Domani

働く40代は、明日も楽しい!

 

LIFESTYLE インタビュー

2025.08.05

【対談】明日海りおさん×七海ひろきさん「元宝塚男役の俳優が演じる自立した女性像という枠にとらわれない表現を深めていきたい」|ミュージカル『コレット』

フランスの女性作家、シドニー=ガブリエル・コレットの生涯を描いた話題のミュージカルに出演する、明日海りおさんと七海ひろきさん。宝塚歌劇でともに芸を磨いたふたりに、詳しくお話をうかがいました。2回に渡ってお届けします!

Tags:

尊敬し合う宝塚の同期が本格共演。お互いに影響を受けあった、友情を超えた関係性は大きな見どころ

8月6日に開幕するミュージカル『コレット』は、フランス文学界でもっとも有名な女性作家のひとりであるシドニー=ガブリエル・コレットの物語。

主人公のコレットには、舞台をはじめドラマなど映像作品でも輝きを放つ明日海りお(あすみ・りお)さん。そしてコレットに大きな影響を与えた男装の麗人・ミッシーを、ジャンルレスに活躍を続ける七海ひろき(ななみ・ひろき)さんが演じます。

ふたりは宝塚歌劇団の同期として切磋琢磨し、星組男役スターだった七海さん、明日海さんは花組トップスターとなり、ともに2019年に退団。『コレット』は退団後の本格的な共演となり、それを楽しみにしているファンの人も多いはず。

今回は『コレット』の見どころや、コレットとミッシーについての考察など、作品にまつわるあれこれをうかがいました。

写真をもっと見る

——まず、ミュージカル『コレット』への出演が決まったときのお気持ちを教えてください。

七海さん(以下敬称略):では私から。決まったときは心からうれしかったです。(明日海さんと)ずっと一緒にお芝居をしたいと思っていましたがなかなか機会がなく、そのチャンスがきたな、と。

同じ作品への出演がかなったばかりか、関係性が深く絡みも多い役だとうかがい、ますます喜びが大きくなりました。座長である明日海りおさんが作られる世界観に、自分が入れることを心待ちにしています。

明日海さん(以下敬称略):退団後のかいちゃん(七海さん)は、どこのジャンルにも属さない「七海ひろき」というカラーを持ったアーティストとしていろいろな種類のお仕事をされている、本当に尊敬する同期。

彼女がどれだけお芝居を大事に思っているかということは昔から知っていて、そんなかいちゃんと今回共演させていただくことが私もとてもうれしいです。共演が発表になる前から「ミッシーはかいちゃんにぴったりだな」と思っていたので、かいちゃんの出演が決まって願ったりかなったりなんです(笑)。

写真をもっと見る

——ベル・エポック期から1900年代半ばにフランス文学界で活躍したコレット、男装の麗人で彫刻家・画家としてコレットに影響を与えたミッシー。日本ではそれほど有名でない印象ですが、どんな人物なのでしょうか?

明日海:私が演じるコレットは、男女の格差がはっきりしていた時代でもきちんと自分の意思を持って生きた女性だと考えています。

たとえば、みんなが「どうしよう」と悩んでいることを「どうして? こうすればいいのに」と、常識にとらわれすぎることなく、自分の物差しでちゃんと物事を見る力がある人。そして、好奇心や興味をそそられるものに対して飛び込んでいける勇気と行動力があります。フッ軽なんです(笑)。

コレットの人生にはいろいろな転機が訪れます。結婚したり、そしてその相手が思っていたような人とは違ったり、不倫もあったり、人に利用されたりすることがあるのですが、「これがダメならああしてみよう」「こうしてみよう」と、自分なりに人生を切り開いていくんです。

ただ“強い女性”というのではなく、必死になって自分が求めていることを追い続けてしなやかに生きた女性。それが人の目にはちょっと変わって見えたり、スキャンダラスに思われたり、自分勝手に映るときもあったかもしれないけれど、最後には国葬が行われるくらい認められるんです。

名作を残し、まだ無名のオードリー・ヘップバーンを見出すなど、この時代でもちゃんと自分の道を歩んだ女性のシンボル的存在になっていきます。

宝塚歌劇の男役出身の俳優にぴったりだからと言っていただけるような自立した女性像ではありますが、そういう枠組みを超えて、彼女の内面をしっかり理解して自分なりのコレットを表現したいと考えています。

