CAのセカンドキャリア支援事業は、かつての自分自身の悩みや迷いからの発案。ハードな毎日は趣味の〝お能〟でリセットします。
今月の女:駒崎クララさん
(株)KoLabo 代表取締役社長・35歳
転職希望者にとって、役立つ自分でありたい
〝キャリアの踊り場〟――何か大きな目標が達成されたとき、幸福を感じながらも次のステップが見えずに不安にとらわれる。キャリアの階段をひとつ上った人が経験する心理状態。駒崎さんも、そんな不安に揺れたひとりだ。
「目ざしていたCAになり、フライトや業務にも慣れて幸せを感じていました。けれど、そこからどう成長していくかが見えずに、モヤモヤ悩んでいたんです。そんなときに自分のメンターとなる方と出会い、コーチングを受けたことで、今後自分が人生をかけていきたい仕事が明確になっていったんです」
この経験から、駒崎さんは自分と同じようにセカンドキャリアに悩むCAの支援事業を思いつく。空の上という特殊な労働環境にあるだけに、体調維持や将来の出産、時差のある生活をひとつの壁ととらえて、ある年齢以降、第二の人生を模索する人は少なくない。そのサポートをしたいと、退社後に起こした会社でまず始めたのは、現在CAであることを楽しみ、モチベーションを高めるためのCA専門の情報共有サイトだ。翌年には、キャリアチェンジに悩む彼女たちに寄り添いながら支援する、転職サポートサービスを開始。
「彼女たちの面白いところは、主体的でありながらも、職業柄、さまざまな国の文化やルールを受け入れてきた懐深い柔軟性。面接同行の際には、その魅力を短時間でいかに効果的にプレゼンできるのか。そこが、自分の中でのひとつの課題だと考えています」
そう語る駒崎さん自身は、決してアグレッシブな営業ウーマンタイプではなく、語り口調もおっとりとやわらか。最近、趣味でお能を習い始めたという。
「お能の仕舞の際に、無になれる瞬間を味わえるのが、今いちばんの楽しみです。仕舞には細かな決まりがあるのですが、実は私、ルールや規範みたいなものにハマるのがとても好きで。幼少期に両親と航海する生活を経験したからかもしれません。港に着くたびに文化も言語も異なる土地で、そこに自分をフィットさせることにうれしさを感じていました。人に対しての好き嫌いもほとんどなく、そういった部分でも非常にフラットなんだと思います。でも一方で、〝私にとってのあたりまえ〟は、人にとっては決してそうではないことにも注意を払っています。一度メールでお互いの意図がいきちがってしまったことがあり、それ以降は文字だけでなく、電話でニュアンスをフォローすることも覚えました」
今は人とつながることのできる人が、社会の中でポジションをつくっていける時代。人とのつながりに対する繊細さをもっていることが、彼女の最大の強みなのかもしれない。
こまざき・くらら/1982年、兵庫県生まれ。5歳から10歳まで約4年間、両親とともにヨットで地球を2/3周する航海生活を経験。10歳で帰国。神田外語大学外国語学部を卒業。アシアナ航空に新卒入社し、客室乗務員として7年半勤務。米国でマスタービジネスコーチ資格を取得後、29歳で起業し、CAに特化したSNSサービス『CREW WORLD』やCAのセカンドキャリア支援を展開。2017年よりCAの起業支援も新たにスタート。
Domani2018年2月号『女[独身]、妻[既婚子供なし]、母[子供あり]Catch! 働くいい女の「木曜13時50分』より
本誌撮影時スタッフ:撮影/真板由起(NOSTY) ヘア&メーク/今関梨華(P-cott) 構成/谷畑まゆみ