同僚と不倫中の夫の名義の貯金を私の口座に移したのは罪になる?
現在2歳児を育児中のワーママです。夫が同僚と不倫中だということが発覚したので、自衛策として夫名義の貯金500万円を、全て私の口座に移しました。私がしたことが罪に問われることはありますか?(富山・36歳・2歳児のママ)
A.「このケースの場合、その口座の名義が誰のものかというよりは、夫名義の口座の預貯金が夫婦の共有財産かどうか、ということが焦点になります。
500万円が、夫が結婚前から貯めていたお金や相続によって取得したものなどの場合、これは個人で所有する『特有財産』と見なされます。仮に特有財産だと判断されると、ご相談者様の行為は形式的には横領に該当してしまうことになりますね。
逆に口座が夫名義であっても、結婚してから夫婦で共有している口座だということが通帳の履歴などから証明できれば、これは夫婦の『共有財産』と見る余地があります。
この場合はもし咎められたとしても、『離婚の危険などにより夫が一方的に引き出して費消する恐れがあるため、念のために保存行為として自分の口座に移して一時保管した』との言い分が成り立つ余地があるでしょう。
他方で、特有財産であっても、夫婦間の窃盗や横領に関し、刑法上では『親族相盗例』といって、基本的には刑罰が免除されます。これは家庭内の金銭問題は、基本的には家庭内で治めなさいという趣旨。
ですから、もしご相談者様の夫が窃盗や横領で刑事事件の犯人として奥様を告訴しようとしても、現実に刑事事件として立件される可能性はほとんどないと言えます。なお、この親族相盗例は内縁の夫婦には適用されませんので、ご注意を」(中川裕一郎先生)
●本連載では離婚に関する慰謝料や養育費など、法律的な悩みや疑問にプロの弁護士が直接回答します!ご相談ごとがあるかたは、domani2@shogakukan.co.jp またはこちらのフォームよりお寄せください。 メールの場合は件名に「離婚相談」と書いてなるべく具体的な内容をお送りください。すべてのご相談にお答えできるとは限りません。あらかじめご了承ください。
お悩みに回答してくれたのは・・・
中川裕一郎先生
弁護士。東京中川法律事務所経営。https://tokyo-nakagawa.com
商社勤務時代にバックパッカーとして世界に飛び出し、地球を一周回ってみつけた社会的正義を実現するという生涯の目標のため弁護士に。紛争を未然に防止し、目の前の依頼者を笑顔にすべく日々奮闘中。親身になってアドバイスをくれる人情派弁護士として、依頼者たちからの信頼も厚い。フルマラソン、3時間切りのランナーでもある。
インタビュー・文
さかいもゆる
出版社勤務を経て、フリーランスライターに転身。女性誌を中心に、海外セレブ情報からファッションまで幅広いジャンルを手掛ける。著書に「やせたければお尻を鍛えなさい」(講談社刊)。講談社mi-mollet「セレブ胸キュン通信」で連載中。Web Domaniの人気連載「バツイチわらしべ長者」で様々なバツイチたちの人生を紹介している。withオンラインの恋愛コラム「教えて!バツイチ先生」では、アラサーの婚活女子たちからの共感を得ている。