Summary
- 「ご査収くださいませ」は、「内容を確認して受け取ってください」という丁寧な表現。
- 「査収」は「よく調べて受け取る」という意味を持つ。
- 「くださいませ」はより丁寧な言い方で、社外や儀礼的な文書で効果的。
ビジネスシーンでメールや書類を送る際、「ご査収くださいませ」という言葉を使ったことはありますか? 非常に丁寧な響きがあり、相手への敬意を示したいときに便利な表現です。しかし、その一方で「少し堅苦しいのでは?」「どんな場面でも使えるの?」と、使い方に迷う方も少なくないでしょう。
この記事では、「ご査収くださいませ」という言葉の本来の意味や成り立ちから、ビジネスの現場で役立つ具体的な使い方、そして知っておきたい言い換え表現までを詳しく解説します。
「ご査収くださいませ」とは?|意味と敬語の成り立ちを確認
まずは、「ご査収くださいませ」の意味と、敬語としての構造を正確に理解しておきましょう。適切に使うためには、言葉の成り立ちを知ることが大切です。
「ご査収」の本来の意味とは?
「査収(さしゅう)」とは、『⼩学館デジタル⼤辞泉』には「金銭・物品・書類などを、よく調べて受け取ること」とあります。一つひとつの漢字を見ると、「査」は「調べる」、「収」は「収める・受け取る」という意味を持っています。
つまり、「ご査収ください」は、単に「受け取ってください」と伝えるだけでなく、「内容をよく確認した上で、お納めください」という、確認を促すニュアンスを含んだ言葉なのです。ここに、相手への敬意を示す接頭語「ご」がつくことで、「ご査収」という丁寧な表現になります。

「くださいませ」は丁寧すぎるのか?
「くださいませ」は、「ください」に丁寧の助詞「ませ」が付いた形で、相手への敬意をより強調した表現となります。ただし、日常のビジネスシーンでは「ご査収ください」のほうが一般的で、自然に感じられることが多いでしょう。
「くださいませ」は、やや古風で改まった印象を与えるため、取引先や目上の方への重要な書類送付時、儀礼的な文書、フォーマルな場面で使うと効果的です。
一方で、社内の日常的なやり取りや、頻繁にメールをする相手には、かえってよそよそしく感じられる場合もあります。相手との関係性や状況に応じて、「ご査収ください」と使い分けることが、自然なコミュニケーションにつながります。
「査収」は「調べて受け取る」を意味。
仕事でどう使う? 迷いがちな場面での選び方と避けたい誤用
実際のビジネスシーンでは、どのような場面で「ご査収くださいませ」を使うべきか、また避けたほうがいい場面はあるのか、具体的に見ていきましょう。
社外・社内での適切な使い分けとは?
【社外での使用】
取引先、クライアント、初めてやり取りする相手など、社外の方に対しては「ご査収くださいませ」を使うことで、丁寧で礼儀正しい印象を与えられます。
特に、契約書や見積書、正式な提案資料など、重要度の高い書類を送る際に適していますよ。
【社内での使用】
社内の上司や先輩に対しては、関係性によって判断しましょう。改まった報告書や稟議書を提出する場合は「ご査収くださいませ」も問題ありませんが、日常的な業務連絡であれば「ご確認ください」のほうが自然です。
同僚や部下に対しては、「ご査収くださいませ」は丁寧すぎて距離感を感じさせる可能性があります。「ご確認ください」「お目通しください」など、やや軽めの表現を選ぶといいでしょう。
ポイントは、相手との関係性、書類の重要度、場面のフォーマル度を総合的に判断することです。
書類送付時の定番表現? 具体的な文例で確認
実際のメールでどのように使うか、具体的な文例を紹介します。
【文例1:契約書を送る場合】
「お打ち合わせの際にご説明いたしました、契約書を添付いたします。ご査収くださいませ。ご不明点がございましたら、お気軽にお問い合わせください」
【文例2:請求書を送る場合】
「今月分の請求書をお送りいたします。ご査収くださいませ。お支払期限は○月○日となっておりますので、何卒よろしくお願いいたします」
【文例3:報告書を上司に提出する場合】
「先日ご依頼いただきました○○に関する報告書を作成いたしました。添付ファイルにてお送りいたしますので、ご査収くださいませ」
このように、何を送るのかを明確にし、必要に応じて補足説明を加えることで、相手が内容を確認しやすくなります。

