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2019.12.12

人気作家・小手鞠るいの新刊『窓』を先取り! テーマは“母と娘”

 

恋愛小説、詩集、エッセイ、児童書など、様々なジャンルの作品を執筆している人気作家の小手鞠るいさん。2020年2月4日に発売される新刊『窓』(小学館)について、テーマや内容などをうかがいます。

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2020年2月4日に待望の新刊『窓』の発売が決定!

恋愛小説、歴史小説、エッセイ、詩集、そして児童文学と、溢れる才能で様々なジャンルの本を世に送り出している作家・小手鞠るいさん。2019年には、広島と長崎に落とされた原爆の是非を高校生による公開討論会を通して問いかける作品『ある晴れた夏の朝』が、第68回小学館児童出版文化賞を受賞するなど、今もっとも注目されている作家のひとりなんです。そんな小手鞠さんの待望の新刊『窓』が2020年2月に発売されるということで、いち早くテーマや内容についてうかがってきました。

▲第68回小学館児童出版文化賞を受賞した『ある晴れた夏の朝』(偕成社)

“ワーキングマザー”という言葉がなかった時代、私の母はワーキングマザーでした

2020年2月4日に発売される新刊『窓』について、テーマや内容を教えていだけますでしょうか。

小手鞠さん(以下、敬称略): テーマは、まさに“母と娘”。もしかしたら、Domaniの読者の方にも共感していただける部分があるかもしれないですね。内容は・・・ある家族が夫の仕事の関係でアメリカに赴任することになるんです。妻は日本でキャリアを積んでいたし、娘もまだ小さいということで、すごく悩んだのですが、結局夫に押し切られるような形で、家族全員でアメリカに行くことにします。でも、また3年後、今度は日本に戻ることになってしまう。そこで妻は、これで戻ったらまた振り回されて、自分のキャリアも何もなくなってしまう、もうそれは嫌だと、ひとりでアメリカに残ることにするんです。それはもちろん簡単な決断ではなかったわけですが・・・。ここまでは、“母”の物語。そして、ここからは“娘”の物語になるのですが、小さかった娘にとっては、大好きだった母と引き離されたという感じですよね。その後、日本で父親や祖母に愛されながら育った娘は、中学生になり、あることがきっかけで母の人生を知ることになるんです。内容を全部細かく話しちゃうのはあれだから、このくらいでいいかしら(笑)。

▲2019年2月4日に発売される、新刊の『窓』(小学館)

この本に出てくる母のように、赴任に限らず、家庭の事情などで自分のキャリアを諦めないといけない局面に直面する女性って多いと思うんですよね。家族はもちろん大切だけど、自分の人生も大切。その切実な母親の気持ちが描かれているところは、ワーキングマザーの方にいちばん共感していただける箇所ではないでしょうか。

新刊のテーマは“母と娘”ということですが、ご自身のお母様が今の自分自身に影響をおよぼしていることはありますか?

小手鞠: そうですね、『窓』では、母親の生き方を知ることによって、娘の成長していく姿を描いているんですけど、娘からすると母親の“女性としての生き方”を知るのはなかなか難しいことだと思うんです。“母親”としての姿は見ることはできますけどね。まさに、それがこの本を書いた理由なんです。

私の母は、今年87歳になるのですが、当時、母親が働くというのは珍しいような時代でした。それこそ“ワーキングマザー”という言葉がなかった頃、私の母は“ワーキングマザー”だったんです。小学校の授業参観のときには、仕事を午後から休んで来てくれたのですが、ふと後ろを見ると、パリッとスーツを着こなして、ハイヒールを履いた、すごくカッコイイお母さんが立っていたんですよね。もしかしたら、仕事をしているのは私のお母さんだけだったのかもしれない。すごく目立っていたし、その姿が子供心に「働いているお母さんっていいな」って強く焼きついたのだと思います。

でも、弟が小学生になったとき、その当時から“小一の壁”というのがあったんでしょうね。ある日、母が私に「働いているお母さんと、家にいるお母さんとどっちが好き?」って聞いてきたんです。私は、参観日に母をカッコイイと思いながらも、そのとき「家にいるお母さん」って答えてしまったんです。そうしたら、母は本当に仕事を辞めてしまったんですよ! 今にして思えば、母は私に決めてほしかったのではなくて、きっとこのままでいいのかと迷い、不安を感じていたのでしょうね。子供の私にはそれが分からなくて・・・。母は仕事を辞めてから、パンを焼いたり、お菓子を作ったり、いろいろなことをしてくれたんですけど、私の目にはなんて言うか・・・くすんで見えました。自信がなさそうで、どこか表情が暗い感じ。やっぱり、働いているお母さんの方が活き活きしていたなって思いました。私にはそういう過去があって、以前から“母と娘”をテーマにして本を書きたいという気持ちがあったんです。

この本が、母をひとりの女性として知るきっかけになってほしいです

“母と娘”をテーマにして本を書かれて、改めてお母様に対して何か感じることなどはありましたか?

小手鞠: 今回の本を書いて改めて、ということはなかったかな。私と母は、今でこそ母に対して愛情や感謝の気持ちはあるものの、いつも仲良く密着しているような関係ではなかったんですね。母からすると愛情があって言っている言葉に、私が傷つくことが多かったりして、20〜30代のころかな、少し距離を置いていた時期があったんです。でも、私自身も大人になり、母も年齢とともに丸くなって、今は仲良くしています。反発し合う時期は終わって、いい関係になったからこそ、この本が書けたんだと思います。

母と娘の物語をあえて児童書として書いた理由はありますか?

小手鞠: それはね、私自身が、子どものためのお話の中に出てくる“お母さん”像というものに、ある種の物足りなさを感じていて、もっと母という存在の人間性をぐっと出して、母親というひとりの女性の仕事や考え方、生き方、そういったものを児童書の中で書きたいという気持ちが大きかったんです。だから、『窓』では、“お母さん”の人生や人間性をしっかりと描きました。この本を読んで、子どもたちにも、お母さんを“うちのお母さん”だけではなくて、ひとりの女性、人間としてのお母さんがいる、ということを知ってほしいし、本書がそれを知りたいと思うきっかけになってくれたらうれしいです。

新刊『窓』のテーマでもある“母と娘”。Domani読者にとっても、自身の母についてだけではなく、母としての自分の在り方も考えさせられる一冊になりそうですね。小手鞠るいさんには、さらに、“子どもと本の関係性”などについても伺っていますので、近日公開のインタビューもお楽しみに!

【Information】
新刊発売にともない、イベントの開催が決定!
2020年2月3日 教文館ナルニア国(金原瑞人さんとの対談) 
2020年2月6日ジュンク堂池袋店

取材・文/小山恵子

作家

小手鞠るい

1956年岡山県生まれ。1993年『おとぎ話』が海燕新人文学賞を受賞。2005年『欲しいのは、あなただけ 』で島清恋愛文学賞、原作を手がけた絵本『ルウとリンデン 旅とおるすばん 』でボローニャ国際児童図書賞(09年)受賞。1992年に渡米し、現在はニューヨーク州ウッドストックに在住。主な作品に、『エンキョリレンアイ』『思春期』『アップルソング』『優しいライオン やなせたかし先生からの贈り物』など。

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