誰もが笑えるコロッケさんの面白さと元宝塚歌劇団男役スター・七海ひろきさんのカッコよさが交互に押し寄せてくる贅沢なステージ!
最初に言っておきます。これは絶対に観た方がいい。とにかく満足度が高いステージでした。まさに究極のエンターテイメント! このステージの出演者が発表になった時、「コロッケさんと七海ひろきさんが!?」と驚いた人も多かったと思います。が、観てみたら意外にも好相性でした。
まずは共通点。明治座でしばしば行われるレジェンド芸能人のステージを何度か観たことがありますが、「1部お芝居、2部ショー」と、まさに宝塚歌劇の基本ステージと同じ。もちろん今回もその形式で、1部ではコロッケさんが弁慶役で七海さんが源 義経役のお芝居『令和千本桜 義経と弁慶』。2部はコロッケさんのものまねショーと七海さんの胸キュンミニショー。そして、これはどんな舞台にも言えることだと思いますが「お客さまをとことん楽しませる」というエンターテイメントの精神。自分の得意分野に振り切れたおふたりだからこそ、相乗効果を発揮してさらに魅力が爆発したステージになったのかも!?
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お芝居の『令和千本桜 義経と弁慶』は、ふたりの五条大橋での出会いから奥州平泉の最期までのストーリーに、現代的な歌と踊りを入れ込んだ構成。最初の五条大橋のシーンから、観客の度肝を抜く義経(七海ひろきさん)のフライング! 弁慶(コロッケさん)と対面して名乗りと立ち回り、さらにふたりの衣装には蛍光の電飾のようなものが仕込んであって暗闇で光り、とにかく迫力満点で一気に視線を奪います。
▲「フライングは初めてだったけど、高いところが好きなので楽しめた」と七海さん。北島三郎さんのステージでフライングを経験したコロッケさんが、コツを教えてくれたそう。コロッケさんいわく「体幹が違う。2回目くらいからもう形になっていた」。
最後まで義経と運命を共にした従者は、伊勢三郎(高橋健介さん)、駿河次郎(蒼木 陣さん)、片岡八郎(日向野 祥さん)、喜三太(すわいつ郎さん)。義経軍のキメポーズ、見応えのある殺陣シーン、それにコロッケさんならではのお笑いシーンが入ってきて、とにかくリズムがよくて間延びすることなくのめり込めちゃうんです!
▲一ノ谷の戦いに勝った後の義経軍そろい踏み! 現代的なディテールを取り込んだ衣装も洒落てます。
▲スローモーションでの立ち回りもあり、それが全然ぶれていなくて圧巻!「時代劇の殺陣と違って剣舞だから動きが速いんですよ。若い男の子たち(従者役の高橋健介さんら)はいつも舞台でやっているから慣れているけれど、義経は大勢の相手をしなければいけないから大変でしょう」とコロッケさん。七海さんは宝塚歌劇団時代に殺陣は経験していたものの、今回は動きがまったく違うので何度も練習したそう。
▲弁慶の武器はなぎなた。刀より長いため扱いが大変!
ちょいちょい入ってくるコミカルシーン。これがあるからこそカッコいい場面とのメリハリが生きて、ワクワク感が爆発するわけです。幅広い年齢の方が観にきている公演ですが、老若男女楽しめるコロッケテイストはみんなが笑顔になりますよね。
▲コミカルシーンはコロッケさんも演出に関わっているのだとか。やっぱりそこは笑いのプロが作っているからこその完成度です。
▲静御前(矢島舞美さん)、源 頼朝(この日は上田堪大さん)の存在感も光ります。特に紅一点の静御前は、可憐さの中に芯の強さが見え隠れして…義経との並びがとにかく美!
話の流れを追いやすかったのは、それぞれの場面の説明をしてくれるストーリーテラーのような金売り吉次(武岡淳一さん)のおかげ。「歴史のことはよく知らないし…」という人でも、吉次の説明セリフに加え背景の地図で位置を把握でき、わかりやすく観られること間違いなしです。構えずに観られるお芝居で、75分があっという間でした。
お芝居とショーとの間には30分の休憩。明治座といえば人形焼など種類豊富なお土産が買える「明治座横丁」が魅力のひとつ。コロナの影響により試食販売やアイスクリームなどその場で食べるものは残念ながらありませんが、公演や出演者のグッズもずらり。ウキウキ感が増すので休憩中にのぞいてみても!
