退団後の進路を決めたとき。「演じることも歌うことももっと勉強したい、ここで途切れさせたくない」
宝塚歌劇団に入団、その前の宝塚音楽学校に入学したときから芸事に邁進する日々。その毎日がなくなっても人生は長く続いていきます。まさに、タカラヅカが好きで、タカラヅカで頑張ることしか考えずに生きてきたという華ちゃんも「タカラヅカというものが自分からなくなったとき、どうしたらいいんだろうと悩みました」。続けてほしいと言ってくださるファンの方、でも今まで好き勝手やってきたことを許してくれた家族のことを考えたら家に戻ったほうがいいのかもしれない…。
「退団公演の大千秋楽の2021年7月4日が終わった後に、お芝居や歌、そして舞台に立つことを辞めたくないと思ったんです。お芝居の勉強も歌の勉強もまだまだ続けたい、いろんな役にももっと出合いたいという気持ちが自分の中にありました」。
悩み抜いた末に決めた、新たな道。そして、退団後ほどなくして『マドモアゼル モーツァルト』への出演依頼が。
「ありがたいことですよね。そこで改めて、自分は演じることが本当に好きだなと思ったんです。(宝塚)劇団以外の外部のお仕事は初めてで何が待っているかわからないし、たくさんの舞台で活躍されている出演者や演出家の先生にも初めてお会いするわけで。でも、行ってみたら、みなさん舞台に真っ直ぐに向き合っていらっしゃって、とにかくいい作品を作りたい、いいものをお客さまにお届けしたいという思いに溢れていました。みなさんからたくさんのことを学ばせていただいたことは、自分の意識を大きく変えるきっかけのひとつになった気がします。当たり前ですが、私の知らない世界がまだまだ広がっている。その世界に触れたいし自分も身を置きたい。それにはもっと実力をつけなければいけないんですけど(笑)」。
『マドモアゼル モーツァルト』では、タカラヅカ在団中の相手役だった元花組トップスター・明日海りおさんとの再びの共演も話題に。が、“宝塚歌劇団の元トップコンビの共演”という枠を超え、お互いがひとりの役者として尊重し合いながら作っていることが伝わってくる舞台でした。
「おこがましいですが、私にもその感覚がありました。タカラヅカはトップさんを中心とした独特の美学があります。演出の小林 香さんに『ここでは今まで築いてきた関係性ではない姿を見せてください』とおっしゃっていただいて。(明日海さん演じる)モーツァルトと(華さん演じる)コンスタンツェが同じ立場にいないと作品が成り立たなくなってしまう。私が引いてしまったり遠慮してしまったりするといけないとわかってはいるのですが…、壁にぶち当たりました。でも明日海さんがどんなことでも受け入れてくださる態勢でいらしてくれたのがありがたかったです。今までは教えていただくばかりだったのですが、自分がどうしたいのかを発信することの大切さを学んだように思います」。
圧倒的に男役が中心なのがタカラヅカの舞台。男役が本当の男性以上に素敵に見えるよう、寄り添いつつ魅力を底上げするのが娘役としてあるべき姿と言われます。
(「男役10年」と言われるように、女性が憧れるような男性像を女性が表現することの大変さ…という視点だと男役にスポットが当たるのは納得します。筆者の私的な考えです)
なので、元男役と元娘役がそのフィルターを外してお互いにひとりの役者として向き合うということが、タカラヅカを退団したばかりの華ちゃんにとってはとても大きなことだったのだろうと感じました。
「(『マドモアゼル モーツァルト』を)作っていく過程でさまざまなことが自分の中で変わっていって、明日海さんと同じ位置に立って玉を投げているような感覚がありました。それによって生まれたものはたくさんあると思いますし、今までとは違う心の動き方でした。デュエットするときも、男役さんに寄り添うというよりふたりで一緒に歌っているという感覚。今まで以上に心が震えると実感しました」。
明日海さんはどう感じたのか、私が推し量ることは難しいですけれど…と華ちゃんは続けます。
「明日海さんの大きさや素晴らしさを改めて感じ、さらに尊敬の念を深めました。このタイミングで一緒に舞台に立たせていただけて…、本当にありがたい時間だったなと思っています」。
演じることや歌うことを追求したいという思いをより一層強いものにしてくれた、明日海さんをはじめとする共演者や演出家との初仕事。さらに、これからは舞台だけでなく映像の世界にも挑戦していきたいと考えているそうです。
インタビューvol.2では、今後挑戦したいことだけでなく恋愛についてや結婚観まで、赤裸々に語っていただきます。
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俳優
華 優希
はな・ゆうき/1993年11月13日生まれ、京都府出身。愛称は「華ちゃん」。2012年宝塚音楽学校入学、2014年宝塚歌劇団に100 期生として入団し月組公演『宝塚をどり/明日への指針-センチュリー号の航海日誌-/TAKARAZUKA 花詩集 100!!』で初舞台を踏む。組まわりを経て娘役として花組に配属。2015年には第2回台湾公演『ベルサイユのばら−フェルゼンとマリー・アントワネット編−/宝塚幻想曲(タカラヅカ ファンタジア)』の選抜メンバーに選ばれ、最下級生として参加。2017年明日海りお・仙名彩世トップコンビの大劇場お披露目となる『邪馬台国の風』で新人公演初ヒロイン。続く『はいからさんが通る』で東上公演初ヒロイン。元気溌溂なキャラクター・花村紅緒を演じ、当たり役となる。明日海りおの4人目の相手役として2019年『A Fairy Tale-青い薔薇の精-/シャルム!』で大劇場トップコンビお披露目。同公演をもって明日海が退団し、柚香光を2人目の相手役に迎える。2020年『はいからさんが通る』で柚香とのトップコンビ大劇場お披露目。2021年7月の『アウグストゥス-尊厳ある者-/ Cool Beast!! 』東京公演千秋楽をもって宝塚歌劇団を退団。10月には『マドモアゼル モーツァルト』で明日海りおと再共演。2022年 01月より株式会社ジャパン・ミュージックエンターテインメント所属。
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撮影/大靏 円(昭和基地) スタイリスト/峰岸彩織 ヘア&メイク/鈴木海希子 構成・文/淡路裕子