元雪組トップスター・彩風咲奈さんのコンサートが開幕! 素晴らしい楽曲と感情をのせたダンスの融合、豪華ゲストの登場など見どころたっぷり♡
2024年に宝塚歌劇団を退団した、元雪組トップスターの彩風咲奈(あやかぜ・さきな)さんがいよいよ始動! 5月2日に1st Concert『no man’s land』の開幕を迎えました。タイトルの『no man’s land』は、曖昧な状態という意味もあります。タカラヅカの男役を卒業し、ひとりの「彩風咲奈」という表現者になる、その中間の状態である今を表現したのだそう。今回のインタビューでは、約半年前に退団した宝塚歌劇のことやコンサートの見どころ、これからの展望についてうかがいます。
縁の深い方々とご一緒するコンサート。「みなさんにフラットな気持ちで楽しい時間を過ごしていただくのが願いです」
――退団後のインタビューで「柔らかくなったと言われます」と言われている記事を拝見しました。退団して約半年、改めて今の心境はいかがですか?
彩風さん(以下敬称略):広い海にたったひとりで泳ぎ出たような気持ちです(笑)。それが柔らかく見えるようになったと言われる理由のひとつなのかなぁ。
うまく言葉で言い表せないのですが、宝塚歌劇団があって、雪組があっての「彩風咲奈」だったところから、今はたったひとりの「彩風咲奈」になったことが大きいのではないかと思っています。タカラジェンヌでも男役でもトップスターでもない自分は、こんなにシンプルなものなんだなということを実感しているというか。
――さまざまなものが削ぎ落とされて。
彩風:はい、削ぎ落とされました。自分の芯はこうだったんだなという感じですかね。
――大きな海に出たこの先を、自由に泳げるという楽しみもありますよね。
彩風:そうですね。大好きな宝塚歌劇を離れる寂しさや「もうあの舞台には立てないんだ」「男役はできないんだ」という気持ちがあった反面、「これからは何でもできるぞ」という期待感もあって。楽しい、寂しい、うれしい、苦しい…この半年でいろいろな感情を経験しました。
――ファーストコンサートを経てこれからどんな活躍をされていくのかみなさん楽しみにされていると思うのですが、今後どんな気持ちを持ち続けていきたいですか?
彩風:いつも自分自身に向けて思うのは「何があってもきっと大丈夫」ということ。苦しいことがあっても、その状況が何日かで変わることがあるし、何年か後に好転することもあるということを学んできたからかもしれません。
――在団中でもっとも印象に残っている作品は何でしょうか?
彩風:トップスター時代のものはどれも本当に印象深いですが、いろんな意味でいちばん心に残っているのは『ODYSSEY(オデッセイ)』かな、やっぱり。
最初は東京国際フォーラムで公演する予定だったものが、コロナの影響で全日程中止になったんです。楽しみにしてくださっていたお客さま、一緒に作ってこられた先生方やスタッフのみなさん、共演者のみんなの気持ち…本当に苦しくて悲しい思いをたくさん感じました。当時は、やり場のないネガティブな気持ちに包まれていましたね。
そこから約半年の期間を経て、梅田芸術劇場で幕を開けたときのお客さまからの拍手は忘れることができません。私、退団公演でも涙を流していないのですが、『ODYSSEY』のときだけは初日も千秋楽もご挨拶がボロボロで(笑)。あのときは、芸名の「男役・彩風咲奈」でも取りつくろえないくらいに気持ちがあふれてしまったんですよね。
ODYSSEY号を再出航させるためにみんなですごく頑張ったことや、途中で美穂圭子(みほ・けいこ、専科)さんが戻ってこられて合流したときにまたこの作品の完成度が上がって旅の終わりに向かっているときの気持ちは、いまだによみがえります。
『ODYSSEY』が公演していたときは宝塚歌劇の他のすべての公演が止まっている状況で、そんな中でお客さまの「ODYSSEY頑張れ! タカラヅカ頑張れ!」という応援が伝わってきて、あんなにもいろいろな方のお気持ちをいただいて公演できたことは本当に幸せでした。でもそれまでの苦しい出来事があったから、「幸せ」というひと言では表せなくて…。忘れられない作品のひとつになっています。
――お話をうかがっただけで鳥肌が立つような感覚です。あの頃は世の中的にも先が見えなくて、とても大変な状況でしたよね。
彩風:そうですね。今だからこそ振り返れますけれど。
――雪組は今、朝美 絢(あさみ・じゅん)さんのトップお披露目公演中です。これからの雪組と朝美さんに期待することはどんなことでしょうか?
彩風:あーさ(朝美さんの愛称)の持ち味を生かした新しい雪組が観られると思うと、すごく楽しみです。
あーさはいつも稽古場に期待以上のものを持ってくるので、とても楽しかったです。「こうしてくるかな?」という予想を超えてくるんですよ。私が考えるものとは全然違うからこそ、新鮮な気持ちで一緒に作ることができました。きっと今の雪組がスタートして、改めてみなさんから刺激を受けて進化しているんじゃないかなと思います。
――彩風さんのコンサートがいよいよ始まりますが、「新生・彩風咲奈のここを観てほしい」ポイントはどんなところでしょう?
