「歳を重ねたからこそ」のおしゃれが楽しい!
大草直子さん/ファッションエディター・スタイリスト
急に服が似合わない…。40代に入って経験した暗闇
太陽のような笑顔と、かっこよくて女っぽい着こなし。いつでも〝自分に似合うもの〟を的確に選び、軽やかにまとっている大草さんは、まさにお手本にしたい存在です。
「40代後半になって、ようやく自分の〝体の正解〟みたいなものがわかってきた気がします。40代になったばかりのころは、ちょっとトンネルに入っているような感じだったんです。首に今までなかったような影ができたり、肩のラインが明らかに丸くなったり…。昨日まで似合っていたはずの服が急にしっくりこなくなって、何を着ていいのかわからない。そんな現実を受け入れるのに少し時間はかかりましたが、受け入れたらすごくラク。デコルテがいい具合にそげてきたのでシャツが似合うようになったし(笑)、服の取捨選択もしやすくなった。さらに鎖骨、背中、ウエストのライン…、出したほうがバランスよく見える自分のパーツもより明確に。年齢を重ねたからこその服とのつきあい方が見えてきて、今、服を着るのがすごく楽しいんです!」
年齢による変化をポジティブに受け入れながら、ときに柔軟に、ときにシビアに自分と向き合う。こうして確立された〝大草ベーシック〟の軸は、超多忙だった30代に培われたものだとか。
「30代はもうとにかく、記憶がないぐらい忙しかった(笑)。子どもが3人いるんですが、みんなまだまだ手がかかる時期だったし、ちょうど雑誌で自分の名前がついた企画をやらせていただいたり、本を出したり、仕事の幅もぐっと広がってきて。子どもがかわいいのはもちろんですけど、仕事もがんばりどき。ありがたいことに夫はとても協力的でしたが、それでも夫婦ともに心も体もギリギリの毎日でした」
そんななか、制服のように着ていたのがグレーのカシミアニット、デニム、バレエシューズの組み合わせ。
「アイロンをかける時間も着る服に迷う時間もなかったので、コーディネートをワンパターンに決めちゃったんです。大人の女性誌で、そのころはまだ珍しかったカジュアルな着こなしを提案し続けていた私にとって、デニムはまさにマイスタイルのベースにあるもの。トップスがカシミアニットなら品もあるし、着心地もいいし、動きやすい。ここにパールのピアスをしたり、〝IWC〟のメンズの時計をしたり…。そんな〝削ぎ落としたベーシック〟を毎日続けることによって〝自分らしさ〟が研ぎ澄まされたんだと思います」
〝長いつきあいのトレンチに今また、ときめいています!〟
「7、8年ほど愛用しているトレンチコートに、昨年、機会があってワッペンや刺しゅうをカスタマイズ。着慣れた一枚に遊び心とスポーティなムードが加わって、フレッシュな気分で向き合えるように!」
内側にもプレイフルな装飾が!
コート/アクアスキュータム カットソー/ベルベット バイ グラハム&スペンサー パンツ/ミラ オーウェン バッグ・リング[左手・人さし指]/エルメス 靴/3.1 フィリップ リム ピアス/ボン マジック バングル/ティファニー リング[左手・シルバー]/アスプレイ・[左手・ゴールド]/マルコム ベッツ・[右手]/アダワット トゥアレグ
育てる楽しみを味わえるのはレザーならでは
「時間とともに味わいが増すレザージャケットは、投資するべきベーシック。いい具合に育った左は15年ほど前に買ったもので、今は長女が愛用中。右はおととし購入したもの」
ジャケット左/ラ・フォンタナ・マジョーレ 右/チンクワンタ
これまでとこれからを支えてくれる時計
「存在感のある〝IWC〟の『ポルトギーゼ』は、カシミアニット×デニムのアクセントにしたくて10年前に購入。多忙な時期を支えてくれたのと同時に、私を一歩先の未来へと導いてくれた〝灯台〟のようなアイテムです」
時計/IWC
娘たちにも受け継ぎたい美しきジュエリー
「〝ボンマジック〟のジュエリーは、新人編集者だったころからの憧れ!30代でバロックパールのピアスを購入して以来、いろんなタイプのものをコツコツ集めています」
ネックレス、ピアス/ボンマジック
顔周りはすっきりと、がスタンダード
「ブログをきっかけに10年前からほぼ毎日、自分の写真を撮っていますが、客観視できるのがいいところ。髪を結んでいるほうが好きなバランスに仕上がるので、ずっとまとめています」
コート/アクアスキュータム ピアス/ボン マジック リング[左手・シルバー]/アスプレイ・[左手・ゴールド]/マルコム ベッツ
自分に自信がもてるMyベストパンツ
「理想のパンツを探し続けて、30代半ばでやっと出合った一本。どこから見られても大丈夫!っていうぐらいシルエットが美しく、自分の体を安心して託せるから、これからもずっとお世話になるつもりです」
パンツ/ジョゼフ
間口の広さも好きな〝ティファニー〟
「アメリカンブランドならではのオープンでリベラルな姿勢が好きで、誕生日や大きな仕事をやり遂げた際のご褒美に。高校生のとき、父にプレゼントしてもらったファーストジュエリーも〝ティファニー〟でした」
ネックレス、バングル/ティファニー
装うことを楽しめる日常に感謝を忘れずに…
人生のレイヤーがその人らしさをつくるから、年齢を重ねるのが楽しみ、と話す大草さん。では10年後、どんなおしゃれを楽しんでいるでしょうか?
「私、112歳ぐらいまで生きる予定なので、10年後ってまだ人生の半分ぐらい(笑)。そう思うと人生これから、なんですけど、もっと〝無国籍〟な感じになっているかな。日本人らしい繊細さはありつつも、外国人みたいに大胆なプリントや色合わせを取り入れたり…。さらに柔軟で自由になっていたい。おしゃれを楽しめる環境やそれをつくってくれている方々に感謝しながら、おしゃれと人生を楽しめたら最高ですね」
ファッションエディター・スタイリスト
大草直子
大学卒業後、婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に入社。雑誌『ヴァンテーヌ』の編集に携わったのち独立。雑誌、カタログを中心としたスタイリングや編集、広告のディレクション、執筆業など幅広く活躍。個人メディア「AMARC」にて吟味した情報を発信中。一男二女の子どもをもつママ。
Domani2020年10/11月号「ALL私物で見せてもらいました!『これが私の〝10年ベーシック〟。』」より
撮影/谷口大輔 ヘア&メーク/清水ヤヨエ 構成/今村紗代子 再構成/WebDomani編集部
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