逆に「味が濃すぎる」「しょっぱすぎる」というときは、本で紹介している「魔法の調味料」の1つである「みりん酒」を入れることで、うまくいくケースも多々あります。
煮物、豚の角煮など、味が濃すぎたときに「水」を入れる人がいますが、これは、実は「いちばんやってはいけない」ことなのです。水っぽくなってしまい、せっかくの料理が台無しになってしまいます。
「みりん+酒」で作る「魔法の調味料」の「みりん酒」を入れれば、水っぽくならずに、うまいこと、味の調節ができます。「みりん酒」は、タレや甘みそが固いとき、ゆるめるときにも使えます。
もちろん、煮物など「上品な甘みと風味」を加えたいときにも重宝し、まろやかな味わいは、まさに「和食の醍醐味」です。だからこそ「魔法の調味料」なのです。
「頭」ではなく「舌」「体」で、人は変わる
ここでは「味見の大切さ」を力説してきましたが、私は単に「料理の仕上がり」のためだけに「味見」をおすすめしているのではありません。もう1つ重要なことがあり、それは味見をすることで「舌が鍛えられる」ことなのです。
プロの料理人は、1つの料理で何度も味見をします。下手をすれば10回ほどするケースもあります。もちろん家庭料理で10回も味見をする必要はありませんが、とにかく「味見」をする癖をつけてほしいのです。
味見をするほどに、「甘い」「辛い」「しょっぱい」「苦い」「すっぱい」などの味覚が鋭くなり、料理の「勘」が働くようになります。「自分は味オンチだから……」という人も、続けていけば必ずわかるようになります。
また、「味見」を日頃からする癖をつけると、食品添加物が大量に使われた加工食品を食べたときには、「化学調味料(うま味調味料)」のモワッとした「不自然な味」や、人工甘味料の「独特な甘さ」も、自然と見抜けるようになってきます。
そうすれば、食品添加物の味が強すぎる加工食品を口にしたとき、「確かに便利だけど……なんかどうも『おいしくない』よね」「一瞬おいしいけど……なんか『後味が悪い』よね」となります。
「どうすれば食品添加物を減らせますか?」という相談をよく受けますが、「頭」で減らそうと思っても、無理です。そうでなく、「あまりおいしくないよね」「後味がヘンだよね」というので、人は変わります。味覚で人は動く。「頭」ではなく「舌」「体」で、人は変わるのです。
それが長ずれば、「料理の腕」も飛躍的に向上し、自ずと「料理上手」になり、「プロレベルの味」が出せるようにもなっていくはずです。だからこそ、「味見」をすることこそが、「料理が上達するたった1つの方法」といっても過言ではないのです。
みなさんもぜひ、「味見」の習慣とスキルを身につけることで、「自宅でおいしい料理を食べられる日」が少しでも増え、「食べ物の本当のおいしさ、素材の味がきちんとわかる人」になっていただきたいと願っています。
『世界一美味しい「プロの手抜き和食」安部ごはん ベスト102レシピ』(東洋経済新報社)
『食品の裏側』著者、一般社団法人 加工食品診断士協会 代表理事
安部 司(あべ つかさ)
1951年、福岡県の農家に生まれる。山口大学文理学部化学科を卒業後、総合商社食品課に勤務する。退職後は、海外での食品の開発輸入や、無添加食品等の開発、伝統食品の復活に取り組んでいる。NPO熊本県有機農業研究会JAS判定員、経済産業省水質第一種公害防止管理者を務めつつ、食品製造関係工業所有権(特許)4件を取得。開発した商品は300品目以上。
2005年に上梓した『食品の裏側 みんな大好きな食品添加物』(東洋経済新報社)は、食品添加物の現状や食生活の危機を訴え、70万部を突破するベストセラーに。その他の著書に『食品の裏側2 実態編 やっぱり大好き食品添加物』(東洋経済新報社)などがある。
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