公演のことだけでなく、綾さんの現在や未来のお話も。取材会で語られたあれこれ
スカパー!などで視聴できる「時代劇専門チャンネル(CS292)」。数々の時代劇の名作が24時間365日見られるチャンネルで、毎週月曜日22時より放送されているのが「華麗なる宝塚歌劇の世界〜Season5〜」。宝塚歌劇の日本物作品だけを厳選して放送しています。
さらに、ご自身も宝塚歌劇ファンとしておなじみの、フリーアナウンサーの中井美穂さんが案内役を務め、宝塚歌劇OGをスタジオゲストやコメントゲストに迎えるナビゲート番組も!
9月は、2018年雪組全国ツアー公演『誠の群像』-新選組流亡記-をピックアップ(9月18日(月・祝)22:00ほか放送)。スタジオゲストに、沖田総司を演じた元宝塚歌劇団男役スター・綾 凰華(あや・おうか)さんを迎え、作品にまつわるエピソードをいろいろうかがっています。
番組収録後に綾 凰華さんの取材会が行われ、番組では語りきれなかった『誠の群像』-新選組流亡記-公演時の綾さんの想いや、綾さんご自身のことなどをお話いただきました。
前編を読む
『誠の群像』-新選組流亡記- 全国ツアーでの思い出
『誠の群像』-新選組流亡記-は、誠を貫いた幕末の武士たちの生き様を描いた日本物の作品。重いテーマではあったと思いますが、気持ちの切り替えはどんなことをされていましたか?
綾さん(以下敬称略):この作品は、私にとって初めての全国ツアーでした。以前在籍していた星組でも行ったことがなく、初めて経験して、「全ツってこんなに大変なんだ」と思うと同時に、いろいろな所に行けて各地のおいしいものを食べられて楽しかったですね。オンとオフがくっきりしていました。ツアーの途中で望海さん(当時の雪組トップスター・望海風斗)から沖田の家紋が入ったお守りをいただき、いまでも大事に持っています。
公演での思い出深いエピソードはありますか?
綾:毎日、自分が出ている場面を舞台袖で録音していたのですが、レコーダーに、あるときからご当地ストラップがひとつずつ増えていくんです。レコーダーを回収する際に、りんごやらずんだやら、その土地その土地のストラップが最終地まで増え続けていきました。ずっと「誰なのーーーー!?」って言ってたら、なんと犯人はりーしゃさん(透真かずき)。りーしゃさんに「誰だと思います?」って聞いたときは「えー、すごいねー、誰だろー」とか言ってたのに(笑)。雪組に組替えしてすぐの頃だったので、そうやって少しずつ関係を築いていけているのがすごく楽しかったです。
収録では沖田総司の役作りについて話されていましたが、他の役も含め役に入る準備はどんなことをされていますか?
綾:役が自分の中に入っていないとセリフがまったく言えないんですよ。例えば『CITY HUNTER』-盗まれたXYZ-(’21年 雪組大劇場公演)で演じた槇村は、アニメでは素敵なイケメンボイスで、私には絶対に出せない声。自分の中で槇村を咀嚼し、自分なりの槇村が表現できるようになるまでは手探りでさまよう感じです。
この作品は幕末の武士の「誠」を描いていますが、綾さんにとって貫きたい「誠」はどんなことですか?
綾:大切にしていて失って怖いものは“人とのつながり”。もしかすると(沖田)総司もそうだったかもしれないです。自分のためにやっているような仕事であり、でも人のためにやっているような仕事。だからこそ決して独りよがりではなく、人とのつながりの上でやることが大事だなと。自分の心を大切にするのと同じくらい、まわりにいる人たちの心にも気持ちを寄せていきたいなと思っています。
来年は雪組100周年! 在籍していた雪組について思うこと
綾さんが思う雪組の特徴や、雪組で得たものを教えてください。
綾:みなさん、すごくしっかりしていらっしゃるんです。舞台に対しても緻密に考えている方が多く、本当に勉強になりました。お心遣いや気配りが丁寧です。あとは、ストイックレディたちばかりでした。在団中は、そんなみなさんと何度も一緒に舞台を作って、当時の考えが根付いているからこそ、今の自分があると思っています。
今の雪組へのエールをお願いします。
綾:在団中のように毎日会えるわけではないですが、みんな宝塚歌劇団で頑張っているんだなと思うと、私も頑張ろうと思います。会えなくてもつながっているから。私は、今はただの「雪組大好き人間」なんですよ(笑)。先日観たショーでも、『すみれの花咲く頃』のラテンアレンジの中詰で思わず立ち上がりそうになりました。楽しくてカッコよすぎて!
舞台はもちろん、映像やファッションの仕事も意欲的に!
宝塚歌劇団を退団されていろいろな舞台を体験されていますが、違いはありますか?
綾:まずかかわる人が違うので、全部違いますね。でもプロセスは一緒です。タカラヅカでは男役でしたが、今は女役も演じています。マインド的にはあまり大きな変化はなかったのですが、共演者の方に「あ、今のしぐさはちょっと男性っぽいね」と言われることがあり、「そうだ、私って男役だったんだ」と思うときはあります。
男役としての経験をこれから生かせる場所はあるでしょうか?
