「モック」の意味は?
モックとは、どのような意味なのでしょうか? 業界によって異なる形態や役割を持つため、基本的な意味と、各業界での使われ方や具体的な活用法をそれぞれ見ていきましょう。
一般的には「モックアップ」を略した言葉
「モック」とは、一般的に「モックアップ」を略した言葉で「試作品」「模型」を意味します。モックアップは「模造品や模型を作る」という意味の英語「mock up」をカタカナ読みにした言葉です。
モック‐アップ【mock-up】
試作や店頭展示などのためにつくられる実物大模型。モック。
小学館『デジタル大辞泉』より引用
モックは、具体的な完成イメージをつかむためのサンプルとして、さまざまな分野で活用されています。
たとえば携帯ショップでは、消費者が使用感をイメージできるよう、プラスチック製のスマートフォンの模型が置かれていることが珍しくありません。
近年は、3DCG(3次元コンピューター・グラフィックス)を使った「デジタルモックアップ」も増えています。実物を作成しないためコストや時間の削減が可能となり、初期段階でのイメージ共有にも役立っています。
業界によって使われ方が異なるケースも
モックは、業界によって異なる役割や使われ方をしています。たとえば家電業界では、商品設計段階での試作品や、店頭展示用のサンプルなどを表します。
建築業界ではミニチュア模型やモデルルームをモックと呼ぶことが多く、全体像の把握やインテリアの調整に役立てています。近年は、VR技術を用いたデジタルモックアップも登場し、よりリアルな空間体験が可能です。
IT業界においては、完成品に似せて作成したシステム搭載前の「模擬システム」を指します。また、ファッション業界では、タートルネックと似た「モックネック」や靴ひもがない靴「モックシューズ」など、名称として使われています。
モックの類義語と対義語はある?

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モックには、さまざまな類義語や対義語が存在します。それぞれの言葉が持つニュアンスの違いや、使用される場面を紹介します。
【類義語】起こし絵・縮尺模型など
モックの代表的な類義語は、「起こし絵」です。日本の伝統的な簡易模型で、建築分野等で使用される展開図のような役割を果たし、建物を立体的に見せるときなどに使われます。
「スケールモデル」とも呼ばれる「縮尺模型」も類義語のひとつです。一定の比率で縮小して作った模型のことで、過去実在した建築物の再現や撮影用ジオラマ、プラモデルといった幅広い分野で使われています。
その他、木材でつくる原型を指す「木型」、事物などをざっくりと描いた「スケッチ」、模造品という意味の「イミテーション」なども類義語です。
【対義語】実体・entityなど
モックの対義語で代表的なものは、本当の姿という意味の「実体」です。一例として、ウェブサイトのデザイン段階ではモックアップを使ってレイアウトやユーザー体験を検討しますが、それが実際に公開されるサイトとなったら「実体」と呼びます。
英語の「entity(エンティティ)」も実在という意味があるため、対義語といえます。その他にも「リアル」や「genuine(ジェニュイン)」も、「生粋の」「本物の」という意味を持つため、対義語といえるでしょう。
IT・Web業界におけるモックの活用法

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IT・Web業界では、効率よくプロジェクトを進行するために、モックが重要な役割を果たしています。どのようにモックが活用されているのか、開発プロセスにおける主要な3つのステップを見ていきましょう。
スケッチ(ワイヤーフレームなど)を作成
最初のステップは、スケッチ(ワイヤーフレームなど)の作成です。これは、ウェブサイトやアプリの骨格となる設計図のような役割を果たすもの。
色やデザインなどは省略し、レイアウトや機能の配置を簡素に作成します。この段階では、ペンと紙を使った手書きのスケッチや、専用デジタルツールの利用が一般的です。
重要なのは、ユーザーの動線や情報の優先順位を考慮しながら、全体の構造を明確にすることです。スケッチを作成すれば、チーム内での認識の統一や、クライアントとの初期段階でのイメージ共有が容易になります。
モックを作成
次のステップはモックの作成です。この段階では、より詳細なデザインや機能を視覚化します。
カラーやフォント、画像など、実際のプロダクトに近い要素を盛り込みます。モックは静的なものが多く実際の動作はしませんが、ユーザーインターフェースの完成イメージを具体的に示すことが可能です。
モック作成には、Sketch・Adobe XD・Figmaなどの専用ツールを使うことが多いです。これらのツールを使用すれば、効率的に高品質なモックを作成できます。また、チーム内での共有や修正もしやすくなります。
プロトタイプ~完成品を作成
最後のステップはプロトタイプ作成で、実際の動作や機能を組み込み、より本物に近い状態をつくります。ユーザーが実際に操作可能なため、使用感や問題点を具体的に把握できます。
たとえば、ボタンをクリックしたときの反応や画面遷移の確認が可能です。また、プロトタイプを通じてユーザビリティテストを行うこともできます。実際のユーザーに操作してもらい、フィードバックを得ることで、製品の改善につなげられるのです。
最終段階は、完成品の作成です。プロトタイプから完成品への移行は、デザインの微調整や機能の完全実装を行いながら進めていきます。
モックアップを行うメリット

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モックアップを作成することは、プロジェクトの成功を高めることにつながります。具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか? 主なメリットを3つ紹介します。
完成した姿を事前に確認できる
モックアップ作成の大きなメリットは、実際に制作する前に完成イメージを把握できることです。これにより、制作者と依頼者の認識のズレを最小限に抑えられます。
Webサイトのデザインで例えてみましょう。カラーやレイアウトといえば、そのサイトの世界観や雰囲気を左右する重要な要素のひとつですよね。そこでお互いに認識のズレがあると、完成してから「依頼したものと違う」といったトラブルになる可能性があります。状況によっては、最初から作り直さなければならない事態になることも考えられるのです。
モックアップは、そういった認識のズレから生じる時間やコストの無駄を省き、プロジェクト全体の効率化に役立ちます。
実際のイメージを共有することができる
プロジェクトを円滑に進めるためには、制作に関わっているメンバー間でのイメージを共有することが欠かせません。モックアップなら、言葉だけでは伝えきれない細かなニュアンスや、視覚的な要素を具体的に表現できるため、イメージ共有しやすいのがメリットです。
また、それらの共有によって、アイデアや改善点をより明確に把握できるというメリットもあります。モックアップを介したスムーズなコミュニケーションが、作業の効率化にもつながるのです。
デザイン面の評価が事前にできる
モックアップを活用すれば、デザイン面の事前評価が可能となります。
たとえば、Webサイトやアプリ開発では色使いやレイアウト、ユーザーインターフェースなどを具体的に確認できます。実際の画面サイズで見ることで、文字の大きさや画像の配置が適切かどうかを判断しやすくなるのもメリットといえます。
さらに、ユーザビリティの観点から評価することも可能となります。ボタンやウィジェットの位置、操作の流れが直感的かどうかなどを実際に触って確認できるため、デザインの問題点の早期発見・修正が容易に行えるのです。
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