【目次】
家族は〝お互いの鏡〟
───── 確かに、実行すれば、私自身がイライラせず、家の中がいい空気になるようにも感じました。
大草さん:そうですよ。家の中に楽しそうな人が一人いれば、どんどんいい環境になっていくのです。家族は〝お互いの鏡〟です。夫の反応、子供のリアクション、これらを客観的に見ると、自分が同じようなことをしているから、同じように対応されるのです。それに家族はさまざまな役割があります。先日、10歳の次女が学校でちょっとしたトラブルを抱えて帰ってきました。私はそのトラブルについて、理路整然と分析して、「あなたと相手の問題点はここにあって、こうしてぶつかり合って、この結果になった」と解説しました。
時間をかけて、次女のいいところと、改善点を言葉を尽くして語ったのですが、気持ちが収まったという手ごたえはありません。次女は「ママはわかってくれない」と、20歳の長女のところに行ったのです。すると、長女は「そうか、あなたは、友達を大切にしているんだね」と語りかけ、次女は「お姉ちゃんはわかってくれた」と嬉しそうな顔になったのです。夫は次女に対して「君はなんて勇気があるんだ!素晴らしい!」と称賛し、次女は心が満たされた。家族、それぞれの見ている世界と、考え方が異なり、それぞれの役割があると感じた瞬間でした。家庭内のエコシステムが長い時間をかけて成立していったと感じたのです。
───── それぞれが補い合って生きている。
大草さん:相手のことを責めたり非難したりしないことが大前提ですが、時間をかけてこの関係ができていきました。といっても、私はすべきことがたくさんあり、家族と一緒にいられる時間が限られている。時間が少ないから、楽しくしたい。だから、ホントにしつけも何もしていないんですよ。それどころか、学校の提出物も子ども任せ。注意する時間があったら、子ども達との会話に使っています。
母親が全てをやろうとしなければ、そのうちそれぞれの得意分野の役割になっていく。キャリアも積まなくては、子育ても完璧にやらなくてはと、ひとりで抱え込むまず、他の家族に任せたり、じいじやばあばに電話でもコミュニケーションをとるように仕向けたりして、どんどん人に任せていくと、自分もラクですよ。
───── 自分の得意分野と役割を見定める。これはキャリアにも通じると思います。大草さんは仕事において、自分のミッションをどのように見つけていったのでしょうか。
大草さん:これにはいろんな経験をして、自分は何が好きで得意かを考えていくことの延長線上に今がありました。働き始めて15年くらいは、言われたことを必死にやってきて、自分の適性は自分にしか決められないと感じました。Domani世代の方が、適性に気づくとすれば、人に褒めてもらうことを書き出すとか、〝好きなこと、得意なこと、お金になること〟の3点を満たす仕事を客観的に考えると、何かが見えると思いますよ。
これは女性に伝えたいのですが、長いスパンでキャリアを考えることが大切。〇歳までに役職をとらなくてはとか、プロジェクトを成功させなくてはとか、自分を追い込むようなキャリアの捉え方をしないほうがいいと思うんです。私の場合、誰もがやったことがない仕事を開拓することが楽しかった。石がゴロゴロある荒野を、ブルドーザーでガーッと流して、土地の原型を整えるのが得意だし、好きなんです。でもその後に、やわらかい土を入れる人、舗装する人、道端に丁寧に花の種をまく人、それを育てる人、木を植える人がいて、それらは私にはできません。仕事において、自分の役割を知るからこそ、相手への敬意も生まれて、仕事がいい方に回っていく。そういうところに、縁もチャンスも、そしてよい仲間と信頼が集まっていくのだと感じています。
その最初の〝さざ波〟を生むのは自分自身。まずは自分のパワーを満たして、この先が見えない世の中を、軽やかに進んでいきましょ!
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大草直子
1972年東京都生まれ。大学卒業後、出版社に入社し、女性誌の編集に携わる。サルサ(ダンス)と衝撃的な出会いをし、中南米に遊学。帰国後は、フリーランスで編集者・ライター・スタイリストとして活躍。広告のディレクション、イベント出演なども手掛ける。この間、結婚、離婚、再婚、出産をし、現在は夫と3人の子ども、猫と暮らしている。 ファッション関連の著書は『大草直子のSTYLING&IDEA 10年後も使える「おしゃれの結論」』(講談社)など15冊。