そしてショーの『コロッケものまねオンステージ 2021 ~40周年鉄板ネタ大放出!~』が始まります。コロッケさんが芸歴40年で積み重ねてきた鉄板ネタのオンパレード! 前説があり、手拍子やサイリウムで盛り上がります。まずオープニングのメドレーは、「若い方たちにも楽しんでいただけるネタを」と、DA PUMPの『U.S.A.』、BTSの『Dynamite』、EXILEの『Choo Choo TRAIN』とギャグを織り交ぜながらのものまねがもう、たまらぬ面白さ! 声を出して笑ってはいけないと思うものの、思わずちょっと声が漏れてしまいました。
▲「BTSのテテの親戚のイテテです。(『Dynamite』の曲で)♪HA HA HA HA サムゲタン」。そ、それは反則(笑)!!
▲こちらはふくよかになったEXILEのATSUSHIさん…?、と思いきや最後の挨拶は「亀田興毅でした」。
続いて、往年のファンも大喜びの“コロッケさんといえば!”の大メドレー。沢田研二さん、和田アキ子さん、ツイスト(世良公則さん)、近藤真彦さん、田原俊彦さん、河村隆一さん、森山良子さん、森山直太朗さん、平井 堅さん、そして美川憲一さん。誰もが笑えるネタばかりで、心の中は笑いの大洪水です。司会の方の進行も素晴らしくて、笑いが倍増。
▲ものまねをして「(ご本人から直接)怒られたことはないけれど、目の前で嫌な顔をされるんです。あと、ファンの人には怒られます。あははは」ということもあるそうですが、「美川さんには本当にかわいがっていただいて、衣装とか金目のモノをいただきましたよ(笑)」とコロッケさん。
そして、やってきました、スーパー七海ひろきタイム! サイリウムの光がさらに増し、会場の雰囲気がグッと華やかに。白の軍服風ロングコートで登場した七海さん、初っ端からKing & Princeの『シンデレラガール』で会場中の女性のハートをわしづかみ。シニアのお姉さま方も思わず前のめりになるほどのキラキラ感を撒き散らしています。王子様感がハンパない! 自身も声優として出演しているアニメ『かげきしょうじょ!!』のエンディングテーマ『星の旅人』も披露してくれました。
▲セットの数段の階段がまるで大階段に見える!? 「男役・七海ひろき」の姿がそこに!
コロッケさん×七海ひろきさんのトークタイムでは、顔の大きさが話題に。「遠近感があるわけではないですよ、横並びです」というコロッケさんの顔は、七海さんの倍はありそう(笑)。でもこの顔の大きさが、芸人としての武器ですよね。七海さん、「コロッケさんは本当に面白いですね、おなかが痛い…」と素で大笑い。ふたりで、七海さんの持ちネタ(?)である『スタイリッシュ体操』を行った後、コロッケさんは『武田鉄矢体操』を伝授。首だけの体操なので会場も一緒にやったのですが、首と肩のコリが解消されて意外にも実用的でした(笑)。
▲ひろき with コロッケの『スタイリッシュ体操』。会場がザワつくほどのイケボで「さぁみんな、スタイリッシュ体操を始めよう」と声をかける七海さん。
コロッケさんが40年前に生み出したというブルース・リーの『怒りの鉄拳』ネタ、野口五郎さんの4倍速『真夏の夜の夢』、長渕 剛さん風に歌う『香水』、玉置浩二さんと徳永英明さんの掛け合いの『ワインレッドの心』、ミスチル桜井さん、桑田佳祐さん、福山雅治さん、松山千春さんが歌い継ぐ『糸』と少しずつおいしいメドレーがあり、YouTubeでも話題騒然のロボット五木ひろしが! これ、ステージ上のビジョンだとコロッケさんの顔のアップが映るので細部までよく見え、すごさがわかります。顔も頭皮もやわらかくよく動き、感動するほどの完成度!
