「言うは易く行うは難し」とは?
まずは、 言葉の由来や語源について解説していきます。
読み方・意味
読み方は、「いうはやすくおこなうはかたし」です。「難し」を「かたし」と読むことは多くはないので、よく覚えておきましょう。「口で言うのは簡単だけど、実際に実行することは大変難しいことである」という意味のことわざです。では、その言葉はどこから来たのでしょうか?
由来・語源
言葉の由来は、『塩鉄論(えんてつろん)』の利議(りぎ)篇から来ています。この『塩鉄論』は古代中国・漢の時代に、国の塩や鉄の専売制について行われた会議をまとめた経済政策書です。儒教思想の派閥と法家思想の派閥との間に生まれた論争は、当時の政治や経済の実態を知る上で貴重な資料とされています。日本では平安時代に伝わったといわれており、昭和初期には口語訳の翻訳書がいくつか出版されています。
『塩鉄論』の中に、「口では立派なことを言う者が必ずしも徳があるとはいえないのはどうしてか?」という問いかけに対し、「これを言うは易くして、これを行うは難し」と答える描写があります。口先だけの人間は昔から居たのでしょう。ビジネスの場では特に、実行して結果を残すことが重要視されるので、この言葉を座右の銘にしている方も多いのではないでしょうか。
誤用に注意
「言うは易く行うは難し」と言葉が長いため、前半の「言うは易く」だけを端折って言うことがあります。この言葉だけを捉えてしまうと、「言うのは簡単だからとりあえずどんどん言っていこう」という取り違えた意味にも。実行可能か自信はないが、口に出すとやる気が湧いてくる、という人もいるでしょう。しかし、言っただけで放置しておくと他者からの信頼を失う可能性もあることを留意しておきましょう。「言うは易く」と「行うは難し」は、省かずにきちんとセットで使うのがベストです。
ほかにも間違った使い方として「言うは易し行うは難し」と、「言うは易し」になってしまうケースも。同じ韻を踏むので言いやすく、聞こえはよいのですが、本来は「言うは易く行うは難し」です。誤用に注意しましょう。
言うは易すく行なうは難たし
《「塩鉄論」利議から》口で言うのはたやすいけれども、それを実行することはむずかしい。
デジタル大辞泉(小学館)より引用
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では実際に「言うは易く行うは難し」を使った例文を見ていきましょう。
ダイエットするために、甘いものを食べないことにした。でも、分かっちゃいるけどやめられない。「言うは易く行うは難し」だな
誘惑に負けない自分になるために、自らを戒めていることがうかがえる一文です。
うちの上司はいつも気楽に「目標達成が至上命令」なんて言うけど、実際は「言うは易く行うは難し」だ
気楽に口にしないでほしい…という本音がのぞく表現です。行動が伴っていないと感じている裏の意図も読み取れます。
わたしはこの仕事を自ら引き受けた。「言うは易く行うは難し」と言われないように頑張るぞ
自ら引き受けた仕事を途中で投げ出さないために、自らに活をいれるために使った例文です。
類語や⾔い換え表現にはどのようなものがある?
「言うは易く行うは難し」の類語や言い換え表現を見ていきましょう。
口自慢の仕事下手
「社交好きで喋るのは得意だけど、仕事をさせるとさっぱりできない人」のことを指しています。江戸時代からすでに使われていた言葉で、「口達者は信頼できない」という意味もあります。
口では大坂の城も建つ
「口ではどんなに立派なことを言えても、実際に大阪城を建てるとなると大変である」という意味。大阪城の歴史も垣間見えることわざです。
机上の空論
「どんなに立派な考え方や理屈だとしても、実際に現実の世界で通用しないものは意味がない」ことを表しています。「言うは易く行うは難し」と若干ニュアンスが異なり、行動に移せない理屈は意味がないこと、実際に行動することの難しさを表しています。
「言うは易く行うは難し」の対義語は?
では今度は反対に、「言うは易く行うは難し」の対義語を見ていきましょう。「行う」ことが大切であることを際立たせる言葉です。