使ってはいけないシーンとは?
非常に丁寧な「ご査収くださいませ」ですが、使うべきでない場面もあります。誤用を避けるために、以下の2つのポイントをしっかり押さえておきましょう。
確認が不要なものを送るとき
「査収」には「調べて受け取る」という意味があるため、中身を特に確認する必要がないもの(例えば、単なる時候の挨拶状や、以前に共有した資料の再送など)に対して使うのは不適切です。「お受け取りください」や「念のためお送りします」といった表現がいいでしょう。
相手に確認を依頼する「前」の段階
まだ内容が固まっていない草案や、相手に意見を求める段階の資料を送る際に「ご査収ください」を使うと、「これで完成なので、内容を確認して受け取ってください」という意味合いに取られかねません。
この場合は、「ご一読ください」「ご確認ください」といった言葉を使い、相手に「確認・修正をお願いします」という意図を明確に伝えることが大切です。
言い換え表現や返答のコツ
「ご査収くださいませ」は決して万能ではありません。他の言い方との使い分けや、受け手側の返信例を知っておくと、やり取りがスムーズになります。
「ご確認ください」など、言い換え表現との違い
【ご確認ください】
最も汎用性が高く、日常的なビジネスシーンで広く使える表現です。書類の有無にかかわらず使えるため、迷ったときはこちらを選ぶと無難です。
【お目通しください】
「目を通す」という意味で、軽く確認してほしいときに使います。「ご査収」よりもカジュアルです。
【ご検討ください】
提案書や企画書など、内容を吟味して判断してほしい場合に適しています。
【お受け取りください】
受領だけを依頼するややカジュアルな表現です。
相手との関係性や送付物の重要度によって、適切な表現を選びましょう。

返信例は?
では、自分が「ご査収ください」というメールを受け取った側になった場合、どのように返信するのがスマートでしょうか? 重要なのは、「ただ受け取った」だけでなく、「確かに内容を確認した」という事実を相手に伝えることです。
→スマートな返信例
「〇〇の件、確かに拝受し、内容も確認いたしました。迅速なご対応、誠にありがとうございます」
このように、「拝受(はいじゅ)いたしました」または「受領(じゅりょう)いたしました」という言葉で受け取ったことを伝え、さらに「内容も確認いたしました」と一言添えることで、相手は「しっかり伝わったな」と安心することができます。
単に「ありがとうございます」と返すよりも、仕事が丁寧で確実な人という印象を与えることができるでしょう。
「ご確認ください」「お目通しください」など柔らかい代替も有効。
最後に
POINT
- 「ご査収くださいませ」はフォーマルな敬語であり、相手への敬意を表す。
- 「査収」は「調べて受け取る」意があり、書類や契約書送付に最適。
- 社内メールや軽い連絡では「ご確認ください」などへの置き換えが自然。
「ご査収くださいませ」は、ビジネスシーンにおいて相手への敬意を示す丁寧な表現です。しかし、すべての場面で使えばいいわけではなく、相手との関係性や書類の重要度、状況に応じて適切に使い分けることが大切です。
言葉は、相手を思いやる気持ちを伝えるための手段です。形式的に丁寧な表現を使うだけでなく、「この言い方で相手は理解しやすいか」「距離感は適切か」と考えながら選ぶことで、より円滑なコミュニケーションが実現します。
TOP・アイキャッチ・吹き出し画像/(c) Adobe Stock

執筆
武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
あわせて読みたい


