バリ島での育児は、みんなで暖かく見守って育てる昭和の日本みたいです
●PROFILE
マリさん・37歳・バリ島在住
リゾートホテルのセールスマネージャー
娘(6歳)の母
○前編:チャンスが来たら即行動! で、3歳の娘とふたりでバリ島移住
私の居場所はバリ。帰るところはここしかない!
バリ島旅行をきっかけに、現地のホテルでの再就職が決まり、娘を連れてふたりでバリに向かったのは、私が35歳、娘が3歳のときでした。
自分で決めて来たからには、泣きべそかけないし、簡単には帰れない。そして私の居場所はここバリしかない。そう思うと、頑張る気持ちと同時に、娘を犠牲にしてはいけないという強い思いがわき上がってきます。これは、以前にも増して強くなった責任感です。
職場の仲間と。
原付バイクで通勤することを考え、娘と私の住まいはなるべく保育園に近く、日本人の在住の方が多い地域を選びました。行った当時は仕事仲間が話している言語もまったくわからず、日本の英語じゃ海外のビジネスでは全く通用しないことを痛感しました。もちろん、仕事も覚えなくてはならないことが山積み。毎晩バイクで帰りながら、できない自分に涙を流していたものです。また帰るのも遅かったので、お手伝いさんを頼み、娘のピックアップから食事・お風呂もすべて任せて。さらに近くのママ友さんに娘の面倒をお願いして寝かしつけてもらい、その後に寝た娘を抱っこして連れて帰ったりすることもありました。お手伝いさんやご近所に住む方みんなで日本の絵本に英語とインドネシア語を書き込んだり、歌を謡ったりしながら、娘は自然とトリリンガルを身につけていきました。
こちらでは家族三代で住んでいる家庭も多いし、親戚やご近所みんなで子どもを見るのは当たり前。不便なことも多いですが、人と人との結びつきが強いなと感じます。私が育った頃の昭和の日本のような、どこか懐かしい雰囲気に似ているかもしれません。
さらに、バリ島はさまざまな宗教、さまざまな人種が入り混じっています。娘の遊びに行く友達の家が欧米人のおうちなら英語で会話しているし、インドネシア人のおうちならインドネシア語とそのマナーに従う。日本人と食事をするなら、ちゃんとお箸を使って、いただきますを言っている。そんな娘を見ていると、本当に順応が早く、頼もしいなと思います。小さいうちから多文化、多言語に身を置いていることは、娘の将来に有益なものになると信じています。そして、暖かく優しい環境のもと娘の性格は以前にも増して明るくなりました。
もちろん私自身も変わりました。日本にいたときは、シングルマザーということで踏み出せなかったことも多かったし、多くの常識や周囲の意見に従うことが賢い生き方なんだと思っていました。母子だけの海外移住には反対意見や厳しい言葉を受けました。けれど、いざバリに来てみれば、こちらでは小さいうちから海外体験できる娘のことは「ラッキーガール」と言っていただけたり、日本から離れて不便な状況だからこそ互いに支えあえる人もいる。
日本では「すみません」から始まる言葉でも、英語には前向きな言葉が多く使ってるだけで自然と笑顔になれる気がします。色んな生き方や幸せの種類があってもいいんだと思うようになったのです。
バリに引き寄せられる運命だったのかな
私の今の仕事は、旅行会社と日本人のお客様の旅行のプランを作成したり、ホテル館内の説明やメニューを日本語に訳したり、お客様が快適に過ごされているか常に気を配ります。日本の便利さに慣れていると、ささいなこともストレスに繋がることがよくあります。だから私は、日本人の方をお見かけすると「お困りのことはありませんか?」と、声をかける。せっかくのバリ島旅行、困ったことがあればすぐに力になりたいのです。そしてバリにいたら五感が豊かになれる。この素晴らしい環境を通じて日本とインドネシアの架け橋になるような新しいビジネスを立ち上げるのが、私の夢です。
バリでは、仕事の前に朝のお祈りの時間があったり、満月や新月、それ以外にも毎日ヒンドゥー教の儀式が多くあります。お祈りの習慣や文化には戸惑うことも多かったけれど、不思議と心が落ち着きます。今当たり前のように感じている、「健康」や「日常の生活」に感謝できる貴重な機会だと感じています。お祈りを通して自分自身と向き合う時間でもあり、終わると心が洗われます。
実はつい先日、10年前から友人だったインドネシア人の方とご縁があり、結納の儀式を執り行ったのですが、神様を前にしてお祈りの時、全身鳥肌がたつようなエネルギーを感じました。勇気を出して来てよかったな、私はここに来る運命だったんだなと不思議に納得しました。(下の写真)。2020年1月には、バリでヒンドゥ教のもと結婚式を行う予定です。
結婚式はヒンドゥー教に入るための儀式が丸3日間行われ、朝から夜まで1000人以上の招待客が入れ替わり立ち替わり、参加するそうです。日本では、お盆と自分の都合のいいときぐらいしか神頼みしなかった私には、どうすればいいのか検討もつきませんが、どんな変化球がきても、前向きに受け入れられる自分でいたいと思います。
ネガティブになっていた時期もあったけれど、前に進み始めた今は、すべてが意味のあることで、振り返れば自分の道として繋がっている。そしてしチャンスは節目として残っている。そして見えない道は自分で切り拓いていく。未来の私が幸せに笑えるように、今を「最善の自分」で精一杯生きていたい。そう思えるようになったのも、いろんなことを経験させてもらえたおかげです。(終わり)
●ワーママ転職成功の法則
1、「相手は鏡(鏡は先に笑わない)」
前向きな言葉で自分も周りもハッピーな環境をつくる。
2、「自分の人生の主人公は自分」
本当にやりたいことがあるなら、できる可能性から考えてみる。
3、「子どもとの時間は宝物」
どこで暮らしても、子どもを守れるのは自分だけ。
将来に、この満ち足りた日々を懐かしく思う日々がくる。
南 ゆかり
フリーエディター・ライター。半年にわたって取材・執筆した書籍『真夏も雪の日もかき氷おかわり!』発売中! ほかに書籍『今の私は』(後藤真希・著)、Oggi誌面インタビュー連載「この人に今、これが聞きたい!」「お金に困らない女になる!」などなど。