっているように見えるような動きです。ヒールを履くと体を引き上げるバランスになるんですよね。そこが大きな違いでしょうか。フラットな履き物の方が地面を踏みやすく安定感があります。ただ、履き物が薄くなるので体には負担がかかりました。なので、足の張りなどはきちんとケアしながら行っていましたね。
『桜嵐記』の東京での大千秋楽は珠城さんのタカラジェンヌ人生最後の日でもあったわけですが、終演後の思い出はありますか?
珠城:タカラヅカにおける仕事のすべてを終えた後にフェアウェルパーティを催させていただきました。そこで応援してくださった方々やファンクラブのみなさまにご挨拶し、感謝の気持ちをお伝えしてタカラジェンヌ人生を閉じました。
宝塚歌劇時代の演出家・上田久美子先生のこと
『桜嵐記』は、珠城さんと縁の深い上田久美子先生演出の作品です。退団公演が上田作品に決まったいきさつはありますか?
(※上田久美子さんは2022年3月末に宝塚歌劇団を退団)
珠城:上田先生がお忙しいのは存じていたのですが、先生とは『月雲の皇子』をはじめ、いろいろな作品で共に戦ってきましたし、最後にまたご一緒できたらと願っていました。『桜嵐記』は上田先生が書き溜めていたものから、私に合うのでは?、というものをご提案いただき形になった作品で、伝統的な日本物。所作だけでなく、発声や見得の切り方などの“型芝居”を大切にしてほしいと言われました。
上田先生から言われて印象的だった言葉はありますか?
珠城:褒めていただくことはあまりなかったですね(笑) でも、『月雲の皇子』の千秋楽で言われたことは忘れられないです。『桜嵐記』の千秋楽でも簡単には褒めないけれど役者として認めてくださっているんだなと感じることを言っていただきました。今まで、さらなる高みを目指すための課題を常にくださっていたのかなと思います。強い言葉でズバッとおっしゃいますが、すべて図星なので。
“人を見抜く力”をお持ちになっている先生だと思います。その人に合っている役だけでなく、その人の新しい面を引き出すためにあえて逆のタイプの役を当てることもありました。ですので、上田先生の作品に携わると引き出しが増え、確実に成長できるんです。そこがとても魅力でした。
俳優・珠城りょうさんの今を知るパーソナルなことあれこれ
退団して2年が経ちましたが、当時と比べて時の流れはいかがですか?
珠城:今までの人生の中で月組トップスター時代の5年間が最強に忙しかったです(笑) 宝塚歌劇団にいたときは、公演のことやその先のことを四六時中考え、昼から夜まで稽古を行い……というのがほぼ毎日。それに比べて今は穏やかに過ごしていますね。
仕事で疲れたときはどんなことでリフレッシュしていますか?
珠城:友人と会っておいしいものを食べに行くこと。あと私は体を動かすことが好きなので、ダンスのレッスンやマシンピラティスに行きます。そこで少し汗を流して気分を上げています。あとは韓国ドラマです(笑)
最近食べたおいしいものを、ぜひ教えてください。
珠城:友人とたまたま入った焼鳥屋さんが、過去イチおいしかったんですよ! 本当にびっくりするくらいおいしくて、1週間と少し経ってまたひとりで行こうとしたら定休日だったという、ちょっと残念なこともあったんですけど(笑) もうほかの焼鳥屋さんには行けないんじゃないかと思うくらい、特別においしかったです。
いいですねー! なにがいちばんおいしかったですか?
珠城:モモ! なにを食べてもおいしかったのですがモモの塩焼きがおいしすぎて、「え? モモでこんなに感動する?」っていうくらいのおいしさでした。正統派のモモがおいしいということは、結果なんでもおいしいという(笑) 最高でした。
退団後、OGの方とはお会いになっていますか?
珠城:少し前に同期の香咲(蘭 さん)に会いました。千海(華蘭)さんもこの間お会いして、光月(るう)さんとはこれから。ちょこちょこ会う予定がありますね。在団している方々とはなかなか会えないので今日、タカラヅカを卒業してから会う感じです。
今の珠城さんのマイブームはどんなことですか?
