「今までとはまったく違う世界に飛び込みたい」。遥羽ららさんのセカンドキャリア
元星組スターの愛月ひかる(あいづき・ひかる)さんからのバトンは、可憐な娘役として舞台に華を添えていた元宙組の遥羽らら(はるは・らら)さんへ。以前ご登場いただいた星南のぞみ(せいな・のぞみ)さんとともに、12月に行われる『愛月ひかるクリスマスディナーショー』への出演も発表されました。
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在団中は、少女の役も大人の女性の役も、引き込まれるような表現力と演技力で観客を魅了しました。いつなんどきも相手の男役さんを素敵に輝かせることができる〝寄り添い力〟は、劇団随一だったのではないでしょうか。退団後は、フィットネス系のインストラクターをされている遥羽さん。今回のインタビューでは、セカンドキャリアについてもじっくりうかがいます。
紹介してくださった愛月さんが「すごくかわいがっていた娘役さん。りさ(星南のぞみさん)とともに仲良くしていました」とおっしゃっていました。愛月さんとの思い出深いエピソードを教えてください。
遥羽さん(以下敬称略):愛さんが宙組にいらした時にいちばん深く関わらせていただいたのが『不滅の棘』(2018年)という作品。私は自信のないタイプで、お稽古場でもつい「私なんか」とか「どうしよう…」と言ってしまうことが多かったんです。そんな私を見て、愛さんが「ヒロインという立場をいただいたんだから、そう言っている方が申し訳ないよ。それを自信に変えてやっていかないと」と言ってくださって。愛さんは当たり前にされていたことが、私にとってはとても響くことだったんです。そこからスイッチを切り替え、その言葉を心に持って過ごしました。
ストイックで真面目に芸事に向き合われるそんな一面がありながら、オフではとっても楽しい愛さん。USJに一緒に行って遊んでくださったりして、「わーい、愛さん!」と慕わせていただきました。そのギャップのある関係性が愛さんだからこそ心地いいんです。
学年は違えど、とても濃い関係性だったんですね。在団中にいちばん心に残っていることはどんなことですか?
遥羽:コロナ禍を経験したからこそ、お客さまの大切さを改めて感じることができたことでしょうか。『壮麗帝』(2020年)は東京公演がまるまる中止になり、『ホテル スヴィッツラ ハウス』(2021年)は東京公演はできたのですが大阪公演が中止になり無観客のライブ配信のみに。お客さまの姿がない場所で演じて、でもカメラの向こうではお客さまが観ている無観客配信の時は、今までに味わったことのない気持ちに陥りました。拍手も気配もない空間でエネルギーが上がらず、その気持ちと闘いながら懸命にやることがとても大変で。それを味わった分、大劇場公演の『シャーロック・ホームズ』(2021年)でお客さまの拍手や笑顔があった時の喜びはものすごかったです。
辛いことを経験した後のうれしさはこんなに大きなものなんだと、コロナのおかげで実感することができました。今までは当たり前のように舞台に立っていたことが決して当たり前でなく、そしてお客さまが足を運んでくれることのありがたさを身をもって知ることができて…グッと胸にきました。
無観客配信は客席に誰もいない中で演じることと思いますが、舞台稽古と状況は近いのですか?
遥羽:舞台稽古は、先生が気になる箇所をその都度止めてチェックして、と進めていきます。通し舞台稽古は止めることはないのですが、スタッフのみなさんや関わってくださる方たち、先生方が客席で観ていてくださり、場面が終わるごとに拍手がいただけます。拍手も気配もなく、カメラだけが回っていたのが無観客配信でした。今も、公演中止のニュースを目にするたびにつらい気持ちになりますね。
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娘役の視点で、印象深い思い出はありますか?
遥羽:うーん、娘役としてはなんでしょう…。私はアクセサリーなどを作るのがとても苦手だったので、お稽古終わりの夜にその作業をするのが大変でした。(タカラヅカを)卒業して、「アクセサリーを作らなくていいんだ」ということにホッとした部分はありました。解放されたというか(笑)。でも、作品の時代背景や、その時代に愛用されていた石や、自分の役の階級などを調べ、材料を探しに行って、作って、それを舞台でつけてお客さまや相手役さんがほめてくださった時は達成感があってとてもうれしかったんです。大変でしたけど、やりがいのあることでした。
自分の好みではなく、深いところまで考えてデザインするんですね。
遥羽:そうなんですよ。下級生の頃はわからなかったのですが、上級生に教えていただいたり勉強したりして知っていきました。公演する作品が決まると、映像や書籍などの資料を見るじゃないですか。すると、「この時代の装飾品はこういう形なんだ」とか「こんなアクセサリーをつけている人が多いな」というのがだんだんわかってくるんですよ。例えば、パールが多いなとか、ターコイズが多いなとか。そこからネットで色々調べ、情報を掘り下げながらどんなアクセサリーにしようか考えるんです。
下級生の頃はキラキラの華やかなものをつけたい時期があるんですよ。でも時代に合ってなかったり、役の身分に合ってなかったりすると、「それはちょっと違うんじゃない?」と言える上級生になりました。自分が学んできたことをきちんと下級生に伝えられるのは、タカラヅカのいいところだと思います。
ちなみに、苦手ながらも上手にできたアクセサリーはいつものものでしょうか。
遥羽:『王家に捧ぐ歌』(2015年)の新人公演のアムネリスの時のものです。女王なので装飾が大変でしたが、完成した時の達成感とカツラや衣装とのバランスのよさは、自分でも満足のいくものでした。とても思い入れがあります。