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2022.02.20

池松壮亮×伊藤沙莉 〝息ピッタリ〟のスペシャル対談(後編)|映画『ちょっと思い出しただけ』

1年ずつ同じ日を遡り、別れてしまった男と女の“終わりから始まり”の6年間を描いた映画『ちょっと思い出しただけ』。本作で怪我でダンサーの道を諦めた照生を演じた池松壮亮さんと、タクシードライバーの葉を演じた伊藤沙莉さんに撮影秘話をたっぷりとお伺いしました。インタビューの後編もお二人の和やかなトークをお楽しみください!

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インタビュー前半はこちら
▶︎自身の恋愛経験が反映されたシーンも!?|映画『ちょっと思い出しただけ』池松壮亮×伊藤沙莉スペシャル対談(前編)

永瀬正敏さんとの撮影秘話で大盛り上がり!

――本作が作られるきっかけとなったクリープハイプさんの主題歌は、ジム・ジャームッシュ監督の『ナイト・オン・ザ・プラネット』という映画にインスパイアされたもので、本作にはジム・ジャームッシュ監督の『ミステリー・トレイン』、『パターソン』に出演している永瀬正敏さんが出演されていますよね。現場では永瀬さんとどのようなお話をされましたか。

池松壮亮さん(以下敬称略):ジャームッシュ監督との思い出話をいくつか話してくださいました。中でも印象に残っているのは「ジムは現場でいつもカメラを持ち歩いてて、俳優やスタッフの何気ない瞬間をポートレイトとして刻むことが好きだった」という話。永瀬さんも同じように以前から現場にカメラをよく持ってきていて、僕らふたりも撮ってもらったよね?

©︎2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会

伊藤沙莉さん(以下敬称略):はい。私は何故か全身がビッチャビチャになるシーンを撮ったあとに永瀬さんにカメラを向けられまして(笑)。

池松:そうそう!「ちょっと撮りたいんだけど」って(笑)。女優さんの場合、普通だったら「ビッチャビチャの姿はちょっと…」とマネージャーさんが止めたりすることもあるけれど、伊藤さんもマネージャーさんも全く気にしている様子がなくて(笑)。

伊藤:「大丈夫ですか?わたしずぶ濡れですけど?」と言ったら「ずぶ濡れのままでいいですよ」と。なので「わかりました!」と言って撮ってもらいました(笑)。

池松:永瀬さんが現場にカメラを持ってきて僕たちのポートレイトを撮ってくれたのは、ジャームッシュ監督が大事にしてきた“パーソナルな出会いを刻むこと”を継承しようとしていたからなのではないかとふと思いました。シャッターを切るとは2人にとってたぶんそういうことなのではないかと。

そしてこの映画はそんなさりげない美学を持った2人のDNAを受けて作られた作品だということを永瀬さんは喜んでくれていたんじゃないかとも思いました。映画とはいわば2度とやってこない時間を刻むものであって、写真も同じような意味を持ちますよね。お2人はその人や時間との出会いを刻むためにポートレートを撮っていたんじゃないかと。

〝刻む〟って実はすごく残酷なことでもあって、例えば撮った側は撮った写真を見るたびにシャッターを切った人や時間のことを思い返すことになりますよね。撮られる側はたぶん一生見ることのない写真を…。お2人はその写真をどこかに売ったり、シェアして「いいね」をもらおうとなんてたぶん全く考えていません。恐らくあくまでパーソナルな出会いを刻むようにシャッターを切っている。 “刻む”ということを続けながらジャームッシュ監督も永瀬さんも映画や人と向き合ってきたのではないかと、そんなことを思いました。今話したのは僕の解釈ですが、そんな美しいインスピレーションをこの映画に持ち込んでくれる永瀬さんに心から感謝しましたし、感動しました。


映画の中の照生と葉のように息ピッタリのトークを繰り広げていた池松さんと伊藤さん。そんなお二人が出演する映画『ちょっと思い出しただけ』を是非チェックしてみてくださいね!

Column
−おふたりのおすすめ映画は?

