義母から何度も飛び出した「息子は、本当はバカじゃないのよ」に違和感
緑さん(仮名・43歳)は、結婚3年目に入ったばかりの夫がいます。お互いに再婚で、子どもはいません。年齢的に「積極的な子作りはしないけれど、できたら嬉しいよね」というスタンスでいるそう。互いに仕事を大切にする関係性を大事にしていて、穏やかな共働き生活を理想としていました。
「結婚半年を迎えた頃でしょうか、地方に住む義母が家に1週間ほど泊まりに来たんですけど、滞在の後半になって、さかんに『息子は、本当はバカじゃないのよ』って私に言うんです。もちろん、私から義母に夫がバカだとかそんな話をしたわけでもないし、お義母さんはいったい何を言っているんだろうって感じだったんですよね」
緑さんは、現在の夫とは交際1年ほどでゴールイン。そのため、義母とは結婚が決まってからしか会ったことはなく、この滞在が、初めて義母とじっくり過ごした時間だったそうです。
「それから、数ヶ月に1回ほどのペースで義母が上京してきては家に泊まっていくんですが…。毎回のように『息子は、本当はバカじゃないのよ』って言うので、だんだんとおかしいなと思うようになりました」
夫の異常行動が勃発…ひとりでは手に負えなくて
そして、コロナ禍に突入し義母が上京してくることはなくなったそうですが、その頃から夫の言動に違和感を覚えるようになったという緑さん。最初は、小さな異変からでした。
「話しかけても返事がおかしかったり、休日にいきなり客用布団をリビングのど真ん中に敷いて一日中寝ていたりと、明らかに夫の行動が異常になったんです。LINEの返事も、定型文のようなものしか返ってこないようになって、いろいろと変だなと。食事も食べたり食べなかったりだし、家ではほとんど言葉も発しなくなりましたし、家事をやっても間違いだらけで…」
あまりにも様子がおかしいので、病院に行くよう夫に勧めたという緑さん。しかし、勧めるたびに夫に激怒され、自ら受診してくれる気配がなく途方に暮れます。
「夫の行動に関してインターネットで調べてみると、発達障害とかうつ病とかって出てくるんですよね。まぁ、その頃には明らかにおかしなことばかり言ったりやったりしていたし、仕事に行かない日も増えていたから、絶対になんらかの病名がつくだろうとは思っていました。けれど、本人に受診を勧めても、病院に行ってくれないし困ってしまって……」
義母の口から飛び出した衝撃の事実
日が経つにつれ、夫の言動もエスカレート。もはや自分の手に負えないと思った緑さんは、意を決して義母に相談します。
「すると、義母の口から驚きの言葉が出てきました。なんと、夫は発達障害の診断もうつの診断も受けたことがあり、それで何度も人生をダメにしてきたのだと…。義母も夫も、それらの事実を隠していたわけです。さすがに驚きましたし、ショックでしたよ。一番ショックだったのは、結婚前に本人からそれを打ち明けてもらえなかったことでしたが、隠していた義母にも不信感を覚えました」
それでも、なんとか夫婦生活を維持できればと考えたという緑さん。その頃には、夫は無表情で昼も夜も区別のない生活を送り、家庭内は崩壊していたそうです。緑さんは、自分ひとりではどうにもならず、義母に助けを求めます。
「なんと義母からは『だから言ったじゃない』『夫婦のことなんだから、自分たちでなんとかしなさいよ』という言葉が飛び出しました。義母の言う『だから言ったじゃない』は、執拗に口にしていた『息子は、本当はバカじゃないのよ』のことらしいです。本当はバカじゃないんだから、我慢して今は支えろということらしく、その日の電話でも何度も『息子は、本当はバカじゃないのよ』と言われました。だけど、身近にいて、経済的にも物理的にもひとりで支えようとしているこちらは地獄ですよ!」
義母はまったく頼りにならないまま、時間の経過とともに夫の言動は悪化。結局、それから数ヶ月後、夫が行き先も告げずに家出をする形で、緑さんは平穏な日々を取り戻しました。
「今は離婚に向けて話し合いを始めようとしているところですが、夫の居場所がわからずに困惑しています。ビジネスホテルに泊まっていると聞いていますが、お金も続かないだろうしホテル名も教えないので、本当かはわかりません。最初に本当のことを打ち明けてくれていたら、私の中でここまでの不信感にはならなかったと思います。隠していた夫にも、誤魔化そうとしていた義母にも腹が立ちますね」
夫に、きちんと家庭生活を送る意思があれば、まだやり直そうとは思っていると言う緑さん。しかし、話し合いにも応じてもらえず、状況は悪化しているとのことでした。結婚前には思いもしなかったことを目の当たりにして途方に暮れているそうですが、専門家にも相談しながらベストな道を模索したいとのことでした。
取材・文/並木まき
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