地方出身の大学生男子は母性に飢えている
お話を伺ったのは…
寺本明美さん(仮名・40歳)。東京都足立区出身・有名私立大学文学部卒業、塾講師(年収200万円)。同じの夫(航空関連会社勤務・年収1200万円)と結婚10年。都心の外れエリアにあるタワーマンションに住む。子どもは9歳の女子と、5歳の男子。身長160cm、真面目で優しそうな外見で、モードな雰囲気をまとっている。
若いころはホントにヤンチャでした……
「昔の私はヤンチャでした」と言い切る明美さん。ぽっちゃりした体型と、ぱっちりとした優しそうな瞳。2児の母ならではの落ち着き感と、薄めのメイクが調和している素敵な女性だ。
「両親はアカデミックな仕事をしていて、子どものころからいろんな大人と遊んでいました。高校時代から、クラブに出入りしていろんな人と遊んでいたんですよ」
「20代はホントにヤンチャだったと思います(笑)。私は大学を出てから、いろんな仕事を転々としていました。夫と知り合った29歳のときはある旅行代理店の正社員だったんです。出会いは先輩が主催した合コン。交際半年で結婚しました。夫の仕事は出張が多く、私が専業主婦になった方がいい。いろいろやり切ってからの結婚だったし、仕事もスッパリ辞めました」
子どももすぐに授かり、幸せな結婚生活が始まる。
「夫は華やかな職業に就いていますが、チャラっぽくてあんまりモテない。私と結婚してから、ホントに家族を大切にしてくれて、ありがたいと思いますよ。でもやっぱり家族ですよね。ホントに男と女じゃない。その傾向は、2人目を夫の希望で立会い出産してから強くなった。それまでも十分に薄かった男女の関係が、さらに離れた感じがありました」
その後、夫から浮気を告白される。
「まあいっか、と思ったのと同時に、夫は秘密を守れないバカだと思いました。私は父から『家族であれ、言わなくていいことは言ってはならなぬ』と教えられていたので、そういうことをわざわざ言って、私の心をかき乱す夫が許せないと思うようになったんです。それに、これから何があるかわからないから社会復帰をしようと思い、小学生向けの学習塾の講師の求人に応募しました。私はもともと学校の先生になりたくて教員免許を持っていたし、日本語講師の経験もあり、人に何かを教えるのが得意なんです」
子どもの夕飯までには帰宅する仕事
塾講師の仕事は夕方から夜の時間帯がメインになる。
「夕方18時から21時がメインですが、うちの塾は働く時間帯をいろいろ選べるんですよ。私は低学年向けの14時~17時を多めに入れてもらい、子どもの夕飯までには帰宅できるようにしてもらっています。幼稚園の延長と学校内にある誰でも入れる学童施設を使えば、18時まで子どもを見てもらえるし、いざとなったら都内に住む私の母がサポートしてくれています」
自分でお金を稼ぐことは、やっぱり大切だと思ったという。
「8年間も専業主婦をしていて、夫の稼ぎで生活することも楽でしたが、例えばヘアサロンに行ったり、自分の服を買ったりするときに、軽い罪悪感があるんですよ。でも自分で稼いだお金なら、気持ちよく使える。もっと早く社会復帰すればよかった」社会復帰とは、人の目にさらされるということでもある。
「おしゃれだと思われるような服を着たり、メイクをしたりするのは楽しい。それに、『フツーの先生とは一味違う』という私ならではの持ち味を考えるようになる。相手からの感情を意識するようになるから、いろいろ変わるし、気付きを得るようになります。その結果、わかったのは、私はモテるのかもしれないということ」
地方出身の大学生男子に懐かれる日々
明美さんは学習塾の大学生バイトから、とても懐かれているという。彼らの共通点は地方出身であること。
「私、自分のことをオバサンと自虐するのが大嫌いで、そういうことを一切言わないんです。大学生のバイトさんにも言いたいことは言うし、その結果として、将来や恋愛の相談をされるようになる。ある地方出身の男の子が私に対してベタベタしてくるようになったんです。例えば私が休憩室でお茶を飲んでいたら、体ごともたれかかってお茶を飲むのを邪魔しようとしたり……なんというか、息子が母親に甘えている感じ? その男子がじゃれている様子を見て、私が怒らないと、他の子達もやりだすようになる」
母親に大切に育てられた子は、マザコンになるのでは……
地方から東京の大学に進学している男子たちは、親に大切に育てられたことを感じる人が多い。
「父親に経済力があり、母親が過保護だから、いい大学にも進学できたのかもしれません。だからこそ親元から離れて暮らしているうちに、寂しくなる。そこでオバサン風を吹かせない私に母性を求め、甘えてくるんだろうな……と。だって『私はもうオバサン』っていうのは、女をアピールしていることに他ならない。母親は息子に対して『もうオバサン』とは言いませんからね」
大学生の面倒を見ていたら、離職率が低くなる
明美さんが男子学生の相手をしていたらバイトの離職率が低くなったと塾長に言われた。
「塾長といっても、まだ30代前半で、イケメンだし超エリートなんです。その彼から食事に誘われて、銀座の有名なイタリアンで軽く食事をして、2軒目のタイミングで『僕の家はいかがですか?』と言われ、男女の関係に。それからこの半年間、月1回でデートしています。私がほめたり、欠点を指摘したりすると、すごくよろこんでくれて、かわいいですよ~。『一緒に話していると心が安らぐ』とベタぼれ。不倫の関係になるんですが、疑似息子ですよね。この関係が始まったのも、夫が浮気を告白したから。全部夫が悪いんです」
目には目を……という復讐心から始まった恋。仕事と家庭、両方を失う危険と背中合わせだと明美さんは気づかぬふりをしているようだ。
写真/(C)Shutterstock.com
Writer&Editor
沢木 文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。お金、恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。