ハーフの連れ子を受け入れてくれた同級生夫に出会うまで
(取材データ)美和子さん、45歳。カリフォルニア滞在中にアメリカ人と結婚し、二児の母に。しかし東日本大震災後、家庭的だが頼りない夫に愛想を尽かし、そんなときに再会した同級生の男性と交際を決めて離婚→即再婚。子宝にも恵まれ、現在は三児を育てる専業主婦。
バツイチはみんなドラマの持ち主!
なんだかとっても不思議なのです。何がって、この連載、毎回すごいドラマの持ち主ばかりをご紹介しているように見えますが、実は私の方で、特に事前にそんなすごいストーリーをお持ちだということは知らずにただ「バツイチ」だという情報だけで、取材をお願いしているのですね。
で、皆さん取材前に必ず、「私の話なんかで参考になるか…。大した経験はしてないんですよ」とおっしゃる。が、話を伺っているうちに、「ええ〜〜〜〜〜〜〜」と、びっくりするようなエピソードが次から次へと飛び出してくる。
人の家庭の話って、普段そんな細かく聞くこともなければ、話す機会もそんなにないじゃないですか。だから私は毎回インタビューするたびに、「どんなに平凡に見える夫婦にも、すごい歴史があるんだなあ」としみじみと噛み締めています。
さて。前置きが長くなりましたが、今回の美和子さんもそんな感じで、離婚の背景を知らずにお会いしたところ、
・9.11のとき不思議な流れで最愛の人を亡くし、
・そばにいて慰めてくれたアメリカ人夫と結婚、
・二児を出産。日に日に優しいだけの頼りない甲斐性ナシの夫に愛情が薄れ、
・そんなときに再会した高校時代の同級生が昔自分を想ってくれていたことが発覚し「再婚を前提に付き合ってくれ」と言われ、
・完全にハーフ顔の元夫の子供たちを連れて再婚しステップファミリーに
と、波乱万丈なエピソードの持ち主。
最愛の人を失くし、流されるまま国際結婚
美和子さんは、とても落ち着いた大人の女性、という印象の方。話し方もゆっくりで穏やか。だけどよくよく聞くと同級生の今の夫とは「ケンカして洗濯カゴを投げつけたこともある」と意外と激しい内面も持ち合わせている様子。
美和子さん(以下、み):大学卒業後、カリフォルニアでバイヤーの仕事をしていたんです。当時付き合っていた彼がいたんだけど、不思議な亡くなり方をして。そのとき、以前から友人だったアメリカ人男性がずっとそばにいてくれて、それが最初の夫です。
さかい(以下、さ):不思議な亡くなり方…?
み:はい。亡くなる数ヶ月前から、突然聖書を読み始めてキリスト教に傾倒し、「僕が死んだら●●して」などと指示を出すようになったんです。それで原因不明の病になって病院に入院してたんですけど、9.11の、ワールドトレードセンターにテロの飛行機が突っ込んだとほぼ同時刻に心肺停止で息を引き取ったんですよね。
さ:テロを予知していたってことですか?? そんなことって…あるんですね。
大好きだった恋人を失くし、日本に帰ろうかなと想っていた美和子さん。そんなとき、以前から知り合いだったアメリカ人のAさんとずるずると付き合うことになり、29歳のとき、そのまま何となく結婚。
み:彼は一度も恋い焦がれたりしたことのない相手。気楽だけど、思い入れもない。向こうもあっさりしたもので、「愛してる」とか言われたこともないし、ただの「ルームメイト婚」みたいな感じでした。
6個上のAさんは仕事ができるタイプではなく、その代わりに家事も育児も、言ったことは何でもやってくれる男性。
み:だけど主体性がなくて働かない(笑)。それでも、私はバイヤーの傍ら、会社員としても働いていて、子育てを一緒にする相手としては非常に都合が良かったんです。
甲斐性ナシの夫に冷めて行く心…
結婚生活に何か特に大きな問題がなかったわけじゃない。でもあるとき、美和子さんが第二子妊娠中に大きめの卵巣嚢腫が発見され、妊娠10週目にして卵巣摘出手術を受けることに。
み:大変な手術で死にかけて、そのときの記憶がほとんどないんです。幸い、二番目の子は無事に生まれてきたけれど、手術のときも全く夫が頼りにならなくて…。私はお腹が大きいときも、週末や夜も働いて心身ともにズタボロだった。それで出産後、ちょっと落ち着いて考える時間ができたら、「子どもたちが大きくなってきたらちゃんと教育もしたいけど、うちの夫は単なるベビーシッターくらいにしか役に立たない。こんな夫で大丈夫かしら?」と思い始めて、彼の存在を重荷に感じ始めちゃったんですよね。
性格も悪くないし、うるさいこだわりもないし、離婚する決定打はない。だけど元々すごく愛情を感じていたわけでもないから、尊敬できない相手だと、どんどん気持ちが冷めて行く…。その感じは、たぶん夫婦ではない男女関係においても一緒。容易に想像がつきますよね。
美和子さんも、自分にとっては居心地の悪くないその関係を、疑問を抱きながらも何となく続けていたそう。
み:アメリカって出産休暇が結構短くて。私もそのとき8週間しか休めなかったんですけど、いざ会社復帰、ってなったら、「もう少し子どもと一緒に居たいな」と思って、会社を辞めてしまったんです。
そんな中、カリフォルニアで不動産の高騰が始まり、親戚が居てもっと家賃の安いジョージア州に引っ越すことに。
み:引っ越す前に一度日本に帰国してゆっくりしようと思い、私は子どもたちを連れて日本へ。でも私が日本にいる間にリーマンショックが起きて、夫がジョージア州で就職する予定だった仕事がなくなってしまって。さらには引っ越しのため、カリフォルニアのストレージに預けていた大事な個人情報ファイルが盗まれて、インターネットでのなりすまし詐欺などでIDナンバーが悪用されたり、すっごく大変な事態になっちゃったんです…(涙)。
緊急事態に、子どもたちを日本に置いてアメリカに帰り、必要な手続きを全て美和子さんひとりでこなすと、夫へのストレスが爆発!
―想像つきすぎてなんだか胸が痛くなってきました…(苦笑)。このあと両親の住む福島に移り、そこで東日本大震災を迎えることになる美和子さんファミリーの話は次回に続きます。
インタビュー・文
さかい もゆる
出版社勤務を経て、フリーランスライターに転身。——と思ったらアラフォーでバツイチになり、意図せず、ある意味全方位フリーダムなステイタスになる。女性誌を中心に、海外セレブ情報からファッションまで幅広いジャンルを手掛ける。著書に「やせたければお尻を鍛えなさい」(講談社刊)。講談社mi-mollet「セレブ胸キュン通信」で連載中。withオンラインの恋愛コラム「教えて!バツイチ先生」ではアラサーの婚活女子たちからの共感を得ている。