「自閉症をちゃんと知ることで抱いていた怖さがなくなった」|映画『梅切らぬバカ』俳優 塚地武雅×和島香太郎監督 対談(後編) | Domani

Domani

働く40代は、明日も楽しい!

 

LIFESTYLEエンタメ

2021.11.22

「自閉症をちゃんと知ることで抱いていた怖さがなくなった」|映画『梅切らぬバカ』俳優 塚地武雅×和島香太郎監督 対談(後編)

年老いた母親と自閉症の息子の、温かくて優しい日常を描いた映画『梅切らぬバカ』(現在公開中)。今作で息子役の〝忠さん〟(ちゅうさん)を演じた塚地武雅さんと和島香太郎監督の対談を前後編でお届けします。後編は障碍のある方との接し方で変わったことや、母親を演じた加賀まりこさんの今作への熱意など、たっぷりと教えていただきました!

Tags:

インタビュー前編
▶︎伝えたかった「あなたはこの街の有名人になりなさい」という言葉の意味|映画『梅切らぬバカ』俳優 塚地武雅×和島香太郎監督 対談(前編)

自閉症をちゃんと知ることで抱いていた怖さがなくなり、考え方が変わりました

――塚地さんは今作で自閉症を演じることで、どんな気づきがありましたか?

塚地さん(以下敬称略):正直な話をすると、僕はこの作品に携わる前は、街で自閉症の方が大声を出しているのを見かけると、どこか怖さを感じていました。でも、グループホームの方とお話しを聞いているうちに、印象がガラッと変わりました。

ある方は、ずっと同じ言葉を繰り返していました。突然聞いたら、怖くなってしまうかもしれないですが、ずっと一緒にいると、“この人はお気に入りの言葉を繰り返し言っているだけ”と言うことがわかるんです。すると、それまで抱いていた恐怖感は、無知な自分が引き起こした偏見だということに気づいたんです。

和島さん(以下敬称略):知るだけで、まったく変わってきますよね。

塚地:そう思います。きっと、映画『梅切らぬバカ』を観たことによって知る人も多いと思うので、本当に大事な作品だと思います。

――デリケートな内容だからこそ、作るのは難しかったのではないでしょうか。

和島:この映画は、出演者1人1人、スタッフ1人1人が寄り添ってくださったことで完成した作品です。自閉症の人はどのような暮らしをしているのか、周りの人はどんなまなざしで彼らを見ているのかなど、丁寧に考えてくださっているので、すごく支えられましたね。

――この10年で、自閉症や知的障碍だけでなく、発達障碍など、認知度が高くなってきたように感じます。そこでの問題定義も新しく生まれてきたと思うのですが、この映画は、その先を見せてくれるようで、ある意味、“安心”に繋がると思うんです。

塚地:そうなってくれたらうれしいですよね。

自閉症の方の1人暮らしが、楽しいものであることに救いを感じたんです

和島:前編で自閉症の方のドキュメンタリー映画を編集したときの話をしましたが、彼は近隣の方とのコミュニケーションをうまくいっていなかったのですが、すごく楽しそうに1人暮らしをしていたんですよ。月に2回、傾聴ボランティアの方と最近観たテレビの話をしたり、大好きな仮面ライダーのDVDを観たり。

――周りにいる人の不安を跳ね返しているんですね。

和島:そうなんです。たくましく生きているんですよ。それを見てとても救いになりました。もちろん、「彼は恵まれている」という意見もあると思うのですが、僕はそういった関係が生じるところに、希望を感じました。きっと、障碍のある方の親御さんは心配で仕方がないと思うのですが、身近なところに、こういう風に関わってくれる人や、見守ってくれる人はいるはずという思いはありますね。

障碍の有無関係なく、親子の愛が描かれた映画だと思います

――20年後、30年後には、福祉もより良くなっている気がしますね。

塚地:そうですよね。今作は自閉症の息子と高齢の母親の話ですが、これは年齢関係なく、若くてもあると思いますし、自閉症でなくても親が先にこの世を去るのは順番的には当たり前のことですよね。だからこそ、子どもを残して大丈夫なのかという思いは、誰もが感じることだと思います。