珠城:どうしたら質の高い睡眠がとれるかということ。マシンピラティスに通い始めてから、深く眠れるようになりました。「どうして今まで眠りが浅かったんだろう」「今までとなにが違うんだろう」というのを考えるのがちょっと面白くて(笑) ピラティスで体を動かして疲れているというのではなく、体や筋肉をのばして調子がよくなったからかな。ピラティスは呼吸とともにエクササイズを行うため、今までの浅い呼吸から、しっかり深い呼吸ができるようになったことも大きいかもしれないです。でもまだきちんと解明できていないので、今すごく気になっていることですね。
なにか狙っているアイテムはありますか?
珠城:新しいオーブントースターです。今、いろんな種類がありますよね。その中でも、トーストがおいしく焼けるという機能だけではなく、それひとつでいろんな使い方ができるものが欲しいなと思っています。
珠城さんといえばきゅうり。夏の野菜・きゅうりのおすすめの食べ方を3つ教えてください。
珠城:①きゅうりのたたきと鶏ささみのごまドレ和え ②塩昆布和え ③ぬか漬け、もしくは浅漬け。王道ですね(笑) 簡単に作れるものばかりなので、おすすめです。
今の月組について、これからの自分について
今後の月組に期待することはどんなことですか?
珠城:収録で言ったのと違ってしまうのですが…。“芝居の月組”と言っていただくことが多く、先輩方から受け継がれたものはありがたくて誇らしいことです。切磋琢磨して作り上げてきたものを礎にしつつ、今の状況下でも日々舞台に立てる喜びや幸せを噛み締めながら、支えてくださるみなさんに感謝の気持ちを忘れることなくみんな元気に過ごしてほしいですね。
コロナ禍で中止していた新人公演が『桜嵐記』で再開。そのとき珠城さんも演じられた正行役で礼華はるさんが新人公演初主演を果たしました。
珠城:『桜嵐記』新人公演を観たときに、なんてすがすがしい舞台姿なのだろうと。とってもまっすぐな子で、誠実さや温かさが伝わってくるのが彼女の魅力のひとつだと思っています。これからがとても楽しみです。
珠城さんご自身、また日本物や時代劇をやってみたいと思いますか?
珠城:時代劇、やってみたいですね。せっかく出させていただくならちゃんと勉強して向き合いたいです。映画『わたしの幸せな結婚』でも思ったのですが、映像作品は舞台とは作り方が違うのでとても興味深くて、ご縁があれば時代劇でも現代劇でも挑戦できたらうれしいです。
次回のミュージカル『天翔ける風に』はタカラヅカでもなじみ深くOGでもある謝 珠栄さんの演出です。ほかに、気になる演出家の方はいらっしゃいますか?
珠城:加藤拓也さん。昨年は『ザ・ウェルキン』を観に行かせていただきました。これから始まる、シス・カンパニー公演『いつぞやは』もとても楽しみ。年齢はお若いですが、留学経験もおありで映画演出もされている幅広い方で、今とても気になっている演出家です。『マヌエラ』でご一緒させていただいた千葉哲也さんも、演出家としても俳優としても素敵な方で勉強になることがたくさんありました。その経験を『天翔ける風に』にもつなげていけるように頑張りたいです。
タカラヅカを退団しても、変わらず真面目でストイックな珠城さんでした。たくさんの人の心を震わせた『桜嵐記』。作品にまつわるエピソードを知って改めて映像で観ると、また違った想いが押し寄せるかもしれません。
番組情報
【華麗なる宝塚歌劇の世界~Season5~】
『桜嵐記』(’21年月組 宝塚大劇場)
出演:珠城りょう/美園さくら/月城かなと ほか
※前後解説付き ゲスト:珠城りょう
放送日時:8月21日(月)22:00~/9月4日(月)22時~
番組解説
『太平記』や『吉野拾遺』などに伝承の残る南朝の武将・楠木正行の、儚くも鮮烈な命の軌跡を、一閃の光のような弁内侍との恋と共に描く。
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▶️時代劇専門チャンネル【華麗なる宝塚歌劇の世界~Season5~】特設サイト
撮影/黒石あみ イラスト/春原弥生 メイク/河上智美(Rouxda.) スタイリスト/久保コウヘイ 構成・文/淡路裕子
ジレ¥123,200(デサ ナインティーンセブンティトゥー)、シャツ¥22,000(デミルクス ビームス)、パンツ¥35,200(エッフェ ビームス) すべてビームス公式オンラインショップ 、イヤリング¥7,020・リング¥5,400(アビステ) ☎︎03-3401-7124
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