――カバーアルバム『ROMANCE』には、いろんな女性が出てきますが、宮本さんが恋人として付き合いたい女性はどの曲の主人公ですか?
宮本:さまざまなものに気付かせてくれたのは『ジョニィへの伝言』の踊り子です。
私が先日、散歩をしていたときに、ある幼稚園の外壁に子供の絵が飾られていることに気が付いたんです。運動会で走っている絵、パパとママと笑っている絵、家族と犬が描かれている絵、私はこの絵に描かれている幸せのはかなさというか…もちろん、親から見たらかけがえのない我が子の成長過程なんですけれど、一個人である大人の私から見ると、ここで描かれているはかなさに、ものすごい感動してしまったんですね。
ふとそのとき、幼稚園の外壁に飾られている絵に、『ジョニィへの伝言』の踊り子が重なったんです。
愛に敗れ「気がつけばさびしげな町ね」と言い、ひとりで去っていく踊り子も、幼稚園児の絵も、人間が抱える孤独を肯定しているんですよ。それだけじゃなく、学生、主婦、会社員、男性、女性……もちろん私も、生きている人はみんな踊り子なんじゃないかと。
『あなた』の乙女、『喝采』の歌手、『木綿のハンカチーフ』の恋人を思う女の子、どの曲に出てくる女性もステキで、ピュアで、理想の女性なんです。でもただそれだけではなく、孤独で、タフで、恋がしたくて……生命力っていうのかな?強いんです。
このアルバムでは、新たな宮本さんに出会えるだけでなく、名曲の新たな魅力に気が付くはず。そこを流れるのは、女性のダンディズム。カッコよく美しく、純粋で優しい……宮本さんによって、新たな命を吹き込まれた彼女たちに魅了されるはず。
エレファントカシマシ
宮本浩次
ロックバンド・エレファントカシマシのボーカル&ギター。1966年生まれ、1986年エレファントカシマシ結成。1988年『THE ELEPHANT KASHIMASHI』でデビュー。以降、22枚のアルバム、1枚のミニアルバム、50枚のシングルをリリース。2017年紅白出場。2018年ソロシンガーとして椎名林檎、東京スカパラダイスオーケストラの作品に参加。2019年ソロ活動開始。2020年ファーストソロ・アルバム『宮本、独歩。』発売。
宮本浩次が30年超のキャリアの中で初めてリリースするカバーアルバム。プロデューサーには、小林武史氏を迎えている。カバーアルバムに収録される楽曲は、全12曲。
初回限定盤(CD+CD):UMCK-7089/90 3,500円+税
通常盤(CD):UMCK-1676 3,000円+税
【収録楽曲】
あなた (作詞:小坂明子 作曲:小坂明子)
異邦人 (作詞:久保田早紀 作曲:久保田早紀)
二人でお酒を (作詞:山上路夫 作曲:平尾昌晃)
化粧 (作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき)
ロマンス (作詞:阿久悠・作曲:筒美京平)
赤いスイートピー (作詞:松本隆 作曲:呉田軽穂)
木綿のハンカチーフ-ROMANCE mix- (作詞:松本隆 作曲:筒美京平)
喝采 (作詞:吉田旺 作曲:中村泰士)
ジョニィへの伝言 (作詞:阿久悠 作曲:都倉俊一)
白いパラソル (作詞:松本隆 作曲:財津和夫)
恋人がサンタクロース (作詞:松任谷由実 作曲:松任谷由実)
First Love (作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル)
【初回限定盤ボーナスCD】「宮本浩次弾き語りデモ at 作業場」
September (作詞:松本隆 作曲:林哲司)
思秋期(作詞:阿久悠 作曲:三木たかし)
私は泣いています(作詞:りりィ 作曲:りりィ)
あばよ(作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき)
二人でお酒を(作詞:山上路夫 作曲:平尾昌晃)
翼をください(作詞:山上路夫 作曲:村井邦彦)
撮影/黒石あみ(小学館) 構成/前川亜紀