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LIFESTYLEいつだって自分に"意識高い系"

2018.06.14

後輩たちは上げ膳据え膳。働き方改革で損するばかりの若手管理職の処世術【たむらようこの風通しのいい仕事道】

放送作家のたむらようこさんが働く女性目線で語る、仕事・環境をとりまくアレコレ。今回は「やわらかな世代交代」について綴ります。

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職場の後輩は、姫か王子か? 上手な担ぎ手に学んだ働き方改革

「なんで管理職の私がコピーなんか取ってんだよって話! ムキーっ」 ある晩、東京・恵比寿で、私は酔っ払いに絡まれていました。相手は飲み会で初めて出会ったテレビ局の女性社員。聞けば「働き方改革」推進のため後輩たちは残業なし。しかし、やるべき仕事の量は変わらず、結局、管理職である彼女ばかりが残業して雑務をこなしているというのです。 「やってられないっしょ。若いころは、さんざん働かされて、先輩になったらラクできると思ってたらこれ?」 クダを巻かれ、レモンサワーをこぼされ、正直やっかいではありました。

が、気持ちは理解できます。先輩の背中を読み、マネて、仕事をつかみ取ってきた世代から見ると、今の後輩姫や後輩王子たちは〝上げ膳据え膳〞。仕事を教えるのも、モチベーションを上げるのも、飲み会で気使うのも、なぜか先輩の役目です。損な役割を背負ったまま、この先、後輩とどう付き合っていけばいいのでしょうか?


主役を奪われるのではなく譲る、というやわらかな世代交代

さてその翌日。軽い二日酔いを引きずりながら、私が降り立ったのは萩・石見空港でした。テレビ番組のネタを探すための島根旅。そこで私は「後輩姫・後輩王子たちとの関係」についていろいろと考えさせられることになったのです。 城下町・津和野は、石畳が続く古い町並みです。江戸時代から暖簾を掲げる薬の老舗に並んでいたのは、代々受け継がれているという胃腸薬。造り酒屋さんを覗くと、店の奥で酒が絞られているではありませんか。正真正銘の出来立て! おいしいに決まってます! どこの観光地にもあるスタバがこの街にはありません。
代わりに地元のお菓子「源氏巻」のお店などで試食するたび、豆茶をふるまってもらえました。

通りでいちばん古い建物「分銅屋」さんでは、ご夫妻が時間をかけて街の文化や歴史を教えてくれました。そうこうするうち夕方の5時。驚きの光景を目にすることになります。通りの店が、ほぼ残らず閉まったのです。観光地なのに5時に閉店!? 店舗兼自宅からはほどなく、夕飯の香りさえ漂ってきました。管理職だけ残業、なんて悲劇も働き方改革も、この街には縁がなさそうです。

夕食に立ち寄ったイタリアンレストラン。30代のオーナーシェフに話を伺うと、彼が伝統芸能「鷺舞」の舞い手であることが判明しました。彼は教えてくれました。鷺舞は体力勝負であること。だから先輩たちは肉体的に厳しくなるとサッと退き、指導や演奏にまわること。そんな先輩たちをとても頼りにしていること。私はハッとしました。実は、同じ話を別の伝統芸能「石見神楽」の関係者からも聞いていたのです。なんと階段の降り方が上手な人たちでしょう。思えば、知力、体力、精神力、すべてがピークの時期など、誰でもそう長くはありません。ピークのときは担がれ、ピークを過ぎたら担ぎ手にまわる。主役を奪われるのではなく譲る、というやわらかな世代交代がそこにありました。

もちろん私たちの仕事と、伝統芸能は同じではありません。地域によって流れる時間の速さも違えば、仕事への考え方も、人生のピークも少しずつ違って当然。だから一概には言えないのですが、津和野の街でふと思いました。いつか自分に無理がきかなくなったら、こんなふうに後輩を上手に担ぎたい。それが自分自身、年を重ねても頼られ、幸せに仕事を続けられる方法ではないかと。 食事を終えて店を出たらそこは静かに休む街。夜が暗いって素敵なことかもしれません。

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放送作家

たむらようこ

1970年生まれ。放送作家。「慎吾ママ」のキャラクターを世に送り出すほか、『サザエさん』『祝女』『サラメシ』『世界の日本人妻は見た!』など多数の構成や脚本を手がける。2001年に子連れで働ける女性ばかりの制作会社ベイビー・プラネットを設立し社長としても活躍。

Domani2018年5月号 新Domaniジャーナル「風通しのいい仕事道」 より
本誌取材時スタッフ:構成/佐藤久美子


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