綾:あると思います。男役って特殊だからこそ苦労する部分もあり、逆にこれからの武器になることもあると感じています。そこは自分次第かな。たとえば『大奥』とか、男女逆転で描かれている作品もありますし。ただ、宝塚歌劇の男役はタカラヅカがあってこそ成り立つもの。宝塚歌劇という世界の中で、娘役さんやスタッフさん、ファンの方がいてこそ生きられるのが男役だと思っています。退団して「男役」っぽい役をやる機会があっても、それはまったく別物というのが私の考えですね。
これから挑戦してみたいことを教えてください。
綾:退団して1年が経った今でも、なんでも挑戦したいという想いは変わりません。その中でも、自分の心がときめいて情熱が燃えるもの、そして新たな出会いにつながるものを大切にしていきたいなと思っています。最近ファッションにかかわる仕事もさせていただき、とても楽しかったのでこれからも携わっていきたいですね。モデルもやってみたい。
演じる仕事はいかがですか?
綾:タカラヅカと異なり、毎回違う現場で新しい人に出会うたびに、やっぱり人間同士で作るものって本当にすごいなと心が震えます。その中で、自分ではない人生を生きることは、なにごとにも代えがたいほど面白いこと。なので、いろんなお芝居に出てみたいです。経験したことがないのが、映像のお芝居。ドラマと映画の作り方も違うと聞きますし、どんな感じなんだろう。学んでみたいですね。もちろん、舞台も好きです。限られた時間で毎回同じように演じながら、でも毎回違うことをしている。生きている感覚がリアルに伝わってくるので、生モノの舞台は続けていきたいです。
どんなジャンルが気になりますか?
綾:心情描写があるもの。でもアクションにも挑戦してみたいです。日本物の経験を経て立ち回りが大好きになったので(笑)。人を知ってなにかを作ることがシンプルに楽しいので、これからもクリエイティブなことは続けていけたらと思っています。
今度出演されるミュージカル『アンドレ・デジール 最後の作品』では母親の役ですね。
綾:そうなんです。楽しみにしていてください。みなさんが思い描いている母親ではないかもしれない。「あ、そういう演出なんだ!?」という意外な感じ。自分自身、母親になったことはないので(笑)、いろんな想像をして演じたいと思っています。
ファッション、マイブーム、インテリア、食べたいもの。綾さんの現在は?
ファッションブランド「STAIRWAY」を立ち上げられて、この秋、綾さんが注目しているアイテムはありますか?
綾:帽子がほしいです、秋らしいものを。パリジェンヌっぽい丸い形の帽子が気になっています。出かけるときはだいたいバケットハットをかぶっちゃうので、かわいいのがいいな。あとはプリーツスカートですね。
「命をかけて生きる」新選組にちなんで、今綾さんが命をかけているものはありますか?
綾:稽古に必死です。タカラヅカで10年、卒業してから1年くらい舞台に立たせていただいていますが、毎回必死です。集中するときはする、オフのときは頭を真っ白にして肩の力を抜くというのを意識して、稽古しています。
綾さんのお部屋のイメージを教えてください。
綾:私、本当にモノが少ないんですよ。そんな中、テーブルを買い替えることにしました! 白くて高さ調節ができるから、ソファにも合わせられるダイニングテーブルとして使いたいと思っています。天板に熱いものがそのまま置けるというのが特徴で、ココットとかでなにか作ってみんなでごはんしたいなー、なんて思ったり(笑)
暑い日が続きますが、綾さんが暑い日に食べたいもの3つを挙げてください。
綾:アイスクリーム、かき氷、イチゴあめ! 甘くて冷たいものが食べたいです。
プライベートで秋にやりたいことはありますか?
綾:紅葉を見に行きたいです。パワースポット的な、晴れやかな場所が好きなことに気づいて、京都の静かなお寺や神社を巡りながら紅葉を楽しみたいですね。今年は夏らしいことがまったくできなかったんです。あ、でもお稽古の合間に弾丸で海には行きたいと思っています。日焼けに気をつけないと(笑)
美しい浴衣姿で朗らかに話される綾さんは、愛される方そのもの。繊細さの中に熱さがたぎる沖田総司も、愛される人だったと言います。そんな想いをリンクさせながら、番組もお楽しみください。
番組情報
【華麗なる宝塚歌劇の世界~Season5~】
『誠の群像』-新選組流亡記-(’18年雪組 全国ツアー)
出演:望海風斗/真彩希帆/彩風咲奈 ほか
※前後解説付き ゲスト:綾 凰華
放送日時:9月18日(月・祝)22:00~/10月2日(月)22:00~
番組解説
武士としての誠を貫き戦い抜いた土方歳三の生き様と、彼と共に時代を生きた人々の姿を描く。
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撮影/田中麻以 ヘアメイク/塚原ひろの(ete) イラスト/春原弥生 構成・文/淡路裕子
<前編を読む>
雪組公演『誠の群像』-新選組流亡記- 公演当時のエピソード! 綾 凰華さん出演の【時代劇専門チャンネル「華麗なる宝塚歌劇の世界」】収録レポート