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「不束者ですが」の意味や語源を解説
「不束者ですが」には、「至らない点もありますが」「気の利かない者ですが」という意味があります。「不束」は、平安時代から使われていた「太束(ふとつか)」に由来する言葉です。「不束ですが」を正しく使用するために、まずは言葉の意味と語源を確認していきましょう。
「不束者ですが」の意味
「不束者」には、「気の利かない人」「行き届かない者」という意味があります。後に続く「ですが」は、助動詞の「です」に助詞の「が」をつけた言葉です。「甘いものは苦手ですが、チョコレートだけは食べられます」のように、後に続く内容が反対や対立の関係にあることを示します。
「不束者ですが」も、「不束者ですが、よろしくお願いします」のように後に言葉を続けて使用する表現です。「気の利かない者ですが、よろしくお願いします」と自分をへりくだって表わします。結婚の挨拶で使用されることが多く、ビジネスシーンでは目上の人への挨拶に適しています。
「不束者」の語源
「不束者」という言葉は、平安時代にはすでに使用されていたと考えられています。当時は「太束」と表記され「短い柱」を意味していました。
平安時代は、細い人が美しく優雅だという価値観が主流でした。「太束」はやがて、「不束」という当て字とともに「太くて不格好な人」を意味する言葉へと変化します。
平安時代中期に紫式部が綴った「源氏物語」にも、「不束」という言葉は登場しています。物語の中では「しっかりした人」「不格好で荒っぽい太めの人」とう意味合いで使用されました。
時代を経て中世になると、「不束者」は「風情が無く、無骨または下品な人」を指す言葉として定着していきます。現代では「気の利かない人」として、結婚式の挨拶やビジネスシーンで自分や身内をへりくだるときに使用されている表現です。
「不束者ですが」は男女問わず使える言葉
「不束者ですが」は、男女問わず使える言葉です。かつては結婚の挨拶で、女性側が「不束者ですが、末永くよろしくお願いいたします」と使用していました。
そのため、「不束者」は女性に使用する言葉というイメージを持たれがちですが、実際には男性に使用しても問題のない言葉です。特に、ビジネスシーンの挨拶では男女問わず使用できるフレーズだといえるでしょう。
「不束者ですが」の使用シーンと例文
「不束者ですが」は、結婚の挨拶や目上の人に指導をしてもらうときに使用します。自分の部下を、他者へ派遣するときにも用いられるフレーズです。例文を参考に「不束者ですが」の使い方をマスターしていきましょう。
結婚相手の親族に挨拶をする場面
「不束者ですが」は、結婚相手の親族に挨拶をするシーンで用いられてきました。主に、女性やその両親が使用してきたフレーズです。かつて結婚は「女性が相手の家に入るもの」という考えが主流であったことから、「不束者ですが」」が使用されていたと考えられます。
親が使用するときには、「至らない点が多い娘ですが、どうぞよろしくお願いいたします」という娘を案ずる気持ちが込められているといえるでしょう。
例文:
・不束者な娘ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
・不束者ではございますが、末永くよろしくお願いいたします。
目上の人に指導してもらう場面
「不束者ですが」は、自分が至らず未熟者であることを意味する言葉です。目上の人に指導してもらう場面では「自分は未熟で、配慮が足りないこともあるかもしれませんが」という意味合いで用います。自分の能力を謙遜して表すこともあるでしょう。
例文:
・不束者ではございますが、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
・不束者ではありますが、ご教授いただけないでしょうか?