駐輪場で、自転車をきれいに並べて止めてもらうためにも同様の仕掛けが利用されています。地面に線が引いてあると、ついその線に沿って止めたくなるものです。
自転車置き場に白線が引かれていると、その線をまたいだり垂直に止めたりすることはなんとなく気が引けます。何もなければ自転車の向きや間隔はバラバラで乱雑になってしまいそうですが、線があるだけで自転車の流れが自然と整います。通路にはみ出すことなく、人も自転車も出入りがスムーズになっていいことずくめです。
【目次】
仕掛けには「二重の」目的がある
このように、仕掛けは私たちの日常生活においてさまざまなかたちで機能しています。解決したい問題に楽しくアプローチできるのが、仕掛けの大きな魅力。子育てしていくなかで起こる困り事も、仕掛けで解決・改善できることがたくさんあると私は考えています。
子どもは好奇心旺盛で、何もないところから遊びを作り出す天才。仕掛けの持つワクワク感にいち早く反応し、楽しんでくれるはずです。無意識のうちに常識や一般概念にとらわれてしまっている大人よりも、むしろ子どものほうが高い効果を期待できるかもしれません。
本稿で紹介している仕掛けはほんの一部にすぎません。世界には仕掛けがたくさんあふれており、仕掛けの可能性は無限大。子どもの年齢、行動パターン、性格などによって好きにアレンジすることができます。
ただし仕掛けを効果的に作用させるには、子どもが人の話を理解できることが前提となります。親子で会話ができる年齢、言葉の意味を理解できる年齢になっていれば、子どもは仕掛けを楽しんでくれるはずです。
仕掛けを自分で作り出すのは難しそう、と思っている人もいるでしょう。まずは街にあふれる仕掛けで、仕掛ける側と仕掛けられる側の両方の目的を考えてみてください。仕掛けには両方の目的が異なるという「目的の二重性」があります。子どもに「○○してほしい」「△△しないようにさせたい」という課題があるなら、それは仕掛ける側の目的。
今度は、その行動や問題に対して子どもの気持ちを想像してみてください。自分ならどんな遊びや声かけで誘われれば行動したくなるかな?と考えてみます。これが仕掛けられる側の目的です。両方の目的を達成できる仕組みや遊びが、よい仕掛けになるのです。
大阪大学大学院経済学研究科教授
松村 真宏(まつむら なおひろ)
1975年大阪生まれ。大阪大学基礎工学部卒業。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。博士(工学)。2004年より大阪大学大学院経済学研究科講師、2007年より同大学院准教授を経て現在に至る。2004年イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校客員研究員、2012~2013年スタンフォード大学客員研究員。趣味は娘たちと遊ぶこと(遊んでもらうこと)。
東洋経済オンライン
東洋経済オンラインは、独自に取材した経済関連ニュースを中心とした情報配信プラットフォームです。