【目次】
愛していた夫の危篤の知らせ。
愛する夫がアルコール依存症になり、共依存状態が苦しくて離婚した望さん。再び愛しあえる男性と巡り合い、同棲を始めた頃に、元夫が危篤だという連絡を受け取ります。
前回のお話はこちら▶︎半年経っても手も握らない彼!アラフォーで念願の再婚をするまで
望さん:元夫の再婚相手はあまり英語が話せないということで、私が彼の家族たちとの連絡役に。アメリカから飛んできた彼の姉妹を空港に迎えに行くと、彼女たちは、元夫が再婚していたことも知らされていませんでした。「彼には奥さんがいるから、私の立場ではできることとできないことがある」と伝えたのですが、言葉のこともあるし、彼女たちは私にすべて頼りたい。彼の奥さんと家族の間で、板挟みのような状態になりました。
病院では、かつて愛していた夫のAさんは生命維持装置をつけられていてすでに意識はない状態。初めて会った彼の奥さんからは、「夫はあなたの幸せをいつも願っていました」と言われました。
たくさんの人から愛されていた人気者のAさんなので、知り合いのみんなに危篤だということを知らせたいのに、新しい奥さんは彼の友人を誰も知らないという状況。そこで望さんは彼の親しかった友人や恩師に面会に来てもらい、Aさんの妹は、Facebookで「兄が今、病院で危篤状態にあります。彼にメッセージを届けたい人は、こちらにメッセージをいただければ私が兄に伝えます」と投稿。次々にメッセージが集まってきました。
夢の中で彼とお別れして、再婚へ
そんな状況下でも、望さんは現在の奥さんに気を使い、自分だけは彼に会わずに自宅に帰ることにしたのですが、帰宅後、妹から連絡があったそう。
望さん:妹がFacebookに集まった彼へのメッセージをベッドの上の彼に読み上げたときに、私のメッセージを読み上げたら、「兄が歯をすごく食いしばっていた」って。
その数週間後、彼の危篤状態が続く中、望さんの夢にAさんが出て来ました。夢の中で望さんは、今の彼であるBさんをAさんに紹介していました。
望さん:母に、「Aが夢に出て来たから、ミラクルが起きるかもよ」と話したのですが、彼はその日に息を引き取ってしまいました。あとから、母はその話を聞いたとき、彼が私にお別れを言いに来たんじゃないかと思っていたと聞きました。
望さんと結婚したタイミングで、自分と母親との問題に向き合わないといけなくなったAさん。そして望さんは望さんで、弟さんの死という出来事と向き合わないといけなくなって、夫婦でお互いの人生の課題なようなものに取り組み続けた結婚生活。―それを聞いて、私は、「このふたりはきっとソウルメイトだったんだろうな」と感じました。
ソウルメイトとは、一緒に居るとパズルのピースがはまったかのような完璧な一体感や多幸感を味わえるけれど、その反面、お互いの乗り越えないといけない課題を見せつけられる相手なのではないかと、いろいろなご夫婦のお話を聞いていて思うようになりました。
愛し合っている相手だからこそ、自分の見たくなかった、奥底に眠っている本質までもが引きずり出されてしまう。そういうものなんじゃないかと。
離婚してからも、実は知らずに新しいパートナーとお互い同じ駅に住んでいたというAさんと望さん。別れてもふたりの人生はクロスしながら繋がっていたのですね。
―そしてAさんが亡くなって少し経ってから、望さんはBさんと結婚することになりました。
不思議な縁を感じる再婚相手との穏やかな結婚生活
相変わらず結婚には興味がなかった望さんですが、意外と保守的なタイプだったBさんが結婚を意識しだして、ちゃんと指輪を買ってプロポーズしてくれたのです。
望さん:子どもは欲しかったけれど、前の夫ともできなかったし、年齢も年齢なので「子どもはできないかもよ」と言ったんですが、「ふたりでいられればそれでいい。子どもはボーナスのようなものだし、できなかったら養子をもらえばいいよ」って言ってくれました。
理想のパートナーの条件が、一緒に里親になってくれる人だった望さん。日本人で養子縁組に理解がある人はなかなかいないだろうと思っていたので、彼の言葉に「これは運命だ」と感じたといいます。
望さん:緊張したのは、彼のご両親に会いに行くときでした。彼の実家は田舎にあるので、「大事な息子をバツイチにやれるか!」って言われるんじゃないかってドキドキ。でも彼が、「望に離婚歴があることは言ってあるし、結婚は俺の問題なんだから大丈夫だよ」と言ってくれて。結果、向こうのご両親も「ふたりが幸せならそれでいい」と、彼のお姉さんも「Bはもう42だからお嫁さんが来てくれるとは思ってなかった!」と喜んでくれました。
前の夫のAさんとは正反対の、普通の愛情深い家庭で育って穏やかな性格のBさん。結婚してから夫の話をすると、みんなに「そんなに優しい男が居るわけない」と言われるくらい、優しい旦那様。
望さんの父が癌で亡くなってからは、彼の方から「お母さんと一緒に住もう」と言ってくれて、親との同居に抵抗感があった望さんに同居を促してくれたとか。以前は愛情表現も薄かったのが、結婚してからはこちらから「愛してるよ」と言うと、向こうからも毎日言ってくれるようになりました。
愛しているからこそ、お互い妥協点をみつけて譲り合ったり合わせてあげたり、受け入れたりできるのですものね。「前の夫とは、それができずに譲れなかったから頑固だって言われてたんです。だけどいろんな経験を経たから、今は夫の意見を受け入れて、聞いてあげるようにしています」。
望さん:だけど私、彼の年収も知らないんですよ。彼の収入をあてにしたことがないから。でも彼は「男が養うものだと思ってる」って言うから、「私はそんなこと思ったことない」って言ったのも、結婚を後押ししたのかもしれません。
25年以上も、お互い共通の知り合いがたくさんいながら、40歳を過ぎてから巡り会えたふたり。
望さん:タイミングが整ったとき、現れたのが彼でした。弟のバスケ仲間とも繋がっていたりして、不思議な縁を感じます。結婚なんてしないと思っていた私が、2度も人生を共にしたいと思い思われる相手に出会えたなんて。本当に私は、幸せ者だと思います。
インタビュー・文
さかい もゆる
出版社勤務を経て独立。と思った矢先、離婚してアラフォーでバツイチに。女性誌を中心に、海外セレブ情報からファッションまで幅広いジャンルを手掛けるフリーランスエディター。Web Domaniで離婚予備軍の法律相談に答える「教えて! 離婚駆け込み寺」連載も担当。著書に「やせたければお尻を鍛えなさい」(講談社刊)。講談社mi-mollet「セレブ胸キュン通信」で連載中。withオンラインの恋愛コラム「教えて!バツイチ先生」ではアラサーの婚活女子たちからの共感を得ている。