「油を売る」は仕事を怠けるという意味の言葉
「油を売る」とは、無駄話などをして仕事を怠けるという意味の言葉です。会社で「あの人、また油を売っているよ」と揶揄するように使われるのを、聞いたことがある人もいるでしょう。
仕事を怠けている人を注意する際にも使われ、基本的にネガティブな意味の言葉として認識されているといえます。ただし、一日中仕事を放り出しているというよりは、一時的なさぼりというニュアンスで使われているようです。
辞書には、以下のように意味が記載されています。
【油を売る:あぶらをうる】《近世、髪油の行商人が、客を相手に世間話をしながら売ることが多かったことから》むだ話などをして仕事を怠ける。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
現在の意味で使われるようになった理由
江戸時代の油売りの行商人は、客に油を届け、客の枡(ます)のなかに油を注ぎながら客と雑談をしていました。そこから、「油を売る」という言葉が仕事中に無駄話をして怠けるさまをあらわすようになったといわれています。
しかし雑談をしていたのには理由があり、当時の油は粘度が高く、完全に油が注がれるまで時間がかかったためでした。油売りはその場を繋いでいたにすぎず、仕事を怠けていたわけではないようです。
江戸時代の油は高級品
江戸時代、油は女性の髪油や行燈(あんどん)などの部屋の明かりの燃料として使われていました。とても貴重だったため、一般庶民には手が届かない高級品であり、貴族や豪族が使うものだったようです。そのため、油を使う天ぷらなどの料理も高級品とされました。油問屋や、油の原材料を扱う種物問屋は儲かる商売だったといえます。
美濃の国の大名も油売り出身
諸説ありますが戦国時代の大名、斎藤道三も油売り出身といわれています。斎藤道三は一文銭に空いている穴に油を注ぎ、穴から油がそれたら油の料金を無料にするという街頭パフォーマンスで人気者になったようです。
しかし、最近では修行僧から油売りになったのは道三の父であり、道三一人がおこなった国盗りは親子2代によるものだったという説も出てきています。
【例文付き】油を売るの使い方
「油を売る」は、無駄話などをして仕事を一時的にさぼることを指して使います。一年中、あるいは一日中仕事ややるべきことを放ったらかしにしている状態には使わないことがポイントです。例文をご紹介しますので、実際に使う際の参考にしてください。
【例文】
・隣の席の同僚が、もう30分以上戻ってこない。どこで【油を売っている】のだろう
・【油を売って】ばかりで、仕事に取りかかるまで時間がかかっている
・そんなところで【油を売って】いないで、早く例の件を対処してください
「油を売る」の類語2つ
「油を売る」には、同じような意味で使われる類語がいくつかあります。ここでは「道草を食う」と「手遊びをする」の意味や使い方を解説していきます。「道草を食う」は途中で他のことに時間を費やす、「手遊びをする」は暇つぶしにすること、という意味です。
いずれもビジネスシーンや日常会話のなかで役に立つ機会があるかもしれません。「油を売る」という言葉と一緒に覚えておきましょう。
道草を食う
「道草を食う」は、目的地に向かう途中、他のことに時間を費やすという意味の言葉です。馬が道端の草を食べるのに時間がかかって、目的に到着するのが遅れることから転じて、途中で手間取るという意味で使われるようになりました。
本来の目的とは違うことに時間を費やすという意味であるため、「油を売る」の類語として挙げられます。しかし、「油を売る」は仕事をさぼること、「道草を食う」は目的地に向かって進まなければいけないのに他のことに時間を使うことであり、微妙な意味の違いがあります。