▲ロボット五木ひろしは一見の価値あり。これだけで¥3,000は出せます。「笑いだけでなく驚いてもらえるような究極のパフォーマンスを追求していきたいです」とコロッケさん。どこまでもものまねにストイックです。
その後のアンコールでは、美空ひばりさん、ちあきなおみさん、岩崎宏美さん、細川たかしさん、森 進一さんのおなじみメドレーを。小ネタが散りばめられていて、会場は飽きることを知らずボルテージは上がりっぱなし。森 進一さんと『エヴァンゲリオン』がコラボした「森ゲリオン」では再起動シーンを森 進一さんで再現。よくこんなことを考えつくなぁ…と思いつつ、コロッケさんの貪欲さに目を見張ります。
▲岩崎宏美さんの『シンデレラハネムーン』。コロッケさんのものまねを目にしたご本人はショックを受け、「あの歌はコロッケちゃんにあげるわ…」と言われたそう。いつか高橋真麻さん(『シンデレラハネムーン』が十八番)と競演してください(笑)。
最後は北島三郎さんの『まつり』で、出演者全員が舞台に上がって大団円。金テープも発射され、盛り上がりつつ75分のエンディングを迎えました。
公演後にはコロッケさんと七海さんの合同取材がありました。コロッケさんは本来なら昨年が芸歴40周年でコンサートやライブをやる予定だったものが、約150本もキャンセルになったそう。「とにかく幕が開いたことがうれしい。お芝居もショーもいい形ででき、今日の夜はベッドの中で泣いてしまうかもしれません」と感無量の表情。「今後は世界に向けてSNS等でネタを広めていきたい。英語の発音を間違っている日本人のネタは、アメリカ人が大ウケしたんですよね。以前ラスベガスやニューヨークでやったネタを増やしたり、プロデュース業なども行って、今後も必要とされるように挑戦し続けていきたい」と野望も語ってくれました。
七海さんはコロッケさんと初共演。「ものまね界の帝王なので最初は緊張していましたが、心が広くて優しいコロッケさん。温かさに守られながらお稽古できました」。コロッケさんのものまねの中でいちばん好きなのは、熱いやかんを使ったブルース・リーのネタ。この公演の中でひとつくらいものまねができるといいなと話す七海さんですが、ご自身のライブの鉄板ネタとして披露してくれたのが大好きなあざらしの鳴きまね。「これができるならオットセイのまねもできるかもしれませんね」(コロッケさん)ということで、いつか七海さんがオットセイのまねをしてくれることを心待ちにしておきます(笑)。
▲舞台のトリの北島三郎さんのものまねのまま取材を受けるサービス満点のコロッケさんと、王子さま風七海ひろきさん。「真面目なカットもお願いします」と取材陣から逆の意味でのリクエストが(笑)。
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緊急事態宣言が明け、少しずつ世の中が動き出した感じ。エンタメ界も徐々に元気になっていくことでしょう。まず最初のひと笑いに、このステージを選ぶのもいいかもしれません。千秋楽の10月21日にはライブ配信も決定したので、会場に足を運べない人のもとにも明るい笑いが届きますよ!
撮影/岩村美佳(舞台写真・取材写真) 文/淡路裕子
「令和千本桜〜義経と弁慶/コロッケものまねオンステージ 2021」
■第1部「令和千本桜 義経と弁慶」
脚本・演出:堤泰之
出演:コロッケ、七海ひろき / 高橋健介、蒼木陣、日向野祥、矢島舞美 / 上田堪大、川原一馬 / 武岡淳一、吉永秀平、高木トモユキ、上脇結友 / 倉冨なおと、宮田龍樹、すわいつ郎、久永紗楽、北井里佳、千葉のぶひろ
※上田堪大と川原一馬はWキャスト。
■第2部「コロッケものまねオンステージ 2021~40周年鉄板ネタ大放出!~」
出演:コロッケ
「七海ひろきスペシャルステージ」
出演:七海ひろき
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