「予防接種」は病院に行くだけがタスクじゃない
夫婦たるもの以心伝心が当たり前。ずーっと連れ添っているんだから、ゴミ収集所に持っていくのが「ゴミ出し」ではなくて、出す前に分別してまとめて、ゴミ箱に新しい袋をセットすることも含む!とか、予防接種は子どもを病院に連れて行って注射を打つことではなくて、ワクチンを打っていい順番を確認してスケジュールを組んで予約して、当日まで風邪を引かせないように注意して、当日は熱を測って問診票を書いて、待ち時間に機嫌が悪くならないようにお気に入りのおもちゃを用意して…とか、そのくらい、見てればわかるでしょう、と思っていたんです。
だから、疲れきっている私を見ても夫がスルーするとムカッときて、本当によく喧嘩をしていました。
「私に比べたら、あなたは何もしていない!」
「あなたは何もしていない!」ある日堪忍袋の尾が切れて、私はつい、そんなひと言を発したんです。
「何もやってないわけじゃないよ。子どもの送りだって、朝ごはん作りだって、子どもの迎えだって行ってる。俺の役割はすべてちゃんとやってるよ。むしろ、俺ほどやってるお父さんはいない!」と夫。
えっ、今なんと!?
「じゃあ、私が毎日やっていることを全部紙に書いてみてよ」。もうこうなったら、私と夫の間にどんな認識の違いがあるのか、見える化大作戦しかありません。渋々ながらではありましたが夫は応えてくれました。
「俺、想像とかできないから」!?
ところが…次の日、夫の書いてくれた紙を見て、私は開いた口が塞がりませんでした。
▲夫が書いた<家事育児リスト>がこちら。
水やり、除湿機の水出し、宅急便のやり取りなどは、確かにそのとおり。けれど、<子ども関係の申請など><予防接種などの予約><塾関係>…なんですかこれは一体…。
この<など>とか<関係>とくくられた中身が、いちばん負担のかかる大変なところなのに、どうしてひとまとめにされてるんだろう? この後ろに何十個ものやることと労力が隠れていることが、まさかわかっていなかったの? どんな言葉で伝えたのかは詳細には覚えていませんが、最終的に夫がこう言ったことは、はっきり覚えています。
「ごめん、俺、想像とかできない。わからないわ。これをやってって的確に言ってもらわないと。言われたことはやるから、教えて」
夫が書いた紙と、一連のやりとり、そして私に向き合ってくれた彼をとおして、私はやっと気づきました。今まで10年、3人子どもを育ててきて、「いちばん近くにいる夫は育児家事の大変さをひっくるめて全てわかっているはず」と、思い込んでいたことに。
我が身を振り返ってみれば、育児・家事の実情を夫に理解してもらおうとしたことはなかったかも知れない。ただ黙ってモヤモヤしていたんだな、と。意味もわからず不満をぶつけられる夫も、きっとモヤモヤしていたことでしょうね。
「察してちゃん」からの脱皮
「子どもの試合の問い合わせのLINEがたまってるから、返信しなきゃ(LINE返すのも結構大変なんだから少しは関心持ってよね)」「次、いつ家にいるの?(家にいる日がわからないとスケジュールが組めないんだけど)」「私、今日すごい大変だったんだから(ありがとうくらい言ってよ)」遠回しにやって欲しいことを言っているつもりだったけれど、夫は全く気づいていなかった…。
それでも言葉に出しているうちはまだいいけれど、それさえも面倒になっては自己完結し、勝手にブスッとしていた私。やって欲しいことを想像してほしい、私に労いの言葉をかけてほしい、という夫への要求が無意味だったことに気づいてからは、伝えることを諦めなくなりました。
「パパ、来月の子どもの予定はこれとこれをお願いね。後から『やっぱり…(ダメ)』ってなっても、私も予定変更したくないから、自分で方法を見つけてね」
想像できないこと・やれないことはあって当たり前。「わかってもらえない」ことを気に病むより、ハッキリと伝えると、お互いスッキリするものです。
▲昨年は、夫に息子2人をまかせて、娘と2人旅。アメリカに行きました。
▲私と娘の旅行中も、「男チーム楽しくやってまーす」と毎日facetimeで連絡が。
こうして夫に子どもを任せて旅行に行けるようになったり、夜も出かけられるようになりました。そういう時、最初はアレコレと細かく指示を出していた私ですが、今ではお任せ。夫も自分流に家事ができて、なんだか楽しそうです。
モデル
牧野紗弥
愛知県出身。小学館『Domani』を始め、数々のファッション誌で人気モデルとして抜群のセンスを発揮しながら、多方面で活躍中。キャンプやスキー、シュノーケリングなど、季節に合わせたイベントを企画し、3人の子供とアクティブに楽しむ一面も。今年は登山に挑戦する予定。自身の育児の経験や周囲の女性との交流の中で、どうしても女性の負担が大きくなってしまう状況について考えを深めつつ、家庭におけるジェンダー意識の改革のため、身を持って夫婦の在り方を模索中。