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2019.11.29

ストールの名門「ファリエロ・サルティ」に革新をもたらしたモニカ・サルティさんインタビュー

 

上質のストールで知られる「ファリエロ・サルティ」。創始者の孫でありデザイナーのモニカ・サルティさんが来日。ワーキングマザーとしての素顔に迫るインタビュー3回連載です。

Text:
南 ゆかり(フリーエディター)
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過去と未来をつなげる、新しいストールの誕生

―――1949年イタリアのトスカーナ州・プラートで創業されたテキスタイルメーカー「ファリエロ・サルティ」。職人の手による上質なテキスタイルは、トップメゾンから支持され、多くのコレクションに取り入れられてきました。

1992年、創業者の孫であるモニカ・サルティさんがクリエイティブ・ディレクターに就任し、新たなストールのコレクションをスタート。日本でもソフトな素材と豊富なデザインで人気を博しています。

今回は、ブランド創立70周年を記念して、モニカ・サルティさんが来日。ブランドの顔としてトップレディとして、8歳の男の子をもつ母として、話は広がって…。

70周年限定コレクション「Model ストール」は、スペイン出身の写真家Javier Vallhonrat(ハヴィエル・ヴァロンラッド)の写真をプリントしたもの。素材はウール・カシミア・シルク、130×180センチ。

変化しなかったら、いつか終わりがきてしまう

「祖父が始めた会社でデザイナーを始めたのが、21歳のとき。それまでのファリエロ・サルティは老舗テキスタイルメーカーのよさを生かして、スカーフづくりに注力してきました。でも私自身は、もっとドレッシーに、“着るもの”にスカーフを変えていきたいと考えたんです。たとえば、ポンチョにもなり、スカートとしても“着る”ことができるストールを。こうして自分の名前である“モニカ・サルティ”をつけたラインをスタートさせました。代々使ってきた“ファリエロ”はつけたくないと主張して。なんだか古臭いし、読みにくいですからね。

これまであったストールのフリンジを取り払ったのは、新たな挑戦でしたが、こんなふうに伝統あるブランドを変えることは、リスクのあること。だからといって何も変えないままだったら、きっといつか終わりがきてしまう。それを考えると、怖さと不安で眠れないこともありました。

そこで私が始めたのは、単に変えるだけでじゃなく『過去と未来をつなげる』ということ。そこには、創始者である祖父への敬意も込められています。自社工場には、過去につくってきたすべての生地見本のアーカイブがあります。毎シーズン、デザインを考えるときはそれを見てインスピレーションを得るんです。過去に発表されたチェック、残されていた古い写真、こうしたものは、新たなストールのデザインとして生まれ変わってきました」

左/「Roberta」カシミア、60×200センチ
右/「Marchisio」カシミア・ウール・シルク・ナイロン、70×190センチ

息子が「好きじゃない」なら商品化しない

「私のデザインは、ひとことでいうと『私自身の人生』であり『物語』。子どものころに好きだったキャラクターを登場させたり、息子のマテオが生まれてからは、私たちのイニシャル『M』をデザインの随所に使ったり。息子が好きなスケルトンやモンスター、好きな色ブルーもデザインに入れました。すべて、私から息子へのプレゼント。忙しくて離れることが増えてからは、いつもつながっていたいという彼への思いを表しいるんです。

小さいときから工場によく出入りしていた息子は、素材の感触にはとても敏感みたいで。8歳の今でも、工場から出た端切れを詰め込んだ枕を抱いて寝ていて、きっと柔らかくて気持ちのいいものは、感覚的にわかるんだと思います。長く使っているから、もうだいぶクタクタになってるんですけどね。

そして私が新しく素地を選ぶときは、息子の前に並べて、目を閉じて触ってもらい、「どれが好き?」と聞くんです。彼が選んだものは採用。硬めの素材は「好きじゃない」から使わない。結果、柔らかくて気持ちのいい素材が多くなりました」(続く)

撮影/黒石あみ 取材・文/南 ゆかり

Monica Sarti(モニカ・サルティ)

イタリアの老舗テキスタイルメーカー「Faliero Sarti(ファリエロ・サルティ)」のクリエイティブ・ディレクター。自身の名前をつけた新ライン「Monica Sarti」は、日本でも人気に。常に編み方や染技法を研究・開発し、新しい素材と新しいデザインで作品を生み出している。

●Faliero Sarti (オンラインショップは12月上旬オープン予定)



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