大人になって、楽しむのが得意になりました
――監督も、共演された竹中直人さんも65歳。素敵な年の重ね方をしている方が身近にいらっしゃいますが、田中さんも年齢を重ねるにつれて、より楽しくなってきたと思うことはありますか?
田中:僕は楽しむのが得意になりました。これまでいろんな経験を重ねてきて、良い時も悪い時も、どちらも経験してきて。そこでどん底に落ちたとしても、結局僕はここからいなくなることを選ばずに、今もここにいるんですよ。やっぱり仲間が居たり、仕事をしたり、なんだかんだいって生きているわけで。そうすると、大概のことって、どうにかなるんだなと思うし、どうにかしなくちゃいけないなと思うんです。
――肝が据わるって、そういうことですよね。
田中:そう思います。ある程度、ここまで生きてきたという結果があるからこそ、たいていのことでは動揺もしないです。それに、人を許せるし、なにかハプニングが起きてもそれを楽しめるんです。
――落ち込むことも少なくなりましたか?
田中:そうですね。以前なら落ち込んだことも、“俺の人生でまだこんなことが起きるの⁉”って思います(笑)。若い時はそう思えていなくても、大人になってからの方が、自分も周りも、幸せで溢れている気がします。今は、年を取って、仲間が増えて1人で戦っているというよりは、危機に面してもみんなで一緒に戦うという感覚があります。だからこそ、その経験値を味方に、楽しむようにしています。
――若い時は慌てていましたか?
田中:慌ててばかりでした。究極な話、“これをしたらもう終わりだ”と思っていたことも(笑)。でもそれは、本当の不幸を知らないからなんです。それに、自分が一番頑張っていると思うからこそ、なんで報われないんだって思うんです。
――わかります。
田中:どうしても“何で俺だけ”って思いがちですよね。でも、そんなことないんです。いろんな人を見ていろんな経験をしていると、自分なりに“俺、今回頑張っているな”、“もっと頑張れたな”って、ちゃんと客観的に評価ができるようになる。だからこそ、若い時よりも、今の方が答えを見つけやすいし、自分がどうしたらいいかわかるんですよね。
――そうですね。どうしても老いは気になりますが…。
田中:そこなんですよね~(笑)。人生の半分もいってはいないですが、若い感覚で走るとすぐバテちゃったり(笑)。でも、それ以外では、若い頃の自分に負けることってなにひとつとしてないと思うんです。