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2019.07.02

並んでも食べられない!? 異色のかき氷屋さんの人気メニューとは?【そうだ、慈げんに行こう!】

行列のできるかき氷店はいくつかあれど、「リピーター率80%」という特殊な店が熊谷にあります。それが、かき氷専門店「慈げん」。今回は、その理由を探りに行ってきました!

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南 ゆかり(フリーエディター・ライター)
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すいか、焼きパイン、パルミジャーノ…。ハマるにはわけがある

前回紹介したん人気のかき氷店「慈げん」ですが、この店の前には行列がありません。食べたい人は、整理券配布の時間に合わせて店頭に行き、デポジット(ひとり500円)を払い、希望する時間の整理券をもらって入店する仕組みだから(整理券配布時間や混雑状況は、ツイッター「慈げんの業務連絡」@JigenKumagayaで確認を)。特にこれからの季節は、早朝に整理券の配布が終わってしまうこともあるので、気合いが必要です。

初回こそ、このシステムにどきどきしますが、一度「慈げん」ののれんをくぐったら、多くの人がまた訪れる。その結果、リピーター比率が80%という、かなり特殊な店になりました。

でもその特殊なところこそ、「氷の聖地」と呼ばれるゆえんです。

お目当てに出会えるかは、行ってみなけりゃわからない

「多いときは、関西から2か月に一度は通っていました」(かき氷好き・なかともさん)
「朝から意気込んで、片道3時間かけて着いて、食べ終わったらまた3時時間かけて帰る。次はいつ来ようかなって」(かき氷好き・エディさん)
「好きなメニューが出ているときは週に1回、それ以外でも月1回は都内から通ってます」(かき氷好き・030さん)

ファンたちがこう証言するとおり、ハマった人は距離や時間は関係なく、慈げんに通い続けるのです。しかも、かき氷だからといって夏だけではなく、そのにぎわいは1年中。いったい、なぜ…?

前出のかき氷好き030さんは、その秘密を「次々に新しいものを出してくる」でも「手を抜くことも怠けることも絶対にない」からと明かします。

メニューは常時40通りほどですが、定番として常にあるのはそのうち5~7。そのほかのラインナップは毎日変わり、激しいときは午前と午後とで変わることも。季節の旬な食材であっても、昨日あったものが今日もあるとは、限らないのです。

たとえば、夏に大人気の<ザすいか>は、かき氷に適した甘さの強いすいかが手に入ったときだけ登場。

シロップは、すいかと和三盆と少しのレモンで手作りしたもの。着色も香料も一切なしで、氷に合わせても薄く感じないシロップをつくるのは、どれだけ大変なことか。どれだけ多くの果肉を使うことか。市販にも他店にも、こうした商品が出ていないことが、何よりの証拠です。

そして、かき氷には珍しい<バナナミルク>は、仕入れておいたバナナがいい感じに熟したタイミングと、人手に余裕があるときだけ、メニューに出る。バナナは変色しやすいから、事前にシロップを作り置きすることができないのだそう。オーダーが入るごとにバナナとミルクを混ぜてシロップをつくり、氷にトロリとかける。どこを食べてもバナナ。どこを食べても濃い。八ヶ岳みたいな佇まいも、かっこいい。マイナスポイントがひとつもないって、さりげないけど、スゴいことです。

毎日行っても、毎週行っても、新しいものに出会えて、そしてどれもがおいしくて、その日に食べられなかったほかのメニューに後ろ髪を引かれながら帰る…。また来ないわけにはいかなくなる、というわけです。

リピーターたちが愛するかき氷は…、焼きパイン?!

こんなふうに「行ってみなけりゃわからない」「一期一会」のかき氷に魅せられた、「慈げん」のリピーターたち。アンケートで「好きなかき氷」を聞いてみたところ、上位メニューは以下のような結果になりました。

●常連100人アンケート「好きなかき氷」
キャラメルミルクに焼きパイン
プレミアムミルクに生いちご
ザすいか
キャラメルミルクナッツ パルミジャーノレッジャーノ
ザ生いちご
(書籍『真夏も雪の日もかき氷おかわり!』より)

こちらが、リピーター人気1位の<キャラメルミルクに焼きパイン>。パイナップルをフライパンで焼いて水分を飛ばし、氷の上にのせたもの。全体にかかっているキャラメルソースはなかなか濃厚ですが、それに負けないコクが焼いたパイナップルにはあります。でも、飽きずに最後まで食べられて、不思議にあと味さっぱり。魔法にかけられたとは、まさにこのこと…。

この<キャラメルミルクに焼きパイン>が、行ったときにメニューに出ているかどうかは運しだい、ということで。ご了承ください。

スイーツというより、立派な料理。これもかき氷です

<キャラメルミルクナッツ パルミジャーノレッジャーノ>は、定番メニューとして(ほぼ)毎日出ているので、ご安心を。平皿の上の氷にキャラメルソースをかけ、ローストアーモンド・カシューナッツ・くるみをのせ、ブロックのパルミジャーノをおろしてかける。さらに好みで塩・こしょうを振っていただくという、スイーツというより、ほぼ料理な一品。「おいしい!」以外の言葉が見つからないのが歯がゆいのですが、もうひと言つけ加えるなら、「すごい手間!」ということでしょうか。

と、ここまで読んだ方は、「店主はどんな頑固オヤジだろう」「一見さんは行きにくいなー」と思ったかもしれません。その心配はありません。店主は「一見頑固オヤジ」ですが、その実はみんなに愛される、気遣いの人。それがかき氷ひと品ずつに現れています。

そして、ご安心ください。初めての人でも、ちゃんと歓迎してくれます(ルールさえ守れば)。そして、2回、3回と通ううち、店主の気遣いあるひと品ずつが「慈げん」の最大の魅力であり、リピ―ターがひきつけられるツボであることが、わかってくるのです。

※営業時間や整理券情報はツイッター「慈げんの業務連絡」@JigenKumagayaで必ずご確認ください。電話での問い合わせは受け付けていません。

『真夏も雪の日もかき氷おかわり! 「慈げん」が人を熱狂させる5つのたくらみ』(小学館)1,500円(税抜き)

著/宇田川和孝
取材・文/南 ゆかり
かき氷に24時間をささげる店主と、そこに集まる熱狂的ファン120人の声からできた本、6月28日発売! 見たことも聞いたこともないメニューの数々、それを生み出す店主の発想、かき氷をめぐる家族やファンのドラマ…。かき氷好きはもちろん、そうじゃない人も、必読! 上で紹介した<バナナミルク>のレシピも公開してます。

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