女には、色の数だけ物語がある。目にしたり、身にまとったり、食したり。どんな色を愛するかは、そのまま、どんな女なのかを語ることであり、同じ色を見ていても、まるで違う夢を見ることだってある。
元ファッションエディターとして活躍。現在はスピリチュアルビューティコンサルタントmailoveとして、見える部分も見えない部分も「キレイ」を提案していると話題のふたりのマイ。同じ名前、同じ身長、同じ会社、同じ小学校…運命的ともいえる出会いながら、色の好みはまったく異なるらしい。
ベーシックカラーをこよなく愛するマイ・neffy maiと、あざやかな色に囲まれて生きていたいマイ・venus mai。
アラフォーの対照的なふたりが往復書簡で紡ぐ、それぞれの色と人生。おしゃれで、スピリチュアルで、ちょっと“変わってる”、ふたつでひとつの“my”カラーストーリー。
今回は、カラフルでエキセントリックなマイから、ベーシックで懐深いマイへ届ける物語。
今月のカラー:“Grey”
それは、「グレー」な恋だった
From Venus Mai
一見私たちは、マイ・neffy maiさんが物事をはっきりさせたい派で、私が曖昧でも受け入れるタイプ。に思われがちなんだけれど、実は逆だと思ってるの。
やわらかいグレーのグラデーションのように、どこまでも優しく相手を受け入れる器を持つマイさん。
そして、思い込んだら一直線、絶対物事を白黒ハッキリつけたい頑固な私。好きか嫌いか、やるかやらないか、人生オールオアナッシング、以上! 特に、男の人に対してはね。
だからかな、ワードローブにもグレーは少なくて。これを書くのもどうしよう!と思うぐらいだったよ。
マイさんのグレーストーリーには”らしさ”がいっぱい溢れていて。住みたい家の話も、着ている服の写真も、まるでパリのヴィンテージみたいな空気が満載だった。そういえば、仲良しのスタイリストさんも、よくミラノの石畳をイメージしてグレーのコーディネートをつくっていたっけ。
もし、人によって、グレーを思い浮かべる街があるのだとしたら、私の中ではグレーの街はNY。
誰もがちょっと背伸びして、早足で、高層ビルが空に向かってそびえ立ってる”クール”な街。冷たいわけじゃないけど冷静で、洗練さと無骨さをあわせ持ち、緊張感をはらんでいる、できる大人のオトコみたいな世界。
私にとってグレーは長く男の人の色で、自分は身につけない。なのに、妙に惹かれる色だった。メンズが放つグレーの色気、みたいなものがいつも恋のきっかけになる。マイさんもよく知っているあの恋もそう。
…その人は、”グレー”な男の人だった。本人は黒を好んで着ていたけれど、離れた年齢も、白髪交じりの髪も、やたら理屈っぽいところも、何かを見透かすような眼差しも、なんだか”グレー”な雰囲気の人だった。モノクロ写真なんだけど、トーンはグレー、みたいな感じ。
どこがいいの?とマイ・neffy maiさんにはよく聞かれていたけれど(笑)、昔から渋好みな私、グレーな男が無条件に好きなんです。私たち、メンズの好みは本当に真逆だよね。
一生にそう何回もないような、時間も熱量もかけた恋。カラフルで派手でエキセントリックな私と全然違う人。でもどこかがすごくお互い似ていたとも思う。寂しがりであまのじゃくで、どっちも相当面倒くさい。そこが好きだったんだけど。
ただ関係も、ずっと”グレー”なままだった。なんとなく一緒に楽しくいるけれど、それで時間が過ぎていく。恋人同士のその先に進まない。相手の本心が、それこそグレーのもやがかかったかのようにいつも見えなくて、わからなくて。そんな状況に私が我慢がならなくなって、ある日突然、手放して終わりにした。そのまま、マイ・neffy maiさんの所に駆けこんで泣いてましたっけね。あの時は、本当にありがとう。
どうして白黒つけられないんだろう、どうして私を受け入れないんだろう、いつもそんなことばかり気になって嘆いていたけれど。
離れて時間が経ってみて、なんでも白黒つけたい、愛情表現も乱高下する、いろんな意味で極端だった私を、本当は彼なりにずっと受け入れて包んでくれていたんだなと、ふと思えるようになった。
