1970〜85年生まれの就職氷河期世代は、現在40〜55歳が中心層にあたります。
Summary
- 「氷河期世代」は、1993~2004年の就職難を経験した40〜55歳世代を指します。
- バブル崩壊後の不景気が採用縮小を招き、正社員就職が困難な時代でした。
- 働き方や価値観の多様化を経て、独自のキャリア形成やライフスタイルが広がっています。
「就職氷河期」という言葉を聞いたことはありますか? これは、バブル崩壊後、企業の採用が大幅に縮小し、就職活動が極めて厳しかった世代を指す言葉です。ニュースやメディアなどで見聞きしたことがある人も多いのではないでしょうか?
この記事では、就職氷河期世代の定義や特徴、背景を振り返りつつ、これからのキャリアを前向きに考えていくためのヒントを解説します。
氷河期世代とは? 定義と年齢区分
まずは、氷河期世代と呼ばれる人たちの定義や、年齢区分を見ていきましょう。

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生まれ年で見る氷河期世代の区分
就職氷河期世代に明確な年齢の定義があるわけではありませんが、一般的には1970年頃から1985年頃に生まれ、1993年~2004年頃に就職活動を迎えた人たちを指します。
この時期はバブル崩壊後の景気の低迷により、希望する仕事に就けず、不本意ながら不安定な仕事をしたり、仕事がない状態にあるなど、多くの課題を抱える方も少なくありません。
もちろん、一概に生まれ年のみで判断することは難しいでしょう。ただ、こういった時代背景の中、現在も社会参加への支援を必要とする人がいるという現実を、理解しておきたいですね。
2025年時点での氷河期世代の年齢
2025年現在、氷河期世代はおよそ40歳から55歳の間に差しかかっています。仕事では中核を担う立場を求められ、家庭では子育てや介護といったライフイベントと向き合う人も増えてくるタイミングですよね。
そんな多忙で変化の多い時期だからこそ、改めて自分自身のキャリアや人生のあり方を見つめ直してみるのもいいかもしれません。

なぜ「就職氷河期」が生まれたのか? 背景と影響
就職氷河期は、偶然ではなく日本経済の大きな変化が生んだ社会現象です。その背景には、バブル崩壊や雇用の仕組みの変化が深く関わっていることを知っておきたいですね。
バブル崩壊後の就職環境の変化
1991年から1993年頃にかけてのバブル崩壊以降、日本経済は長期の低迷期に突入しました。企業は人件費を抑えるために新卒採用を大幅に縮小。その結果、希望する業界に就職できないどころか、就職先すら見つからない…。そんな厳しい現実に直面したのが就職氷河期世代です。
政府の対策と現状の支援策
政府は現在、「就職氷河期世代支援プログラム」を通じて、キャリアアップや正社員登用の支援を行っています。全国の主要なハローワークには「就職氷河期世代支援窓口」が設けられ、キャリアコンサルティングや職業訓練、就職サポートなどを実施していますよ。
さらに、厚生労働省の氷河期世代支援特設サイトには、チャット形式の案内もあり、「働き方を見直したい」などの選択肢を選ぶだけで、受けられる支援や手続きの流れを手軽に確認できます。電話や対面での問い合わせにハードルを感じる方にも、この機能はおすすめですよ。
キャリアに悩んだとき、新たな一歩を踏み出すきっかけとして活用してみてくださいね。
参考:厚生労働省「就職氷河期世代の方々への支援のご案内|厚生労働省」

バブル崩壊後の景気低迷と新卒採用減少が氷河期世代誕生の主因となりました。
氷河期世代の特徴とライフスタイルの変化
厳しい時代を生き抜いた氷河期世代だからこそ、独自の価値観や働き方が形成されてきました。ここでは、仕事観やキャリア形成を中心に、世代ならではの特徴を見ていきましょう。