――障碍の有無関係なく、親子の愛の映画ですよね。

塚地:“私には関係ないな”とはならないと思うんです。親の子に対する愛情もこの映画からはしっかり伝わりますし、逆も然り。映画館を出たときに、持って帰れるものが必ずあると思うので、ぜひ観ていただきたいですね。

©2021「梅切らぬバカ」フィルムプロジェクト

加賀さんと監督の言い合いは見応えがありました(笑)

――母親役を演じていた加賀まりこさんのお芝居もすごく素敵でした。

和島:加賀さんの作品に対する愛情を深く感じました。その愛を受け止めて、溶け込ませていく作業をするからこそ、加賀さんと真正面から向き合うことができたんです。ちゃんと向き合わないとダメだという当たり前のこともしっかりと学びました。

©2021「梅切らぬバカ」フィルムプロジェクト

©2021「梅切らぬバカ」フィルムプロジェクト

塚地:監督と加賀さん、お互いの気持ちが熱すぎて、いつもバチバチ。よく言い合いになっているんですよ(笑)。

和島:(笑)

塚地:この映画が撮り終えた時には本当にいいものになるんだろうなって、少し離れて見ていて感じました(笑)。でも、加賀さんのキャリアを考えたら、萎縮しちゃう監督もいると思うんですよ。でも、物怖じもせず、真正面から話していて。すごくいいディスカッションをされていましたね。

和島:加賀さんにお会いしたとき、第一声で「あんた、声が小さいから何言っているかわかんないけど、現場で言いたいことがあったら、ちゃんと“もう1回”って言いなさいよ」って言ってくださったんですよ。それが最初の約束でした。その言葉がとても嬉しかったですし、救われました。

塚地:言い合いは見応えがありましたね(笑)。でも、絶対にいい方向に行くのがわかっていたので、ドキドキと、安心、両方の気持ちで見ていました(笑)。

©2021「梅切らぬバカ」フィルムプロジェクト

――みなさんが、妥協せずに作った作品になっているんですね。

塚地:もちろんです。この作品を観た人たちが、何かを感じ、優しい気持ちになってもらえたら、嬉しいです。

関連記事
▶︎伝えたかった「あなたはこの街の有名人になりなさい」という言葉の意味|映画『梅切らぬバカ』俳優 塚地武雅×和島香太郎監督 対談(前編)

映画『梅切らぬバカ』(シネスイッチ銀座ほか全国公開中)

©2021「梅切らぬバカ」フィルムプロジェクト

あらすじ
都会の古民家で寄り添って暮らす母と息子。ささやかな毎日を送っていたが、息子が50歳となり、自分が居なくなったあとを思い、グループホームに預けることに。自閉症を抱える息子と、母親が社会の中で生きていく様を温かく、そして誠実に、丁寧に描く物語。
▶︎HP 

配給:ハピネットファントム・スタジオ

俳優/お笑い芸人

塚地武雅

1971年、大阪府出身。1996年にお笑いコンビドランクドラゴンを結成。2000年、2001年にNHK『爆笑オンエアバトル』のチャンピオン大会に進出しブレイク。その後は俳優としても活躍。これまでに『間宮兄弟』(06)、『の・ようなもの のようなもの』(16)、『高台家の人々』(16)『嘘八百 京町ロワイヤル』(20)、『樹海村』(21)などがある。

映画監督

和島香太郎

1983年、山形県出身。2006年、京都造形芸術大学卒業。2007年にドラマ『聴く先生』を監督。2008年に『第三の肌』を撮影。2010年にトロントジャパニーズ短編映画賞にて『第三の肌』が受賞。2014年に初めて長編映画として『禁忌』を手掛ける。

撮影/深山のりゆき  文/吉田可奈

Domaniオンラインサロンへのご入会はこちら

Read Moreおすすめの関連記事