「度し難い(どしがたい)」の意味と語源とは
「度し難い」は「どしがたい」と読み、普段使いする言葉ではありませんが、大人として知っておくべき言葉のひとつです。「度し難い」の意味や語源を説明します。
■「救いようがない」という意味
「度し難い」は、「救いようがない」「どうしようもない」という意味。読み方は、「どしがたい」です。「どうしようもない」状況や状態を指しますが、人を対象にして使うことが多いでしょう。たとえば、何度指摘されても同じ間違いを繰り返すような人を「度し難い人」と呼びます。
■語源は仏教からきている
「度し難い」の語源は、仏教からきています。もともとの正しい言い方は「済度し(さいど)難い」です。いつの間にか「済」が省略され、今日では「度し難い」が一般的となりました。
「済度」とは仏教用語のひとつで、「済」には「救う」という意味が、「度」には「渡す」という意味が含まれています。そのため「済度」は、「仏が迷っている人を救い、悟りの彼岸に渡らせる」ことを意味するのです。
「済度し難い」は、この「済度」に「し難い」がプラスされた言葉。「迷っている人を悟らせても救うことができない」という意味になり、転じて「道理を言い聞かせても分からせようがない」になりました。
ことわざ「縁なき衆生は度し難し」の意味
「度し難い」が用いられたことわざに、「縁なき衆生は度し難し(えんなきしゅじょうはどしがたし)」があります。「縁」とは、仏と仏教徒との「つながり」のことです。また「衆生(しゅじょう)」とは、「生きとし生けるものすべて」を意味します。
つまり、このことわざは「仏との縁を信じないものは、慈悲深い仏の教えを聞こうとなしない」という意味です。このような解釈から、今日では、「人の話を聞かない人は救いようがない、どうしようもない」となったのです。
「度し難い」の使い方や例文
「度し難い」は何かを非難するときに使う言葉であるため、使い方に注意が必要です。「度し難い」の使い方と例文をご紹介しましょう。普段あまり使わない言葉だからこそ、間違えないように押さえておきたいところです。

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■「度し難い」の使い方
はじめに、「度し難い」の使い方を確認しておきましょう。
「度し難い」は先ほども述べた通り、「どうしようもない」「救いがたい」という意味です。決して相手の才能や努力、人柄をほめるときには使いません。 何かを非難するときに使うため、誰かに面と向かって言う場合には注意が必要です。ネガティブな意味合いが強く、よほどの場合でなければ使う機会は少ないでしょう。
■「度し難い」の例文
次に、「度し難い」の例文をいくつかご紹介します。
・毎日、遅刻するなんて、彼は度し難い新入社員だ。
・彼は以前も同じ指摘を受けたのに、まだ言われていることが理解できていないようだ。まったく度し難い人だ。
・あの企業は多くの退職者を出しているのに、職場改善がされない。度し難い企業体質だ。
「度し難い」は最後の例文のように、「どうしようもない状況・状態」について述べるときも使いますが、ほとんどの場合、「度し難い」の対象は人です。何度も同じことを言っているのに分からない人のことを「度し難い」といい、非難する場合に使うことが多いです。
「度し難い」の類義語と対義語
「度し難い」の類義語は、「手に負えない」「どうしようもない」「たちが悪い」です。対義語としては、「融通が利く」「素直」「従順」が挙げられるでしょう。それぞれの意味や例文をご紹介します。

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■「度し難い」の3つの類義語
はじめに、類義語を3つご紹介します。「度し難い」は非難するニュアンスが強い言葉のため、やや柔らかい表現の「手に負えない」や「どうしようもない」に言い換えてもいいでしょう。どれほど「度し難い」相手であっても、言われた本人が傷つかないような表現を選ぶことは、大人としてのマナーです。
「手に負えない」
「度し難い」の類義語に「手に負えない」があります。「手に負えない」は、「自分の能力ではどうしようもない、解決できない」という意味です。たとえば、新入社員の教育を任された人が、どうしても言うことを聞いてくれない新入社員に対して「彼は私の手に負えない」と降参するといった場面で使えます。
いくつか例文をご紹介しましょう。
・彼女はおてんばが過ぎて、両親の手に負えない子どもだった。
・彼は小さい頃は手に負えない子どもだったが、今や立派な大企業の社長だ。
・昨夜からの大寒波で、私の手には負えない積雪量だ。
「どうしようもない」
「どうしようもない」も「度し難い」の言い換えに使えます。ただし「度し難い」よりは、幅広い内容を含む言葉です。そのため、使う機会の多い言葉といえるでしょう。「どうしようもない」の主な意味は次の通りです。
・扱いに困るさま
・人の悪い性質や性格が直らないさま
・物事がどうしても思ったように進まないさま
・努力しても改善の見込みがないさま
・世の中を失望しているさま
次に、「どうしようもない」の例文をいくつかご紹介します。
・彼の態度は、もうどうしようもない。改善されることはないだろう。
・悪天候で飛行機が飛ばないのは、どうしようもないことだ。
・地球温暖化の影響で海面が上昇しているが、どうしようもない。
「たちが悪い」
「たちが悪い」も「度し難い」の類語のひとつです。「たちが悪い」の「たち」は、漢字にすると「質」。「質」は性格や性質を表す漢字で、「たちが悪い」は「性格や性質が悪い」という意味です。
「たちが悪い」には「悪質な」というニュアンスが含まれるため、「度し難い」よりもさらに悪い印象を人に与えます。次の2つの文章を比べると、そのニュアンスの違いが理解できるでしょう。
・彼の態度は度し難い。
・彼の態度はたちが悪い。
「たちが悪い」の例文もいくつかご紹介しましょう。
・欠陥商品であると分かっていながら商品を売り続けるなんて、よほどたちが悪い会社なんだろう。
・彼はたちが悪い性格で、みんなから避けられている。
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