「退団後は少しのんびりしたい」と話していましたが、今将来について考えていることはありますか？
遥羽：あせらず少しずつやっていきたいなと思っています。今までがむしゃらに頑張ってきたので、周りを見る余裕がなかったことをとても反省しているんです。退団してから気づいたんですけどね。自分に余裕があると心が落ち着き、いろいろなことに対して視野が広がった気がします。今までは親に対しても周りの方に対しても、ギズギズしちゃってました。その時はそれが最善だと思ってやっていたことも、今考えるともっと違うことができたんじゃないかと思うことがあります。ふと時間ができて周囲を見渡すと、四季を感じられる風景が見えることも新鮮なんです。
12月に、愛さんのクリスマスディナーショーにりさ（星南のぞみさん）と一緒に出させていただくことが決まりました。お声がけいただいた時はとってもうれしくて、でもお受けするのを迷いました。今回は大好きな愛さんのステージで、同期のりさがいて心強く、SNSでファンの方が待ってくださっていることを知って、ありがたく出演させていただくことにしたんです。素敵な場を愛さんがくださったので、お応えできたらと思います。ゆっくりなペースですが、少しずつみなさんにお顔を見せていけたらいいなと考えています。
舞台以外では、カーディオ・バーのインストラクターとしても活躍されていますよね。
遥羽：（タカラヅカを）卒業してから何かをイチから始めてみたいと思っていたんですね。私は体を動かすことが好きなので、自分でいろいろ調べて様々なエクササイズやフィットネスの体験レッスンを受けてみました。ヨガ、ピラティス。バレトン…。その中のひとつにカーディオ・バーがあったんです。レッスンを受け終わった後すぐに、「こちらはインストラクターを募集していますか」と聞いたところ「しているので履歴書を送ってください」と。そして履歴書を送ってオーディション面接を受け、採用されたら1か月半の研修を受けました。私の動画をアメリカに送ってもらい、そこでOKが出て認定されたため、今は新宿・渋谷・自由が丘にあるスタジオで会員さんに教えています。
今までとはまったく違う世界の人と出会いたいと思って選んだんです。新しい刺激をもらって、そこで改めて自分がどんなことをやりたいのか考えたいなと。違う世界に行くには自分からアクションを起こさないと始まらないなと思い、飛び込んでみました。入ってみたら、ディズニーランドのダンサーさんや劇団四季で活動していた人がいて、違うように見えても意外と土台が一緒。それもまた楽しいんです。
カーディオ・バーは具体的にどんなエクササイズなんですか？
遥羽：ロサンゼルスで人気の、しなやかで美しい体作りのためのエクササイズで、音楽をかけながら60分ノンストップで行う有酸素運動です。前半はバーを使ってプリエやタンジュ、グラン・バットマンなどを取り入れたバレエの動き。後半はフロアに移動して腹筋やヒップアップのための筋トレ。音楽は速いテンポのものが多いですね。BTSの曲もあるんですよ。バレエはクラシック音楽を使うからゆるやかで優雅な動きじゃないですか。それとはまったく異なるダンスミュージックみたいな速い音楽に合わせて行うバーレッスンは、なかなかユニークですよね。
仕事をするうえでの信念はありますか？
遥羽：いつでも自分が楽しめることです。舞台人としても、今教えているカーディオ・バーにしても、まずは自分が楽しんでいないと周りの方に共有できないなと。今は特にインストラクターをしているので、自分のテンションが落ちているとやはりなんとなく感じられてしまうんですよね。自分が楽しめるというところまでいくには努力が必要で、自信をつけないといけないと思っています。それはタカラヅカで学ばせていただいたことで、今後もそれを目標にしていきたいです。
今まで演じる側だったから“教える”ということに慣れていないじゃないですか。カーディオ・バーで教える前にも研修をして自信をつけたつもりだったのですが、教えるためのスキルが足りなかったんですよね。経験をしていくうちに学ぶものもたくさんあることを実感し、今少しずつ身につけているところです。
ゆるやかで穏やかな口調でありながら、強い心を感じる遥羽さん。努力をし自信をつけて楽しめるようになるとサラッと言われましたが、きっとものすごい、それこそ血のにじむような努力をされてこられたのだろうなと思いました。まったく新しい世界に飛び込むために、自分でいろいろなレッスンを探し、履歴書を送る…というバイタリティと行動力もすごい！ ハッとさせられることの多い時間でした。
次回は遥羽さんのプライベートについてうかがいます。どんな新婚生活を送っているのでしょうか…？お楽しみに！
撮影／花村克彦 構成・文／淡路裕子
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遥羽らら
はるは・らら／5月31日生まれ、愛知県出身。2012年に98期生として宝塚歌劇団に入団し、宙組大劇場公演『華やかなりし日々／クライマックス』で初舞台を踏む。組まわりを経て娘役として宙組に配属。2016年『Shakespeare～空に満つるは、尽きせぬ言の葉～』、2017年『王妃の館－Château de la Reine－』(いずれも宙組大劇場公演)にて新人公演ヒロインを演じる。さらに、2018年『不滅の棘』、2020年『壮麗帝』の東上公演でヒロイン役に。2021年9月『シャーロック・ホームズ－The Game Is Afoot!－／Délicieux！－甘美なる巴里－』にて宝塚歌劇団を退団。2022年3月、自身のインスタグラムにて結婚を発表。
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