「科白」とは?
まず「科白」の読み方と意味を見てみましょう。
読み⽅
「昨日(きのう)」「大人(おとな)」のように、二字以上の漢字からなる「熟字」を「訓読み」することを「熟字訓(じゅくじくん)」といいます。「科白」もその一つ。「科白」は音読みで「かはく」ですが、訓読みでは「せりふ」となります。皆さんは、どちらの読み方がなじみ深いでしょう?
また、「せりふ」という言葉は「科白」のほかに「台詞」という漢字でも表します。「かはく」と「せりふ」。この二つの漢字の意味を調べると、辞書では次のとおり。
か‐はく【科白】
舞台における俳優のしぐさとせりふ。また、単にせりふのこと。(<小学館 デジタル大辞泉>より)せりふ【台詞/科白】
1 俳優が劇中で話す言葉。2 人に対する言葉。言いぐさ。3 きまり文句。4 理屈や言い分を並べること。談判すること。5 支払いをすること。(<小学館 デジタル大辞泉>より)
「科白」は「かはく」「せりふ」のいずれで読むかで、意味が少し異なるようです。「かはく」と読むときは舞台上の俳優の「動き」と「せりふ」を指しますが、「せりふ」と読んで使う場合は「言いぐさ」「きまり文句」「言い分」などの意味も含まれるので、使われる場面によって、ニュアンスに違いがあることを覚えておきましょう。
語源は?
では次に、語源から「科白」を見てみましょう。「科白」という漢字の「科」は、もともと役者の動作や表情といった「芝居の動作」を意味する漢字。「白」には「話す・語る」という意味が含まれます。「科白」のほかにも「告白」「白状」「自白」といった漢字からもイメージできますね。また「科白」は中国語では「芝居中の役者の動きと語り」を意味します。
合わせて「科白(せりふ)」の同音異字「台詞(せりふ)」も見てみましょう。舞台上の言葉を示す「舞台詞(ぶたいことば)」という漢字があります。この下の二文字の漢字「台詞」から「せりふの言葉」を意味する言葉に。
「せりふ」という言葉の語源は明確ではありませんが、「競り言ふ」が詰まった言葉や「世流布(せるふ)」が転化したもの、または、能や狂言に関係する言葉などの諸説があります。日本では江戸時代ごろから使われている言葉のようです。
「台詞」との違いは?
では、「科白」の同音異字である「台詞」と「科白」の違いは何でしょう? 「台詞」も「科白」も「せりふ」と読むことは説明しました。「せりふ」といえば、お芝居などで役者が話す言葉を指す通り、ほぼ同じの意味ですが「台詞」は日本でつくられた言葉、「科白」は中国由来のものとされています。
語源から見てわかることは、「科白」は、役者のしぐさを示す「科」と、語ることを意味する「白」という漢字が合わさった言葉。なので「科白」には「しぐさ」の意味を含みます。「台詞」は「舞台詞」から来ているため「せりふ」のみを指します。しかし、厳密に使い分けている人は少ないかもしれません。この機会に漢字に込められた意味を理解しておくといいでしょう。
日常会話で使う「セリフ」について
もともとは役者が舞台の劇中で話すのが「科白(せりふ)」の意味。それが転じて、今ではカタカナ表記で舞台上はもとより、日常会話で人に対して使う言葉を「セリフ」と表すように。「あの時のセリフが気に食わない」や「そんなセリフは聞きたくない」という時の「セリフ」は「言いぐさ」「言い分」を指します。人が使う嫌な言葉や聞きたくないひと言が出た時に、非難の気持ちを込めて使うことも。
「科白」の使い⽅を例⽂でチェック
「科白」の意味を考えながら、さまざまな使い方を例文で見てみましょう。
初舞台に緊張しすぎて、彼女は科白をとちってばかりいた。
「科白(せりふ)」の「俳優が劇中で話す言葉」の意味での例文。初舞台に緊張して、失敗してばかりいる女優の様子です。「とちる」は、舞台上で科白を言い間違うこと。
あの時、そんな科白は聞きたくなかった。
舞台上の役者の「科白(せりふ)」ではなく、日常会話で一般の人同士で交わされる「言いぐさ」「言い分」のことを「科白」と表現しています。