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仕事観とキャリア形成
氷河期世代は「働くこと」に対して現実的な価値観を持っている人が多いといわれます。キャリア形成の難しさを知る一方で、コツコツと積み上げる力や柔軟に生き抜く力を備えてきたのではないでしょうか? 今こそ、その経験値が生きるタイミングです。
結婚や家庭に対する意識の変化
社会全体の価値観が変化したこともあり、結婚や出産に対する考え方も多様化しました。「結婚しない選択」「一人で生きる道」もポジティブに捉える時代になっています。家庭もキャリアも自分の価値観で選べる今、人生設計に自由度が増していますね。
経済状況と資産形成
氷河期世代は、いわゆる非正規雇用が多かったという背景もあり、資産形成に不安を持つ人も少なくありません。それでも、副業や投資、資産運用にチャレンジする人が増えているのも氷河期世代の特徴。
また、最近では、「非正規雇用」という呼び方に疑問の声もあるようですね。多様な働き方が広がっている近年、正規や非正規という概念にとらわれず、それぞれの価値観やライフスタイルに合った選択肢が認められる社会にしていこうという動きもあります。
これからの時代、多様な働き方で、しなやかに収入の柱を増やすこともひとつの選択肢でしょう。
氷河期世代のリアルボイス
「今の若い世代が、あっさり正社員になっていく様子を見ると、複雑な気持ちになるんですよね…」
そんな本音を教えてくれたのは、現在40代半ばの女性Nさん。まさに就職氷河期のど真ん中を生きたNさんは、「あの頃、本当に仕事がなかった」と話します。
派遣社員や有期雇用から少しずつキャリアを築き、ITスキルや国家資格を身につけ、正社員にたどり着くまでには長い年月がかかったそうです。「正社員枠に応募しても倍率がとんでもなく高くて…。ようやく内定が出たときは、涙が出ました」と振り返ってくれました。
当時は低賃金で不安定な生活が当たり前。同年代には今も同じような生活に悩んでいる人が多く、「生まれた年が違うだけで、ここまで不公平なのかと感じることがありました」と語ります。
そんなNさんは、今は若手を育てる立場にもなりました。けれど、少し厳しく接するだけで「ハラスメント」と捉えられてしまう難しさにも直面しているそうです。
「価値観のギャップに驚かされる場面は少なくありませんが、それも時代の流れなのかもしれませんね。だからこそ、私たちが橋渡し役になれたらいいなと思っています。」
今は資格を生かし、やりがいのある仕事に出会えているというNさん。過去の苦労を乗り越えてきたからこそ、「取り残された人がいることも忘れないでいてほしい」と、静かに思いを伝えてくれました。
今後のキャリアとライフステージの展望
これからのキャリアやライフステージは、自分次第でさまざまな可能性を広げることができます。ここでは、転職やキャリアアップ、老後の備えなど、将来に向けた選択肢を一緒に考えていきましょう。
転職・キャリアアップの選択肢
年齢を重ねても、キャリアアップのチャンスは十分あります。経験を活かした転職や、学び直しによるスキルアップを通じて、新たな可能性を広げていけるでしょう。また、近年の人手不足や働き方の多様化の影響もあり、40代・50代向けの転職・就職市場もどんどん広がってきています。

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老後の備えとライフプラン
将来を見据えるうえで、老後資金の準備や働き方の選択だけでなく、マネーリテラシーを高めていくことも大切です。たとえば、固定費の見直しや、公的年金の仕組みと見込み額をしっかり把握しておくことなど、基本的なステップから始めてみましょう。おおまかな年金見込み額は、年金定期便というはがきで確認することもできますよ。
さらに、確定拠出年金や資産運用といった制度や手段を上手に取り入れることで、自分らしいライフプランに近づけるはずです。
最後に
- 氷河期世代は1970~1985年生まれ・現在40~55歳が中心です。
- バブル崩壊による採用減がキャリア・資産形成に長期影響を及ぼしています。
- 「非正規雇用」や多様な働き方に直面しつつも、時代に合わせて選択肢を増やしています。
就職氷河期世代は、厳しい環境を乗り越えたからこそ持てる「しなやかさ」や「地に足のついた強さ」があります。価値観や雇用形態が多様化してきた今こそ、氷河期世代が輝けるタイミングかもしれません。
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執筆
塚原社会保険労務士事務所代表 塚原美彩(つかはら・みさ)
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。趣味は日本酒酒蔵巡り。
事務所ホームページ:塚原社会保険労務士事務所
ライター所属:京都メディアライン
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