【目次】
第2回 中途半端な起業はご近所さんから妬まれる⁉
株式会社エムズファクトリー
代表取締役・51歳
松田裕美さん
前回のお話▶︎趣味は草むしりの専業主婦が、年商7億の社長になるまで
『友達からお金とるの?』と言われ、一念発起
35歳でクラフトバンドと運命の出合いを果たした松田さん。最初は起業しよういう気持ちはまったくなく、ただ楽しんでいただけだったそう。
「教室を始めたときは、材料費だけもらって指導はボランティアでした。生徒さんが徐々に増えてきて、準備にも時間がかかり徹夜をする日々。もうボランティアではできない、と、ある日、生徒さんに『500円だけもらってもいい?』とお願いしたんです。そうしたら、『友達からお金とるの?』『資格ももっていないくせに』と言われて…。ショックだったけど、『確かに』、と思う部分もあった。だったら、きちんと仕入れもしてお店もつくって、編み方の資格もとろうと思ったんです。それなら自信をもって教えられるし、だれも文句を言わないだろう、と」
クラフトバンドを求めて、タウンページに埋もれる日々
とはいえ、クラフトバンドをどこで作っているのか、どこで仕入れたらいいのかまったくわからない状態。松田さんは、製紙会社に問い合わせようと全国からタウンページを取り寄せ、製紙会社に電話したのだとか。
「私も取り寄せてわかったんですけど、全国のNTTからタウンページを取り寄せたら、六畳一間が腰まで埋まるほどになるんです(笑)。北海道の製紙会社から順番に電話して、『紙バンドという紙の紐を探しています。売ってもらえませんか?』と聞いていきました。ようやく静岡の製紙会社でつくっていることがわかり、新幹線で直行。まだ1歳だった子供をおぶって交渉に行きました。へそくりで貯めた2~3万円を渡して、『これで紙バンドを売ってください』と頼み、ネットショップを開設。その製紙会社で、編み方を教えてくれる先生も紹介してもらい、週に1回、千葉から静岡に通って編み方を教えてもらいました」
ご近所さんの妬みが株式化のきっかけに
会社を株式化するときにも辛い体験があったそう。
「ネットショップも教室も順調だったのですが、それがご近所の方たちからしたら面白くなかったらしく、『急に松田さんの奥さん、偉そうに先生始めちゃったんだけど』と陰口を言われるようになったんです。私だけならまだいいですけど、娘もいじめられるようになってしまい、『ママが先生みたいなことしているから、私がいじめられる』と。仲良しだと思っていたママ友にも陰口を言われて、そのママ友の子供に娘は殴られて…。ショックで仕事はもう辞めようと思い、半年ほど引きこもりました」
その間も、「編み方を教えてほしい」という声は後を絶たず、松田さんは迷いに迷い…。
「どうして、陰口を言われたり、いじめられたりするのか、根本的な原因を考えたら、〝私が中途半端だからだ〟と気付いたんです。個人事業主とかプチ起業みたいなことをしているから、やっかまれるんだ、と。そこで、覚悟を決めて株式会社化し、会社が大きくなるにつれてやっかみもいじめもなくなりました」
『俺と仕事どっちが大事なんだ!』と夫に言われ離婚
順調に会社は成長。どんどん忙しくなり、洗濯物をためてしまったり、週3回カレーという日々が続いていくうち…。
「夫が『俺と仕事とどっちが大事なんだ!』と言い出して(笑)。だんだん距離ができて、結局離婚し、シングルマザーになりました。考えてみると、子どもってどんどん自分のことは自分でできるようになるんですけど、夫はいつまでたっても靴下は脱ぎっぱなしだし、本も読みっぱなしで成長しない。夫の世話にいちばん苦労しましたね。離婚したことで、足かせがとれたのか、仕事はさらに順調に。クラフトバンド手芸の本を出版したり、自社ビルも建てました」(次回へ続く)
取材・文/赤木さと子(スタッフ・オン)