朝帰りならぬ昼帰り!? 夫は根っからの勝負師だった
パワフルで魅力的な男性がギャンブル依存症だと知りながら、妊娠・結婚に踏み切った秋穂さん。(前回のストーリーはこちら)
でも、子どもが生まれるときに彼が誓った「もう一生やらない」という言葉は、依存症になった人の決まり文句だと、秋穂さんはその後だいぶ経ってから知ることになる。
「依存症外来の家族の会に相談に行って、教えてもらいました。子どもがいようがいまいが、彼にとっては関係ないんです。実際、二か月後にはギャンブルを再開していました。
たとえば、土曜の午後から24時間営業の雀荘に行ったきり、翌朝…というか昼まで、帰ってこないんです。で、こっちは寝かしつけで大変なのに、悪びれることもなく深夜にLINEで『こんなに勝ってる!』みたいなことを無邪気に送ってくる。
『勝っているときには何を犠牲にしても賭け続けなくてはならない』という強いポリシーがあるようで、実際、負けているときにはあっさり帰って来ることもありました。でも彼は頭がよくてギャンブルがとても強かったので、結果的に土日はほとんど家にいないという状況が続いて…。『一生やらない』と言っていたのはなんだったんだ!? と思いましたね」
妻子が体調不良で苦しんでいても、夫はギャンブル優先
いちばんイヤだったのは、秋穂さんと娘さんがインフルエンザにかかって苦しんでいたときのこと。
「彼は家にいたんですが、ずっとオンラインカジノに熱中してるんです。『お水とって』『薬もってきて』などと小声でしか言えないくらい弱ってるのに、気づいてくれない。同じ家にいるのに、LINEでお願いしてようやく気づいてもらえるという始末。すごく悲しかったです。
一緒に暮らしているのに、家にいないとか、体調が悪いときに助けてもらえないとかって、ジワジワと自尊心を傷つけられるんですよ。『彼は悪意があってやっているわけではない』『依存症だから仕方がない』と自分を納得させようともしたけれど、彼のそうした行動は『私はそういう扱いを受けて当然の人間なんだ』というメッセージとなって私を傷つけ続けました」
「夫が帰ってこなくてもいいかも」と思ってハッとした
「ギャンブル依存症であること以外は憎めない人でしたし、周りからも仲のよい家族に見えていたと思います。
なんとか家族としてやっていこうと、『土日のどちらかは家族全員で一日過ごす』など、実現可能なルールをつくるために夫婦で話し合いを重ねました。家事の分担表もつくって、表にまとめて可視化もしました。思いやりを持ってほしい、といった表現ではなくて、できるだけ彼がわかりやすいように、私の要望を具体的な行動に落とし込んでお願いしたんです。でも、そのルールも翌週には破られてしまうということを繰り返していました」
そして、結婚生活4年目にして、秋穂さんはガマンの限界を超えてしまった。
「例によって朝になっても彼が帰ってこなかったある日、一瞬『いつもより帰りが遅いな。もういっそこのままずっと帰って来なくてもいいかも』と思っちゃったんです。『こんなふうに思っちゃう人と一緒にいちゃダメだ! まずい!』と思いました」(次に続く)
取材・文/酒井亜希子(スタッフ・オン)