白も黒も混じり合って、そのままグレーになるように。とても、優しい人だった。
不思議とお別れしてから、私のワードローブには少しづつグレーが登場するようになって。そんなにメインなわけじゃないけど、着実にこの色が増えてきた。極端な性格はなかなか変わらないけれど(笑)、でも人生の選択肢が、きっともうひとつ増えたんだと思う。
自分とは似合うトーンも方向性も全然違うけれど、グレースタイルのお手本は、実はマイ・neffy maiさんなんだよ。なんてことないように、グレーですべてを包み込む感じ。白シャツに黒パンツ、そこにさらっとグレーのハットで馴染ませる感じ。泣いた時も、絶望した時も、いつも手を差し伸べてくれる優しさとすごく重なっている。
私にとってクールで冷静な色だったグレーが、本当はとても温かい、愛の色だということにいつの間にか気がついた。それは彼に出会って、そしてマイ・neffy maiさんと出会って、初めて理解できたこと。
きっと、グレーを知るための恋だった。優しさを知るための恋だった。
振り払うように出て行ったことを後悔はしないけれど、一緒に過ごした時間に心から感謝している。
白でもない、黒でもない。グレーな愛情だってある。
言葉にできない、曖昧で優しい気持ちがあって。それぞれの気持ちが、色が、溶け合って、混じり合って、重なり合って、そしてグラデーションが生まれていく。
だから人生はカラフルで、美しくて、愛おしいと思えるのかもしれない。
さてさて、思い出話とグレーの話はこれでおしまい。次回のテーマは「赤」。私にとっては実は、グレー以上にマイさんを表す色なんだよね。情熱の赤、華やかな赤、強さの赤…ね、全部そうじゃない? 私の赤はどんな赤かな。次回まで、よく考えておくことにします。
【ニューヨークで出会ったグレー】
絶妙にモーブがかったグレーに、旅先でひと目惚れした”ヘルムート ラング”のチェスターコート。こんなメンズライクな形は、私には珍しかったけれど、このグレーがなんとも女っぽくて、着てみたい!と素直に思えた。あいにくサイズがなくて、泣く泣く諦めて帰ったら、日本でピッタリサイズを発見。しかもNYより安かった! というわけで、無事に我が家にお迎えしたのでした。きちんと感のあるシルエットなのに、袖口は切りっぱなしのラフさ。コンサバスタイルを程よくモードにしてくれる。グレージュのサングラスとグレーのワンピース、黒のファーでのグラデーションスタイル。でも、ピンクのグローブを差し色に、が私流。
【ワードローブに増えたグレー】
ピンクがかっていたり、光沢があったり。選ぶのはやっぱりどこか派手なグレー。大好きなランジェリーブランド”Aubade”のテディ(キャミソールのオールインワン型)は、グレーというかシルバーなんだけど、ノーブルさに惹かれて。シルクのなめらかな肌触りが気持ちを優雅にしてくれる。 背中側はオーガンジーで透けているのもたまらない。『SATC』のキャリーよろしく、暖かい季節はこれにカーディガンを羽織って部屋で過ごしてる。そろそろ、出番になりそうで楽しみ! マイさん主催のグレーしばりなお泊まり会には、これで参加してよいですか?(笑)
【愛のグレー】
フェミニンで官能的なグレーパールのネックレスは、友人のジュエリーブランド”EIKO’S WORLD”のもの。古代ギリシャの愛の女神アフロディーテが、インスピレーション源だとか。よく「貝ですか?」と聞かれるトップの部分は、天然のストーンに彩色と装飾が施されている。眺めていると吸い込まれそうな不思議な魔力。身につけるだけで癒されて、優しい気持ちになる。世界にたったひとつの、私だけのジュエリー。
venus mai
元ファッションエディター。同じ“マイ”という名前のneffy maiと共に、スピリチュアルビューティコンサルタント“mailove”として活動。東京大学文学部美学芸術学科を卒業。アートやカルチャーに造詣が深く、ライフスタイルにも独特の美意識を発揮する。1979年生まれ・いて座・AB型。Domaniウェブサイトにて「うらやましい系女子の24/7/365のリアル」『ふたりの魔女の恋愛タロットリーディング』なども担当。