子育てを卒業したら、怖いものがなくなった
私がスパブランド「MAROA」を立ち上げて、今年の11月で1周年を迎えました。まさか自分が会社を立ち上げ、商品を作り、いまのような生活を送るとは、数年前までまったく思いもよりませんでした。
17歳から始めたモデルの仕事は大好きだったし、漠然と、ずっと続けていくものだと思っていました。でも、たとえ「こんな仕事がしてみたい!」と思っていても、そのために摂生し、見た目をキープする努力をしていても、望まれなければ仕事はない。
40歳という年齢も目の前に迫っていました。子育て期を終えた私は、ママモデルとしての立場も卒業だと思っていたし、正直、このまま続けていてもモデルとして納得する仕事ができるのか、自信がありませんでした。
これから先どうしよう……。長いあいだ悩みましたが、あるとき、「私はここまで子どもを育ててきた。もう怖いものはなにもない」そう思えたんです。だったら、受け身の仕事の仕方ではなくて、自分からなにかをつかみに行こう!“モデル”の仕事だけに固執する必要もまったくないかも!そういう潔さも、いまの自分には必要なのかもしれないって。
それからはもう迷いはなくなりました。わたしの心身の不調を癒してくれた精油を使って、スパブランドを作ろう!そして、長らくお世話になったモデル事務所を離れ、自分の力でやってみようと決めたのです。
友人と2人で出資。ゼロからの会社経営
そして、10代のころからのモデル仲間でもあり、大切な友人でもある佐藤えつこちゃん(彼女もWEB Domaniで連載しています!)とふたりでお金を出し合って、「その資金がなくなったらおしまいにする」と決めて会社を設立。最初は事務所を借りる余裕もなかったので、シェアオフィスからのスタートでした。
▲一緒に会社を設立した〝えっこ〟こと、佐藤えつこちゃん。商品づくりも二人三脚で。
商品のアイディアは決まっていたけれど、一度に大量の商品をつくる資金もない。少ない数で、しかも自分たちが納得できる製品を作ってくれる工場を探すことが、最初の試練となりました。かたっ端から調べて、電話をして会って交渉をする。やっと見つかった信頼できる取引先と、何度も何度も試作品を作り、パッケージを決めて……。すべて自分たちで進めていきました。
「出てください」と言われる立場だった出版社やほかのメディアにも、「出してください!」と営業に行き、断られて悔しい思いをすることもしょっちゅう。それまで所属していた事務所をはじめ、周りの人たちが、こうやって私を大切にアピールしてくれたんだ……。改めて感じる感謝。
とともに、自分から仕掛けていく楽しさや喜び、いままで感じたことのない充実感を味わいました。
“卒ママ”ってわたしにとっては少し寂しいひびきだった。いつまでたっても、私は子どもたちのママであることに変わりはないから。でも、“卒業”するは〝そこで終わり〟という意味じゃなく、〝新しいステップの始まり〟ということがわかりました。このお話は長くなるので、また次回でお話しをしたいと思います。
構成/高田あさこ
モデル
中林美和
1979年生まれ。16歳で小学館『CanCam』の専属モデルに抜擢され、表紙モデルとして活躍。23歳で結婚、出産を経て小学館『SAKURA』のメインモデルとして復帰。ママモデルの先駆的存在となり、9年間表紙モデルを勤める。他、セブン&アイ出版『saita』の表紙モデル、光文社『VERY』、宝島社『&ROSY.』など多数の女性ファッション誌、ビューティー紙のモデルとして活躍する。著者に『中林美和のハートフルデイズ』、初のエッセイ『おんぶにだっこにフライパン!』など5冊を出版している。2017年にアロマテラピーアドバイザーの資格を取得。