ベストセラー作家・野地秩嘉著の傑作ノンフィクション
幅広いジャンルでベストセラー作品を生み出しているノンフィクション作家・野地秩嘉さんが、ある一軒のパン屋さんの成し遂げた奇跡に迫った『世界に一軒だけのパン屋』。著者が2年にもわたり取材を続け記した傑作ノンフィクションをご紹介します。
一見普通のパン屋、実は不可能を成し遂げた奇跡の店だった
1989年、北海道・十勝。帯広に店を構える町のパン屋さん「満寿屋」の社長・杉山健治さんは、「国産小麦」でパンを作ろうと思い立ちます。一見簡単そうなこのアイデア、実は業界でも「絶対に不可能」と言われるようなとんでもない挑戦でした。値段の安い海外産小麦を使わないと儲けがでないうえ、なんと当時の日本にはそもそもパン用の小麦さえ存在していなかったそう。
そんなこれまで誰もやってこなかった試みは、志なかばで健治さんがなくなった後も、世代を超えて引き継がれます。そして30年以上の時を超え、ついに2012年10月28日、すべての商品を国産小麦100%にすることを成功させるのです。そんな前代未聞の試みを成功させたこのパン屋さん、すごいのはそれだけではなかった!なんと小麦や水、牛乳、バター、砂糖から酵母まで、すべて十勝産を使用した究極の地産地消のパンだったのです。
無謀とも思われた挑戦を成し遂げた製パン店3代のドラマを描いた本作。読み応えたっぷりの本書。安全、安心な究極の国産パンを食べてみたい!と思わずにはいられません。パン好きはもちろん、ひたむきにパン作りに向きあった「満寿屋」のこだわりの歴史をひもとくべく、多くの方に読んでいただきたい一冊です。
野地秩嘉著 小学館刊 ¥1,600+税