写真をもっと見る

七海:私が初めてコレットを知ったのは映画『コレット』で、なんて破天荒な生き方をする人なんだろうと圧倒されました。波乱万丈な人生を送りつつ、最終的には国葬をしてもらえるほどの人になっていくって、いったいどんな人なんだろうと興味深いですよね。

ついて行きたくなるとか、応援したくなるとか、彼女が書いた本を読みたくなるとか……、多くの人に影響を与えるほどものすごく強い魅力を持った女性だったのだろうと感じています。

私が演じるミッシーという役は、コレットと出会うことによりかなり人生が変わった人だと思っています。

女性がズボンを穿くことなんて考えられなかった時代において男装をしている人。とても前衛的な考え方をする人で、それを表現するためにも自分の着たいものを着ようと考える、そしてそれを貫く強い精神を併せ持っているんです。

そんな部分を舞台でも表現できたらいいなと思っています。

明日海:ミッシーは、コレットが初めて会ったときにすごく大人に見えたんじゃないかなと思っています。年齢という意味ではなく、精神的に。

(ミッシーは)自分で選び取ったものを行動に移している勇気ある女性、と映ったんじゃないかな。誰かと接するときはいつも冷静で、ちょっとミステリアスで、そんなところに惹かれていったように感じます。

——おふたりは宝塚歌劇団を退団後、今回が本格的な初共演ですよね。具体的にどんなことを楽しみにしていますか?

明日海:私は、スタッフさんやオケさんを含めてカンパニー愛が強いんです。短い期間ですがみんながひとつの志を共有して、本当に寝食をともにするくらいの時間を同じように過ごし、「もうすぐ稽古何日目だ」「初日だよ、頑張ろう!」「もうすぐ終わっちゃうよね……」と気持ちも同じく過ごすカンパニーの絆が大好き。

なので、その中にかいちゃんがいるという感覚が心強く、今とってもうれしいです。

——現役時代は組が違いましたから、そこまで時間の共有はなかったのですか?

七海:稽古場で会ったりとか、たまにご飯に行ったりとか、退団してからもちょこちょこ会いましたけど、年に2〜3回くらいかな。

明日海:そうだね、メールでのやり取りは頻繁にしています。でもこんなに長く一緒にいられるのは、次はいつになるかわからないよね。

七海:お稽古や公演を含め共有する時間が長いと思うので、一緒においしいご飯を食べに行くことがとにかく楽しみ! お互いにおいしいものを食べることが大好きだもんね。

明日海:そうそう、この間、大阪ですごくおいしいステーキ屋さんに出合ったの。絶対行きたいから、先に予約しておこう(笑)。

七海:それは行きたいね。スタミナをつけて大阪公演がんばろう。大阪はおいしいところいっぱいあるしね!

写真をもっと見る

——89期として宝塚音楽学校で出会って以降、いちばん印象深く残っているのはどんなことですか?

七海:うーん、たくさんありすぎてどれにしようか迷うのですか……。私が、役者の“明日海りお”さんとしてすごいなと思ったのが、『エリザベート』の公演です。

舞台稽古か初日を観て、そのときに客席で感じた波動みたいなオーラがものすごかった。トップスターとしてすべてを背負って立っている輝きに、なんて素敵なんだろうと心が震えました。あれは(トップの大劇場)お披露目公演だっけ?

明日海:うん、トートをやった『エリザベート』はお披露目だね。

七海:あの輝きはすごく印象に残っています。シンプルに、みりお(明日海さん)がトップになったことがうれしかったというのもあるのですが、光を放っているのがとにかくカッコよかった。

明日海:かいちゃんは音楽学校の頃から本当に変わらない人。音楽学校時代は、かいちゃんに納豆をもらったり干し芋をもらったり、それを一緒に食べたりしたよね。

人と接するときの優しい感じとか、みんなの意見が違ったときも揉めたりしないで居心地よくいられる雰囲気にしてくれる感じは、ずーっと変わらないよね。今まで、長く一緒にいた時間がなかったからケンカしなかっただけかもしれないけど(笑)。

七海:ははは、お稽古始まってみたら大ゲンカしちゃうかもしれないよね?

明日海:「今まで(イヤなところが)見えていなかったなー!」ってなるかもしれないしね。

七海:あるかもしれないね?(笑) あ、ひとつ思い出した。タカラヅカを退団する少し前くらいに、「同期も少なくなってきたから、会ったらハグをして頑張ろうって励まし合おうね」というのをやり合っていたな、って。

明日海:やってたね、思い出したー!