彩風:男役でなくなった自分がどんなふうになるのかまったくわからないので、私自身もそこを楽しみながらやりたいです。お客さまには想像を膨らませてお越しいただいてもいいですし、何も考えずにフラットな気持ちで気軽に観ていただいても。一緒に楽しい時間を共有できたらうれしいです。
大阪公演のスペシャルゲストの水 夏希(みず・なつき、元雪組トップスター)さんは、私が男役としても舞台人としてもゼロに近かった時期しか共演していない方ですので、今、あの頃のものに挑戦したらどうなるかと。先生と共演させていただくような気持ちです。
在団中も、卒業してから出演された舞台を観劇しても、いつだって水さんから学ばせていただくことはたくさん。自分が新人公演をしていたときは穴が開くほど水さんのことを見ていたのですが、きっと今回もそうなるんじゃないかなと思っています(笑)。
東京公演のスペシャルゲストは望海風斗(のぞみ・ふうと、元雪組トップスター)さん。ご活躍されている姿に尊敬の念が増すばかりの望海さんと、新たなスタートを切ったばかりの自分が共演させていただくことが楽しみでもあり、怖くもあり、緊張もしています。
望海さんとは思い出深い作品をご一緒させていただき、その時間が本当に楽しくて、望海さんご自身のことも大好きで。またこうして望海さんとの舞台で感じる情熱と集中力を再び体感することができるのだと思うと、心が躍ります。
――雪組を作られてきたおふたりとの共演は、ファンの方もうれしいですね。
彩風:あの頃の雪組をご存知の方には懐かしさがあり、今回初めてご覧になる方には新鮮さがあり、みなさんに楽しんでいただけるように頑張りたいです。
――アフタートークに登場される方もそれぞれ縁のある方です。
彩風:彩凪 翔(あなやぎ・しょう、元雪組男役)さんは、私のタカラヅカ人生にとって欠かせない存在です。彩凪さんとの思い出はもう、語りきれないくらいのエピソードが出てきますね。
雪組同期の舞羽美海(まいはね・みみ、元雪組トップ娘役)はトップ娘役になるのが早かったので、一緒に舞台を作ったのは下級生の頃だけなのですが、舞台についていっぱい話し合ったことや美海にしか話せなかったことなど、思い出します。
同じく同期の愛月ひかる(あいづき・ひかる、元星組男役)は同じ組ではなかったからこそ、刺激をもらうことがたくさんありました。自分とは違う考えを持っている愛が言うひと言にハッとさせられことも。なにせお話が面白いから、今回もきっと話を回してくれると思います。コンサートを観た後に盛りだくさんのトークが展開されると思いますので、みなさんどうぞついてきてください(笑)。
――ステージが終わった後でもパワフルなお楽しみが?
彩風:結構ガツンとくるかもしれません(笑)。
――コンサートは歌のほか、彩風さんの表現力豊かなダンスも楽しめると思うのですが、ダンスへのこだわりはどんなことをお持ちですか?
彩風:自分の思いや魂の叫びをのせられるのがダンスだと思っています。曲のインスピレーションや自分の想像をまずは表現して、そこに振付の先生方のニュアンスやこだわりが重なるとまた新たな発見があり、どんどん進化していくという過程がとても楽しいんです。今回も、意味のあるダンスと、楽曲の魅力や音の楽しさを合わせてお届けできたらと思っています。
私は男役だったこともありますが、ポーズも大事だけれどそこに向かっていくまでの流れを組み立てることが好きで。どんな小さな動きでも、つなぎの動きでも、すべてを美しく観せたいということに今後もこだわっていきたいですね。
――これから先の表現者人生では、どんなことをやりたいと考えていますか?
彩風:今回のような、歌劇団にいたときとはまた違う新たな舞台のお仕事は、さまざまな発見をもたらしてくれました。舞台はもちろん、それ以外の世界もどんどん広げていきたいです。ファッションのお仕事、声のお仕事など、いろいろなジャンルに挑戦したいです。
雪組トップスター時代の彩風さんはとっても真面目でストイックな印象でしたが、その面影は残しながらも初夏のような朗らかさが残る方でした。
次回は彩風さんのパーソナルな部分を深掘りします。お楽しみに!
トップス¥37,400・コルセットベルト¥41,800・シフォンパンツ¥26,400(HYKE<BOWLES>)
上に重ねたパンツ¥35,200(mtmodelist) イヤーカフ¥14,300・リング[右手] ¥30,800・リング[左手] ¥35,200(ブランイリス<ブランイリス トーキョー>) シューズ/スタイリスト私物
<衣装問い合わせ先>
mtmodelist 03-5962-7596
ブランイリス トーキョー 03-6434-0210
BOWLES 03-3719-1239
撮影/黒石あみ ヘア&メイク/岡田いずみ スタイリング/町野泉美 文/淡路裕子
彩風咲奈 1st Concert『no man’s land』
【Cast&Staff】
出演:彩風咲奈
(スペシャルゲスト) 水 夏希 望海風斗
竹内將人 菜々香 鈴木凌平
天野朋子 酒井比那 井上弥子 澤村 亮 感音
構成・演出:荻田浩一
【公演詳細】
<大阪公演>
日程:2025年5月2日(金)〜4日(日)
会場:梅田芸術劇場メインホール
<東京公演>
日程:2025年5月10日(土)〜12日(月)
会場:東京国際フォーラム ホールC
◆ライブ配信&ライブ・ビューイング実施決定!
5/11(日)13:00公演(ネット会員半館貸切)&17:00公演
※いずれも望海さんゲスト回、アーカイブなし
詳しくは公演HPをチェック!
彩風咲奈
あやかぜ・さきな/元宝塚歌劇団雪組トップスター。
2007年、93期生として首席で入団。星組公演『さくら』『シークレット・ハンター』で初舞台を踏み、雪組に配属。2010年『ソルフェリーノの夜明け』以降、5回にわたって新人公演主演を務める。2021年雪組トップスターに就任し、『CITY HUNTER』『Fire Fever!』で大劇場公演お披露目。2024年『ベルサイユのばら』―フェルゼン編―にて退団。5月2日よりファーストコンサート『no man’s land』を開催。
▶︎オフィシャルHP
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