【登場人物】
あん（私）…メーカー勤務のシングルマザー。8年前に離婚し、実家に出戻り。39歳。
息子…生意気盛りの小学生。10歳。
Oくん…今彼。会社の後輩・Kくんの大学の同級生。33歳
Rさん…元彼。Hくんと同じ会社に勤める42歳。結婚歴はナシ。
Hくん…学生時代からの飲み友達。あんの恋愛復活に協力。
Sくん…Hくんと同じ会社に勤める、バツイチ子なしの39歳。離婚理由は浮気。
Cちゃん…会社の同僚。33歳。
Kくん…会社の後輩。25歳。
【前回までの話】
40歳を目前に控え、「私、このままシングルでいいの？」と、ふと我に帰った私。再度恋愛に挑もうと、学生時代からの友達Hくんに紹介してもらったRさんとお付き合いすることに。お互いの”譲れない家族”の存在を確認した上で付き合うことになったのだが、Rさんのお母様や、元カノの存在、そしてRさんのきれい好きと、ちょっとしたわだかまりがあんの中で溜まっていく。そんなある日、会社の後輩Kくんからキャンプのお誘いが。後輩のKくん、その友達のOくん、同僚のCちゃんと息子でデイキャンプに。その日の夜にはRさんと約束があったが、発熱しコロナが疑われたためキャンセルに。しかし心配だったあんは救援物資を持ち自宅ドアの前まで行くと、部屋の中から女性の声を聞いてしまう。悩んだあんはRさんに連絡し、胸の内を伝えると、Rさんから「別れよう」と言われてしまう。Rさんと別れた後、会社帰りの私に毎週会いに来たOくん。そのOくんからクリスマス前々日に誘われ、”事実恋愛”という形のお付き合いがスタート。
母の気になるひと言を打ち明けると…彼との関係が進展!?
こんにちは。シングルマザー歴8年のあおいあんです。前回はなんでもない日常に幸せを感じていた最中、忘れていた自分の誕生日のお祝いを、息子とOくんが、それぞれしてくれることになったところまでお話ししました。
私の誕生日当日、息子は早めにお昼を食べ、いそいそと彼女の元へと向かいました。私もOくんからデートのお迎えの連絡があったので準備をしていると
母「もしあんにいい人がいるなら、遠慮せずに紹介してね」
あの厳しい母からは考えられない発言に思わず
私「う、うん。分かった。考えておくね」
まるでいい人がいるような答え方をしてしまった。Oくんの存在はまだ家族にはバレないように気をつけていたのに、母は勘づいていたのかもしれない。
買い物に出かけると母には伝え、家を出た。最寄駅でOくんと待ち合わせをしたが、そこまでの道中、母に紹介するべきか悩んだ。きっと母は、自分が病気で何かあった時のことを考えての言葉だったのだろう。だとしたら紹介した方が安心して治療に専念できたり、少しでも生きる希望になるのだろうか。
Oくん「おはよう。難しい顔してるね。どうかしたの？」
私「おはよう。うーん、母が出がけに言ったひと言が気になったのだけど…大丈夫。今日はどこ行く？」
Oくん「まずはランチしようか。予約したから」
着いた先は人気ホテルのレストランだった。ちょっと気分が上がり、席に着くとシャンパンが運ばれてきた。
昼間に飲むアルコールは酔いが回るのが早く、心も身体もふわふわしていた。そんな中…
Oくん「来年の誕生日にはどんな自分になっていたい？」
スッと現実に戻すような問いに、私は即答できなかった。その言葉を聞いた瞬間、母が生きているかどうか頭によぎったからだ。
私「分からない。自分がどうよりも、母に生きていてほしい。1日でも1年でも長く生きていてほしい」
Oくん「そうだよね。今日、お母さんから朝何か言われたの？ 病状は進行してないんだよね？」
私「手術で癌を取り除けるだろうってお医者さんに言われたから、ひとまずは安心なのかなって思うんだ。でも、今朝いい人がいるなら紹介してって言われて…。離婚してから彼氏作ることに否定的だったから、そんなこと言われたの初めてで」
Oくん「お母さんは、あんと息子くんのことを心配しているのかもね。俺でよければ会おうか？」
突然の申し出にビックリして声も出ない私に
Oくん「あんにとっていい人であればの話だけどね」
ニコッと笑ったOくん、食事をしている手を止め
Oくん「本当は春の起業が軌道に乗ってから次のステップを考えたいと思ったんだけど、お母さんのこともあるし、そんなのんびりしていられないのかなって。もしご両親やあんの支えになるなら、挨拶に行った方がいいかなと思うんだ」
「次のステップ」？ それって結婚のこと？ それとも普通に付き合うってこと？ 頭の中で？マークがたくさん浮かんだが、なんとなく口にしづらかった。言葉にすると、この上手くいっている関係が崩れるような気がして。
私「ありがとう。今の言葉だけでもすごく心強い。本当にいいの？ 起業前で一番大変な時期だし、負担になるのは嫌だな」
Oくん「春までは挨拶に行くことしかできないと思うけど、それ以降はお母さんが体調のいい日は、みんなで食事とか行ったりしようよ。本当は息子くんから細々と始めたかったけど、時間は待ってくれないからね」
すっかり息子のことをそっちのけで話していた私。
私「息子には私からちゃんと話しておくね」
食事が終わるとケーキが運ばれ、プレゼントを渡してくれた。またもや小さなショッパーの中に、小さなBOXが入っていた。今度こそリングかもしれない。クリスマスプレゼントの時はリングだったら困るとさえ思っていたのに、今はそれを期待している自分がいた。人間てつくづくワガママだな、なんてドキドキしながら開けてみると…。
あおいあん
契約社員でメーカー勤務、現在38歳のシングルマザー。高学年になりちょっと生意気になった10歳の息子と実家に出戻り。40歳を前に「もう一度、女としての人生を！」と一念発起。離婚をしてから7年という恋愛ブランクを埋めるべく奮闘中。
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