七海:あのときは、だんだん同期が少なくなってきて寂しくて。みりおにも他の同期にも、会えるとすごくうれしい気持ちがあったなーと思い出したよ。楽しかったな。

明日海:そうだね、懐かしいね。

—–

宝塚歌劇団89期生は多くのスターを輩出し、退団後もなお大きく飛躍しているかたが多い期として知られています。今まで深い共演作品を観たことがなかったおふたりが、いよいよ同じ舞台に、しかも絡みも多いなんて!

そうしたバックボーンを知って観ると、また違った楽しみ方ができるかもしれません。

次回はおふたりのマイブームなど、オフのあれこれについてうかがいます。お楽しみに!

<明日海さん>
ドレス¥135,300 (アオイ<MSGM>) ※参考価格 03・3239・0341
パンプス¥149,600(セルジオ ロッシ ジャパン カスタマーサービス<セルジオロッシ>)   0570・016600イヤカフ¥20,900・リング¥22,000(ドレスアンレーヴ<1DKジュエリーワークス>)  03・5468・2118

撮影/黒石あみ スタイリスト/大沼こずえ(eleven./明日海さん)、藤長祥平(七海さん) ヘア&メイク/山下景子(明日海さん)、ハラタタケヒコ(ARTSY LIFE/七海さん) 構成・文/淡路裕子

ミュージカル『コレット』

コレット

【Story】
19世紀末、ベル・エポックのパリ。田舎町で育ったコレットは、14歳年上の人気作家ウィリーと結婚し、華やかな社交界に足を踏み入れる。彼女の才能に気づいたウィリーはゴーストライターとして小説を書かせ、「クロディーヌ」シリーズは大ヒット。しかし、著者名は夫のもの。創作の歓びと葛藤に苦しみながらも、コレットは自らの道を切り開いていく——。

【Cast&Staff】
<出演>
明日海りお
今井朋彦 大東立樹(CLASS SEVEN) 七海ひろき
吉野圭吾 花乃まりあ
前田美波里
大月さゆ 可知 寛子 中西勝之
辰巳智秋 小林遼介 コイタ奈央美 りんたろう 伊宮理恵 ユーリック武蔵 蛭薙ありさ
奥田奏太(Wキャスト) 中井理人(Wキャスト)
<脚本・作詞・演出>
G2
<音楽>
荻野清子

【公演日程】
<東京公演>
2025年8月6日(水)〜8月17日(日)
会場:日本青年館ホール
\アフタートーク実施!/
8月6日(水)18:00回登壇:明日海りお、七海ひろき、花乃まりあ、前田美波里
8月13日(水)18:00回登壇:明日海りお、今井朋彦、大東立樹、吉野圭吾

<大阪公演>
2025年8月21日〜8月24日(日)
会場:梅田芸術劇場メインホール

▶︎公式サイト

明日海りお

2003年、宝塚歌劇団に入団し、14年に花組トップスターに就任。『エリザベート-愛と死の輪舞-』『ポーの一族』など数々の話題作で主演を務める。5年半のトップ在任期間を経て、19年11月に惜しまれながら退団。退団後は、NHK連続テレビ小説『おちょやん』、ミュージカル『マドモアゼル モーツァルト』『ガイズ&ドールズ』などに出演。近年の出演作は、ミュージカル『王様と私』『9 to 5』『昭和元禄落語心中』、ドラマ『下剋上球児』『推しを召し上がれ~広報ガールのまろやかな日々~』『グレイトギフト』など。10月からはミュージカル『エリザベート』の公演を控えている。
▶︎公式サイト
▶︎X:@asumirio_staff


七海ひろき

1月16日生まれ、茨城県水戸市出身。宝塚歌劇団を退団後、俳優、声優、歌手として多方面で活動。主な出演作として、ドラマ「合コンに行ったら女がいなかった話」蘇芳役、「舞台『刀剣乱舞』禺伝 矛盾源氏物語」歌仙兼定役、舞台「サイボーグ009」009/島村ジョー役、ミュージカル「七色いんこ」七色いんこ役など。また、声優としては、TVアニメ「マッシュル-MASHLE-」アビス・レイザー役など、幅広い役柄の声を担当している。
▶︎Instagram:@hirokinanami773
▶︎X:@hirokinanami773