第2回 ランクアップ社長の伝説として語り継がれる暗黒時代
株式会社ランクアップ
代表取締役・51歳
岩崎裕美子さん
前回のお話▶︎ 「30年前は玉の輿を目指していました」私が年商100億円の女社長になるまで
まるで軍隊のよう。息がつまる社風
「辛かったことや苦労したことも、今となっては笑い話なのですが、中でもいちばん大変だったのが社員から〝暗黒時代〟と呼ばれている時代です」と岩崎さん。
「やっと化粧品が完成し、会社も軌道に乗ってきたころのこと。創業7~8年の時期で、売り上げは順調なのに社内の雰囲気は最悪だったんです。常に活気がなくて、暗~い雰囲気で、体調を崩す人もいたほど。今となってはありえないのですが、当時は社員は私の思い通り動いてくれればいいと、社員に命令ばかりしていたんです。私の存在は絶対で、ある社員からは「軍隊みたい」と言われたこともありました。私がいると会社は静まり返り、息が詰まるほど。さらに、気に入らないことがあれば感情的に指示を出していたので、社員たちは私の顔色をうかがいながら過ごす日々でした」
社員に会社に対するアンケートをとったときには、「この会社の人たちは、仕事に行くことを楽しみにしている…0%」「この会社の人は裏工作など他人を誹謗中傷しないように心がけている…17%」「この会社の管理職は社員をえこひいきしなように心がけている…17%」などと出て、それもすごくショックでした。
残業なし、ノルマなしだからいい会社とは限らない
そんな会社をなんとかしたいと思っていたのですが、「残業もないし、売上ノルマもないのに何が不満なの?」と社員の気持ちまったくわからなかった。私が以前いた会社は、深夜残業、休日出勤あたりまえ、売上ノルマに毎月のように苦しめられていたからそれから比べれば天国だろうと思っていたんですよね」
そんなとき、藁をもすがる気持ちで参加した研修が、暗黒時代を抜け出すきっかになった。
「研修の結果、『社員を信頼せず、意見も取り入れず、上司の言うとおりにするだけでやりがいが感じられない』という社員の気持ちがようやくわかったんです。当時の私は、自分の考えがすべて正しいと思っていました。だから、社員から何かを提案されてもダメ出しばかり。結局、すべて私の言うとおりの仕事しかさせてもらえない。こんな環境では、活気なんて出るはずがなかったんです」
その後は、少しずつ権限移譲をしていったそう。「当時は、口を出したくて出したくてすごいストレスでした(笑)。でも、やらせたら私よりもずっとできるんですよ。それからは、社内もどんどん明るくなって、社員たちの積極性も出てきて、暗黒時代の終焉を迎えました」(次回へ続く)
取材・文/赤木さと子(スタッフ・オン)