Summary
- 「ご送付」は送る行為に敬意を示す言葉で、相手・自分で敬語の種類が変わる。
- ビジネスでは書類・商品・データ送信まで幅広く使われる。
- 「ご送付させていただきます」などの二重敬語はNG。
ビジネスメールのやり取りの中で、よく目にする「ご送付」という言葉。書類や商品、データのやり取りをお願いしたり、お礼を述べたりする際に使われますが、実は正しい意味や使い方を理解していないと、知らず知らずのうちに相手に違和感を与えたり、敬語の誤用と受け取られてしまいかねません。
本記事では、「ご送付」の正しい意味から、場面別のメール例文、敬語の注意点、さらに英語表現まで、事例とともに分かりやすく解説します。
ご送付の基本知識と正しい意味
まずは「ご送付」という言葉の骨格を理解するところから始めましょう。
「ご送付」とは何か?
「ご送付」は、「品物や書類などを送り届ける」という意味の「送付(そうふ)」という言葉に、丁寧な気持ちを表す接頭語「ご(御)」がついた言葉です。この「ご」は、相手の行為を高める尊敬語として使う場合と、自分の行為をへりくだる謙譲語として使う場合があります。
相手が送る場合(尊敬語): 「(お客様が)ご送付くださる」
自分が送る場合(謙譲語): 「(私が)ご送付いたします」
このように、誰が「送る」のかによって敬語の種類が変わるのが、「ご送付」を使いこなすための最初の、そして最も重要なポイントです。
日常業務で使われる背景と場面
「ご送付」は、ビジネスのさまざまなやり取りで頻繁に登場します。特に以下のようなケースです。
・契約書や見積書など、紙媒体の書類を送ってもらうとき
・商品サンプルや販促物など、物品の郵送や宅配に関する依頼やお礼
・請求書や領収書など、経理処理に必要な書類のやり取り
・PDFや写真データなど、メール添付・オンライン上での送信にも使用可能
近年では、物理的な郵送に限らず、メールやクラウド経由の「ファイル送信」にも「ご送付」が使われるようになっており、ビジネスのデジタル化とともに用途が広がっています。

「送付」との違いと使い分け
「送付」は単なる事実を述べる中立的な言葉で、敬語表現ではありません。一方、「ご送付」は相手の行為を敬って表現するため、フォーマルな場面や社外宛ての文章に適しています。
【使い分けの例】
〇(対社外):「〇〇様、本日、契約書をご送付いたしました」
△(対社内):「(上司に)〇〇の件、先方へご送付いたしました」
→ この場合、「送付いたしました」または「お送りしました」がより自然です。
〇(社内報告):「A社宛の請求書送付が完了しました」
このように、「ご送付」は単なる丁寧な響きではなく相手の行為への敬意表現であり、シーンによって正しく使い分けることが重要です。
「ご送付」は、相手・自分で尊敬語と謙譲語が変わる敬語表現。
ビジネスメールでの「ご送付」フレーズ活用法
ビジネスメールですぐに使えるフレーズを、お礼・送付・依頼の3つのシーンに分けて見ていきましょう。
「ご送付いただきありがとうございます」などお礼表現の使い方
これは、相手が送ってくれたことに対する感謝を伝える敬語表現です。何かを受け取ったら、まずは迅速にお礼を伝えるのが社会人としての基本マナーですね。
【基本例文】
・「この度は、〇〇の資料をご送付いただき、誠にありがとうございます」
・「早速のご送付、心より御礼申し上げます」
「ご送付いたします」など送付時の敬語例文とポイント
自分が相手に書類や資料を送る際の表現では、謙譲語としての「ご送付いたします」が適切です。この表現は二重敬語ではなく、「ご(お)~いたす」という謙譲語の基本形に従った正しい敬語です。
【基本例文】
・「ご注文いただいた商品の請求書を、本メールに添付にてご送付いたします」
・「先ほどお話しした会議の議事録を、別途ご送付いたします」
・「パンフレット一式を、本日発送にてご送付いたしました。到着まで今しばらくお待ちください」
「ご送付いたします」は丁寧で的確な表現ですが、相手との関係性によっては少し硬い印象を与えることも。より柔らかく伝えたい場合は「お送りします」も使えます。
「ご送付ください」など依頼時の表現バリエーション
相手に送付をお願いする際は、相手への配慮が特に重要です。「ご送付ください」は丁寧な命令形ですが、相手や状況によっては、一方的で強い指示と受け取られかねません。より丁寧で、相手が気持ちよく応じてくれるような表現を覚えておきましょう。
【依頼表現のバリエーション(丁寧さのレベル順)】
・基本:「お手数ですが、〇〇の資料をご送付ください」
・より丁寧:「恐れ入りますが、〇〇の資料をご送付いただけますでしょうか」
・さらに丁寧:「ご多忙の折、大変恐縮ですが、〇〇の資料をご送付いただきたく存じます」
・最上級の丁寧さ:「誠に恐縮ではございますが、〇〇の資料をご送付くださいますようお願い申し上げます」
依頼をする際は、「お手数ですが」「ご多忙の折、恐縮ですが」など、クッション言葉を必ずセットで使いましょう。これがあるだけで、文章の印象が格段に柔らかくなります。
ビジネスメールの件名・タイトルへの活用
多忙な相手は、件名だけでメールの重要度を判断します。誰から、どんな内容のメールなのかが一目でわかるように工夫しましょう。
・【契約書ご送付のお願い】◯◯株式会社 △△
・【ご送付ありがとうございました】見積書受領のご連絡
・【資料ご送付の件】Aプロジェクト進捗報告
【】(隅付き括弧)を使うと、用件が目立ち、相手の視認性が上がります。また、会社名や氏名を件名に入れておくと、誰からのメールかが一目瞭然です。相手のメールボックス内で埋もれないようにする、これも大切な配慮の一つですよ。
間違いやすい敬語・NG例とトラブル回避
丁寧に使っているつもりが、実は相手に失礼な印象を与えていたり、思わぬトラブルを招いたりすることも。ここでは、よくある失敗例とその回避策を学び、あなたのビジネスコミュニケーションの「守り」を固めましょう。

よくある二重敬語や誤用の具体例
よかれと思って使った言葉が、くどくどしい「二重敬語」になっているケースは少なくありません。スマートな印象を与えるためにも、シンプルな表現を心がけましょう。
【よくある間違い例】
・「ご送付させていただきます」
「ご送付(謙譲)」と「させていただく(謙譲)」が重なっており、冗長な印象を与えます。「させていただく」は、相手の許可を得て行うというニュアンスが強いため、場面によっては回りくどく聞こえることも。
改善例:「ご送付いたします」「お送りします」
・「資料をご送付されました」
「ご~される」は尊敬語の一つの形ですが、「ご送付になる」「送付される」の方が一般的です。相手の行為に使う尊敬語としては、不自然に聞こえる可能性があります。
改善例:「資料をご送付くださいました」「資料をお送りいただきました」