伊藤:昨年の夏に観た『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』はとても良かったです。しんのすけは幼稚園の同級生の風間くんに誘われて全寮制の超エリート校に1週間だけ体験入学するのですが、もともとエリートの風間くんはずっとふざけているしんのすけと喧嘩しちゃうんです。そのあといろいろ事件が起きたりして、謎解き要素もあって楽しめましたし、何より風間くんがしんのすけたちを体験入学に誘った本当の理由がわかった途端に胸がキュッとなって泣いちゃいました。ちなみに、先日、柄本佑さんとお仕事ご一緒したのですが、佑さんもこの映画を最近のベスト3に挙げていました。

池松:数日前にNetflixで観た『ロスト・ドーター』という映画がとても良かったです。 とある女性の崩壊と再生のような内容かなと思いきや、母とは、娘とは、子を産み育てるとは、女とは。と、かなり広く深く潜ったところをパーソナルな視点から漂うものとその問いに挑んで確かに掴み取っている作品でした。女優のマギーギレンホールが初監督した作品で、今年の映画賞を席巻中です。オリヴィア・コールマンが見事で、撮影や脚本も見事。これまで見たこの手のジャンル映画の中でもかなり良かったです。

写真/三橋優美子 取材・文/奥村百恵

映画『ちょっと思い出しただけ』 ※現在公開中

©︎2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会

−Story
照明スタッフの照生と、タクシードライバーの葉。 物語はふたりが別れてしまった後から始まり、時が巻き戻されていく。 愛し合った日、喧嘩した日、冗談を言い合った日、出会った日…。 コロナ禍より前の世界に戻れないように、誰もが戻れない過去を抱えて生きている。 そんな日々を”ちょっと思い出しただけ”。

−About
クリープハイプの尾崎世界観が自身のオールタイムベストに挙げるジム・ジャームッシュの名作映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』に着想を得て書き上げた、本作の主題歌『ナイトオンザプラネット』。 『バイプレイヤーズ』シリーズ、『くれなずめ』などこれまで仲間たちとの友情を描いてきた松居大悟監督がこの楽曲を受けて、初となる完全オリジナルラブストーリーとして映画化。 これまで『君が君で君だ』などで松居監督作品にも多く出演してきた池松壮亮が主演を務め、今や数々の作品から引く手数多の伊藤沙莉と初共演を果たした。そのほか永瀬正敏、國村隼、尾崎世界観、河合優実、成田凌など豪華キャストが出演している。

■キャスト・スタッフ
出演:池松壮亮、伊藤沙莉 ほか 監督・脚本:松居大悟 主題歌:クリープハイプ「ナイトオンザプラネット」(ユニバーサル シグマ)
■制作・配給: 東京テアトル
公式サイト
公式Twitter
公式Instagram

Profile

池松壮亮

1990年7月9日、福岡県出身。2003年にハリウッド映画『ラスト サムライ』で映画初出演を果たす。トム・クルーズ演じる主人公と心を通わす少年役で第30回サターン賞の若手俳優賞にノミネートされた。近年の出演作に『夜空はいつでも最高密度の青色だ』(17/石井裕也監督作品)、『君が君で君だ』(18/松居大悟監督・脚本作品)、『斬、』(18/塚本晋也監督作品)、『宮本から君へ』(19/真利子哲也監督作品)、『アジアの天使』(21/石井裕也監督作品)などがある。公開待機作は映画『シン・仮面ライダー』(23/庵野秀明監督作品)など。松居大悟監督が手がけたクリープハイプのシングル「憂、燦々」(13)のMVにも出演している。

伊藤沙莉

1994年5月4日、千葉県出身。2003年にドラマデビューを果たす。昨年は映画『劇場』『ステップ』『タイトル、拒絶』『ホテルローヤル』『十二単衣を着た悪魔』などに出演し、第63回ブルーリボン賞助演女優賞、第45回エランドール賞新人賞の栄誉に輝いた。近年の出演作に連続テレビ小説「ひよっこ」(17)、「全裸監督」(19、21)、「いいね!光源氏くん」(20、21)、「大豆田とわ子と三人の元夫」(21/ナレーション)、「モモウメ」(21)、映画「ボクたちはみんな大人になれなかった」(21)、「シチリアを征服したクマ王国の物語」(22/日本語吹替版)、舞台「首切り王子と愚かな女」(21)などがある。ドラマ「ミステリと言う勿れ」(フジテレビ系)が放送中のほか、「拾われた男」がDisney+で今夏配信される。

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