【登場人物】
あん（私）…メーカー勤務のシングルマザー。7年前に離婚し、実家に出戻り。38歳。
息子…生意気盛りの小学生。10歳。
Oくん…今彼。会社の後輩・Kくんの大学の同級生。33歳
Rさん…元彼。Hくんと同じ会社に勤める42歳。結婚歴はナシ。
Hくん…学生時代からの飲み友達。あんの恋愛復活に協力。
Sくん…Hくんと同じ会社に勤める、バツイチ子なしの39歳。離婚理由は浮気。
Cちゃん…会社の同僚。33歳。
Kくん…会社の後輩。25歳。
【前回までの話】
40歳を目前に控え、「私、このままシングルでいいの？」と、ふと我に帰った私。再度恋愛に挑もうと、学生時代からの友達Hくんに紹介してもらったRさんとお付き合いすることに。お互いの”譲れない家族”の存在を確認した上で付き合うことになったのだが、Rさんのお母様や、元カノの存在、そしてRさんのきれい好きと、ちょっとしたわだかまりがあんの中で溜まっていく。そんなある日、会社の後輩Kくんからキャンプのお誘いが。Kくん、その友達のOくん、同僚のCちゃんと息子でデイキャンプに。その日の夜にはRさんと約束があったが、発熱しコロナが疑われたためキャンセルに。しかし心配だったあんは救援物資を持ち自宅ドアの前まで行くと、部屋の中から女性の声を聞いてしまう。悩んだあんはRさんに連絡し、胸の内を伝えると、Rさんから「別れよう」と言われてしまい…。Rさんと別れた後、会社帰りの私に毎週会いに来たOくん。そのOくんからクリスマス前々日に誘われ、”事実恋愛”という形のお付き合いがスタートするー。
不安定な気持ちを支えてくれるのは今彼？それとも元彼？
こんにちは。シングルマザーのあおいあんです。前回は母のガン宣告により失意のどん底にいた私。そんな苦しい中、私の中でOくんの存在が大きくなっていることに気づいたところまでお伝えしました。
LINEを開いてみると、元彼のRさんからメッセージが届いていた。
Rさん「突然連絡してごめん！ Sから聞いたんだけど、お母さんの具合大丈夫？ 心配になって連絡したけど、あんが大丈夫ならそのままスルーしてくれていいから」
Sくんのお喋り！ 弱っているときにこういうメッセージ、余計辛くもなるし、でも寄りかかりたくもなっちゃう。
私「お母さんが癌になって…。これから治療の方針とか決めるらしくて。具合悪かったことも気づかなかったし、何も力になれなくて」
Rさん「そうなんだね。辛いのに話してくれてありがとう。僕の母も癌を患ったことがあるから、あんの気持ち痛いほど分かるよ。自分が無力だなって感じちゃうよね。医療的なことはお医者さんに任せて、あんは毎日お母さんに笑顔を見せるといいと思う」
私「お母様も癌だったんだ。知らなかった…。専門的なことは分からないし、私は家事とか生活を支えることしかできないと思う。笑顔頑張ってみるね。ありがとう」
Rさん「無理しすぎないようにね。こういう時、あんは自分を押し殺して我慢し続けちゃうから。息子くんもいるし、爆発しない程度に頑張って。何かあれば愚痴でもなんでも聞くから」
私「ありがとう。ちょっと楽になったよ」
私のことをこんなにも理解し、心配してくれる人をどうして責めてしまったんだろう。なんでもっと上手に関係を築けなかったのだろう。さっきまでOくんを心の拠り所にしていたのに、Rさんからのメッセージで心が揺れ動いてしまう。元彼と今彼を天秤にかけているみたいで、自分に嫌気がさした。
なんとなくRさんとのLINEに罪悪感を感じ、Oくんへ電話はせずLINEで「疲れたから今日はもう寝るね。おやすみ」のメッセージだけ送った。次の日もその次の日も、Oくんと電話で話すことはなく、LINEのメッセージだけで会話をしていた。Rさんからの連絡で、Oくんへの依存度が薄くなったからかもしれない。
Oくんの出張4日目。母の現状について段々と気持ちの整理がつき始めた私は、会社でも日常を取り戻しつつあった。
この何日か引きこもりのように、ランチは出かけず会社でひとりお弁当を食べていた私。久しぶりに同僚のCちゃんとパスタを食べに会社の外へ。
Cちゃん「お母さん、その後具合どう？」
私「今すぐ入院とか、悪化することはないみたい。年だし、進行も遅いんだって」
Cちゃん「そうなんだね。何か手伝えることあったら言ってね。」
私「ありがとう」
Cちゃん「そんな大変な時にアレなんだけど、噂で聞くより先にちゃんと伝えようと思って」
私「何？かしこまって」
Cちゃん「実は彼氏ができました」
私「えぇー！いらないって言ってたのに。でもよかったね。相手、私の知ってる人？」
Cちゃん「それがね…Kくんなんだよね」
私「な～んだ。よかったね」
Cちゃん「驚かないの？」
私「全然！KくんはCちゃんのこと気に入ってたと思うよ。だから私たちのことキャンプに誘ったと思ってた」
Cちゃん「そうなんだ。推ししか見てない生活していたから、全然気がつかなかった。でね、Kくんがポロッと喋ったんだけど…Oくんの世界一周って、その当時付き合っていた彼女に振られたからなんだって」
私「何それ!? 傷心旅行ってこと？面白すぎるんだけど」
Cちゃんの嬉しい話や、Oくんの面白話を聞いて久しぶりに心の底から笑えた時間だった。その後もなんだか楽しく仕事ができ、やっぱり笑うって大切だななんて思っていた。終業時間になり、Cちゃんと会社を出るとそこにはOくんが待っていた。
私「えっ!? 出張明日までだよね？」
Oくん「うん。でも心配で早く終わらせて戻ってきた」
Cちゃんは手を振りながら駅へ向かって行った。
私「ありがとう。おかえりなさい。びっくりしたよ」
Oくん「思ったより元気そうでよかった」
私「今日、久しぶりにCちゃんとランチへ出かけたら、嬉しい話と、面白い話が聞けて元気出てきたんだ」
Oくん「そっか。それならよかった。出張中、電話で話せなかったからずっと落ち込んでるのかと思って心配だったんだ」
私「あぁ…そうだね。話せるほどの元気はなかったのかも」
RさんとのLINEを思い出し、罪悪感が蘇り曖昧な返事をした。そして一緒に駅へと歩き出した。
私「そういえば、今日聞いた面白い話聞いてくれる？」
Oくん「なに？」
私「Oくんの世界一周って傷心旅行だったんでしょ!?」
ちょっと意地悪く聞いた私に、「なんだよそれ～」と返事が返ってくるはずだったのに…。
あおいあん
契約社員でメーカー勤務、現在38歳のシングルマザー。高学年になりちょっと生意気になった10歳の息子と実家に出戻り。40歳を前に「もう一度、女としての人生を！」と一念発起。離婚をしてから7年という恋愛ブランクを埋めるべく奮闘中。
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