約22億円の製作費をかけた韓国SFアクション大作
本作を手掛けたのは、『私のオオカミ少年』や『探偵ホン・ギルドン 消えた村』のチョ・ソンヒ監督。チョ監督が10年間にわたって構想し、約240億ウォン(約22億円)の製作費をかけて作られたSF超大作です。SF設定の作品はリアリティを出すのが非常に難しく、ヴィジュアルデザインやCGがしっかり作り込まれていないと失敗することも多いのですが、本作はハリウッドのSF大作と比べてもあまり見劣りしないのでSF作品好きの方にも安心してオススメできます。
例えば、冒頭から登場する宇宙空間や宇宙船はビックリするぐらい世界観がしっかりした映像になっているので、鑑賞開始3分ほどで視聴者をグッと引き込みます。他にも宇宙船の艦内やスペースコロニー(選ばれた人類の為に宇宙空間に建設されたコロニー)といったヴィジュアルも魅力的なので、『スタートレック』や『スターウォーズ』シリーズが大好きな筆者は思わず大興奮してしまいました。
そんな壮大な世界観で描かれる本作の物語の舞台は2092年。
優秀なDNAを持った人間は、砂漠化が進んで住みづらくなった地球を離れて宇宙で暮らしています。そしてそれ以外の人間は悲惨な環境の地球で苦しみながらなんとか生きているという辛い状況。
優秀なDNAを持った人の宇宙移住化が進んだことで、衛星や宇宙船の破片などのゴミが大量に宇宙を散乱してしまいます。その〝宇宙ゴミ〟を回収して生計を立てている人達が“スペース・スウィーパーズ”と呼ばれるゴミ清掃員たち。毎日ゴミの奪い合いのためにバトルを繰り広げていて、彼らの中で最も稼いでいるのが宇宙船“勝利号”の乗組員たちです。ある日、彼らは壊れたスペースシャトルの中から幼い少女を発見したことで、ある危険な取引に巻き込まれていくのですが、ここからは予想のつかない展開にハラハラドキドキが止まりません。気付けば自分も“勝利号”の乗組員のような気分に(笑)。
キム・テリやソン・ジュンギなど豪華キャストが魅力的なキャラクターを好演
“勝利号”の乗組員のメンバーは、頭脳明晰だけど短気な性格の女船長チャン、天才的な操縦技術を持つ操縦士のテホ、頼りになるタフガイで機関士のタイガー、プログラム修正された軍事ロボットのバブズという個性的なキャラクター4人。
本作は俳優陣も豪華で、『お嬢さん』や『リトル・フォレスト 春夏秋冬』などのキム・テリがチャン船長役、『私のオオカミ少年』やドラマ『太陽の末裔 Love Under The Sun』、『ヴィンチェンツォ』などのソン・ジュンギがテホ役、『犯罪都市』や『エクストリーム・ジョブ』のチン・ソンギュがタイガーを演じています。
これまではどちらかというと清楚で可憐な役が多かったキム・テリが、クールでワイルドなチャン船長を演じる姿がとっても新鮮でしたし、『ヴィンチェンツォ』の大ヒットでさらなる人気を獲得したソン・ジュンギが演じる、ちょっとやんちゃなテホもめちゃくちゃ魅力的! そして『エクストリーム・ジョブ』や『犯罪都市』などで圧倒的な存在感を放っていたチン・ソンギュが、強面だけど心の優しいタイガーを演じていて良い味を出しています。
宇宙のはみだし者たちが少女を守る胸アツ展開が最高!
普段は言い争いばかりしている3人と軍事ロボットのバブズが、幼い少女と出会ったことでコミカルな表情や慌てふためく姿を見せるシーンも本作の見どころ。実はこの少女、ドロシーという名の大量破壊兵器として作られたロボットで、彼女がくしゃみをしようとした瞬間に人間3人が床に伏せたり、ドロシーが近づくだけでみんなビビリながら後ずさりする姿が滑稽でとっても面白いんです。もちろん私だって、見た目は少女の大量破壊兵器ロボットが目の前に現れたら同じようにビビると思います(笑)。そういったほっこりシーンもあれば、本格的なアクションシーンもあるので全く飽きることなく楽しめるのも本作の大きな魅力。
最初はテロリストや巨大企業がドロシーを探していることを知った4人が、お金目当てに彼女を利用しようと企むのですが、純真で可愛らしいドロシーと過ごすうちにだんだん気持ちに変化が生じてきます。気付けば4人は彼女を守るべく敵と戦うようになる、という最高に胸アツな展開にかなりテンションが上がりました。中でも、タイガーがめちゃくちゃ強い敵にやられてボロボロになりながら戦うシーンは、好きにならずにはいられません!ちなみに本作を観たあとすぐに『犯罪都市』を見直すほど、筆者はチン・ソンギュにハマってしまいました(笑)。
“勝利号”の乗組員4人にはそれぞれ抱えている苦悩がありますが、ドロシーと出会ったことで協力し合い、“本当に大切なことは何か?”ということにちゃんと向き合う姿にも感動させられます。だからこそ、観終わったあとの満足度も高いのではないかなと思います。
なかなか気軽に遊びに行くことができない状況が続いていますが、SFアクション大作『スペース・スウィーパーズ』を観て日々のモヤモヤを吹き飛ばしてみてはいかがでしょうか。
『スペース・スウィーパーズ』はNetflixで配信中!
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奥村百恵
音楽誌・映画雑誌の編集部を経て、現在はフリーのライターとして年間300本以上は観ている映画や海外ドラマなどのコラム執筆や海外・日本の俳優のインタビュー記事などを担当。愛犬と一緒にNetflixの作品を観るのが至福の時間!!